源平盛衰記の歌 凡例
底本
『源平盛衰記』(国民文庫)古谷知新 国民文庫刊行会 1910 底本:内閣文庫蔵慶長古活字本
参考
源平盛衰記上・下2巻 通俗日本全史 底本:片仮名製版本 早大出版部 1911 芸林社 1975(全1冊) 片仮名整版本
有朋堂文庫『源平盛衰記』(明治45〜大正元年初版刊行)上下2冊 流布本
1.国歌大観の番号をK+番号3桁を後に付けました。
2.仮名遣いを一部改め、濁点も適宜補いました。例: ゆへ→ゆゑ
3.漢字は底本通りを原則としますが、一部新字体・通行字体に直したものがあります。
4.JISにない漢字は他の漢字に置き換えるか又は■に振り仮名付きで表記します。正規(通常)の表記を【* 】に入れました。
5.漢文の返り点は(レ)(一)(二)(下)(中)(上)などに置き換えました。
6.国歌大観番号順と50音順があります。
国歌大観番号順
乙女ごが乙女さびすもから玉を乙女さびすも其から玉を K001
つとめんと思ふこゝろのきよもりは花はさきつゝ朶もさかえん K002
伊予讃岐左右の大将かきこめて欲の方には一の人哉 K003
たぐふべき方も渚のうつせ貝くだけて君を思ふとをしれ K004
花の山高き梢と聞きしかど蜑の子かとよふるめひろふは K005
我門に千尋ある竹を植つれば夏冬誰か隠ざるべき K006
千早振現人神のかみたれば花も齢はのびにけるかな K007
随分管絃還自足、等閑篇詠被(レ)知(レ)人 K008
春日山かすめる空にちはやぶる神の光はのどけかりけり K009
わしの山おろす嵐のいかなれば雲ものこらずてらす月かげ K010
まどひつゝ仏の道をもとむればわが心にぞたづね入ぬる K011
草村におく白露に身をよせてふく秋風をきくぞ悲しき K012
あるじなき宿の軒ばに匂ふむめいとゞ昔のはなぞこひしき K013
浮節に沈みもはてで川竹の世にためしなき名をばながしつ K014
思きや憂身ながらに廻きておなじ雲井の月をみんとは K015
桜花賀茂の河風恨むなよ散をばわれもえこそとゞめね K016
夜半にふく嵐につけて思ふかな都もかくやあきはさびしき K017
世の中にあきはてぬれば都にも今はあらしの音のみぞする K018
旅人のたもとすゞしくなりぬらん闕吹きこゆる須磨浦波 K019
琴の音に引きとめらるゝ綱手なはたゆたふ心君しるらめや K020
心有てひくての網のたゆたはば打すてましやすまの浦風 K021
山の端に契て出でん夜半の月廻逢べき折を知ねど K022
はかなしや浪の下にも入ぬべし月の都の人やみるとて K023
雲上に響聞ば君が名の雨と降ぬる音にぞ有りける K024
天照す光の下にうれしくも雨と我名のふりにける哉 K025
深山木のその梢ともみえざりし桜は花にあらはれにけり K026
高きやに上りて見れば煙たつ民のかまどはにぎはひにけり K027
松枝は皆さかもぎに切はてて山にはざすにする者もなし K028
秋の夜の月けのこまよわがこふる雲井にかけれときのまもみん K029
みちのくのあこやの松の木高に出べき月の出やらぬ哉 K030
津国やこまの林をきて見れば古はいまだ変らざりけり K031
終にかく背はてける世中をとく捨ざりし事ぞくやしき K032
薩摩潟沖の小島に我ありと親には告よ八重の塩風 K033
思やれ暫しと思ふ旅だにもなほ故郷は恋しき物をK034
双■(さうふ)倶北飛 一■(ふ)独南翔 余自留(二)新館(一) 子今帰(二)故郷(一) K035
浜千鳥跡は都へ通へ共身は松山に音をのみぞ啼 K036
朝倉や木の丸殿に入ながら君にしられで帰る悲しさ K037 御返事あり、
朝倉やたゞ徒に帰すにも釣する海士の音をのみぞ啼 K038
松山の浪に流れてこし舟のやがてむなしく成にける哉 K039
松樹千年終是朽、槿花一日自成(レ)栄 K040
よしや君むかしの玉の床とても係らんのちは何にかはせん K041
いふならく奈落の底に入ぬれば刹利も首陀も異らざりけり K042
久に経て我後の世を問へよ松跡忍ぶべき人もなき身ぞ K43
爰を又我住うくてうかれなば松は独にならんとやする K044
伊勢の海あこぎが浦に引網も度重なれば人もこそしれK045
思きや富士の高根に一夜ねて雲の上なる月をみんとは K046
春来遍是桃花水 不(レ)弁(二)仙源(一)何処尋 K047
住吉の松吹く風に雲晴て亀井の水にやどる月影 K048
祈りこし我たつ杣の引かへて人なき嶺となりや果なん K049
阿耨多羅三藐三菩提の仏達、我立杣に冥加あらせ給へ K050
いとゞしく昔の跡や絶なんと今朝降雪ぞ悲しかりける K051
君が名ぞ猶あらはれん降雪に昔の跡は絶えはてぬとも K052
崩れつる岸も我身もなき物ぞ有と思ふは夢に夢みる K053
白露は月の光にて、黄土うるほす化あり、権現舟に棹さして、向の岸によする波 K054
神風や祈る心の清ければ思ひの雲を吹やはらはん K055
流よる硫黄が島のもしほ草いつか熊野に廻出べき K056
■振(ちはやふる)神に祈のしげければなどか都に帰らざるべき K057
諸の仏の願よりも、千手の誓は頼もしや、枯たる木草も忽に、花咲実なるとこそ聞 K058
さまも心も替かな、落る涙は滝の水、妙法蓮華の池と成、弘誓舟に竿指て、沈む我等をのせたまへ K059
仏の方便也ければ、神祇の威光たのもしや、扣ば必響あり、仰ば定て花ぞさく K060
道遠し程も遥にへだたれり思ひおこせよ我も忘れじ K061
見せばやな我を思はん友もがな磯のとまやの柴の庵を K062
荊鞭蒲朽蛍空去、諫鼓苔深鳥不(レ)驚 K063
朽果ぬ其名計は有木にて身は墓なくも成親の卿 K064
桃李不(レ)言春幾暮煙霞無(レ)跡昔誰栖 K065
人はいさ心もしらず故郷は花ぞむかしの香ににほひける K066
故郷の軒の板間に苔むして思ひしよりももらぬ月哉 K067
薩摩方沖の小島に我ありと親には告げよ八重の塩風 K068
我是日本花京客、汝則同姓一宅人、為(レ)父為(レ)子前世契、隔(レ)山隔(レ)海恋情苦、経(レ)年流(レ)涙宿(二)蓬蒿(一)、逐(レ)日馳(レ)思親(二)蘭菊(一)、形破(二)他州(一)成(二)燭鬼(一)、争帰(二)旧里(一)寄(二)斬身(一) K069
かしこまる四手に涙ぞ係りける又いつかもと思ふ身なれば K070
心の闇の深きをば、燈篭の火こそ照なれ、弥陀の誓を憑身は、照さぬ所は無れり K071
春風に花の都は散ぬべし榊の枝のかざしならでは K072
不(レ)酔(二)黔中(一)争去得磨囲山月正蒼々 K073
恋敷ばきてもみよかし身に副るかげをばいかゞ放遣べき K074
山法師織のべ衣うすくして恥をばえこそ隠さゞりけれ K075
織のべを一切もえぬ我等さへ薄恥をかくことぞ悲しき K076
薪こる賤かねりその短きかいふ言のはの末のあはねば K077
思やれくらき暗路のみつせ川瀬々の白浪払あへじを K078
宇治川に沈むを見れば弥陀仏誓の舟ぞいとゞ恋しき K079
白児党皆火威の鎧きて宇治の網代に懸りけるかな K080
君故に身をば省とせしかども名は宇治川に流しぬる哉 K081
埋木は花咲事もなかりしに身のなるはてぞ哀なりける K082
山城の井出の渡に時雨して水なし川に浪や立らん K083
不(二)是花中偏愛(レ)菊 此花開後更無(レ)花 K084
有(レ)花(レ)獣山中友、無(レ)愁無(レ)歎世上情 K085
人しれぬ大内山の山もりは木がくれてのみ月を見るかな K086
つき/゛\しくもあゆぶものかな いつしかに雲の上をば蹈なれて K087
上るべきたよりなければ木の本に椎を拾ひて世を渡るかな K088
宇治川のせゞの淵々落たぎりひをけさいかに寄まさるらんK089
五月雨に沼の石垣水こえて何かあやめ引ぞわづらふ K090
敦公名をば雲井にあぐるかな 弓はり月のいるにまかせて K091
五月闇雲井に名をも揚ぐるかなたそがれ時も過ぬと思ふに K092
百年をよかへり迄に過こしに愛宕の里は荒や果なん K093
咲出づる花の都をふり捨て風ふく原の末ぞあやふき K094
蓬莱山には千歳経る、万歳千秋重れり、松の枝には鶴巣食、巌の上には亀遊 K095
君を始て見時は、千代も経ぬべし姫小松、御前池なる亀岡に、鶴こそ群居て遊なれ K096
よしさらば心の儘につらかれよさなきは人の忘がたきに K097
萌出るも枯も同じ野べの草いづれか秋にあはで有るべき K098
仏も昔は凡夫なり、我等も終には仏なり、三身仏性具ながら、隔る心のうたてさよ K099
君があけこし手枕の、絶て久く成にけり、何しに隙なくむつれけん、ながらへもせぬもの故に K100
霜草欲(レ)枯虫思苦 風枝未(レ)定鳥栖難 K101
古き都を来て見れば、浅茅が原とは成にける、月の光はくまなくて、秋風のみぞ身には入 K102
南無薬師憐給へ世中に有わづらふも病ならずや K103
君が代に二万の里人数そひて今も備る貢物かな K104
待宵の深行くかねの声聞ばあかぬ別の鳥は物かは K105
物かはと君が云けん鳥のねの今朝しもいかに恋しかるらん K106
待たばこそ更行く鐘もつらからめ別を告ぐる鳥のねぞうき K107
風蕭々兮易水寒 壮士一去不(二)復還(一) K108
予捨(二)身命(一)惜(二)妙法(一)神投(二)霊竹(一)垂(二)感涙(一) K109
露深き浅茅が原に迷ふ身のいとゞ暗路に入るぞ悲しき K110
闇路にも共に迷はで蓬生に独り露けき身をいかにせん K111
都をば霞と共に出でしかど秋風ぞ吹く白川の関 K112
法華経の序品をだにもしらぬ身に八牧が末を見るぞ嬉しき K113
法の花終にひらくる八牧には心仏の身とぞ成ぬると、不思議なりける事也。 K114
源はおなじ流れぞ石清水せきあげてたべ雲の上まで K115
千尋まで深く憑て石清水たゞせきあげよ雲の上まで K116
漁舟火影冷焼(レ)波 駅路鈴声夜過(レ)山 K117
東路の草葉を分る袖よりもたゝぬ袂は露ぞこぼるゝ K118
別路を何歎くらん越て行く関をむかしの跡と思へば K119
富士川のせゞの岩越水よりも早くも落るいせ平氏哉 K120
ひらやなる宗盛いかに騒ぐらんと柱とたのむ助を落して K121
富士川に鎧は捨てつ墨染の衣たゞきよのちの世のため K122
忠清はにげの馬にや乗つらん懸ぬに落かづさしりがい K123
をとめこが乙女さびすも唐玉をとめさびすも其唐玉を K124
鹿を指て馬と云人も有ければ鴨をもをしと思ふなるべし K125
人くらふ鬼とてよそになき物を生なぶりする醜女入道 K126
補陀落の南の岸に堂たてて北の藤なみ今ぞ栄ゆる K127
霊山の釈迦の御前にちぎりてし真如朽せず相みつる哉 K128
迦毘羅衛に共に契しかひありて文殊のみ顔相みつる哉 K129
常に見し君がみゆきをけふとへば帰らぬ旅ときくぞ悲しき K130
林間煖(レ)酒焼(二)紅葉(一)石上題(レ)払緑苔(一) K131
忍れど色に出けり御恋はものや思ふと人の問ふまで K132
思ひかね心のおくは陸奥のちかの塩がまちかきひなし K133
玉章を今は手にだにとらじとやさこそ心に思ひ捨つとも K134
敬礼慈恵大僧正 天台仏法擁護者 示現最勝将軍身 悪業衆生同利益 K135
おぼつかな誰杣山の人ぞとよこのくれにひく主をしらずや K136
雲間より忠盛きぬる月なればおぼろげにては云じとぞ思ふ K137
夜泣すと忠盛たてよみどり子は清くさかふる事もこそあれ K138
這程にいもがぬか子もなりにけり 忠盛とりてやしなひにせよ K139
有明の月も明石の浦風に波計こそよると見えしか K140
雲間より忠盛きぬる月なれば朧げにてはいはじとぞ思ふ K141
千早振神に祈のかなへばや白くも色のあらはれにけり K142
沢に生る若菜ならねど徒に年をつむにも袖はぬれけり K143
一枝ををらではいかで桜花八十余の春にあふべき K144
雲井より吹くる風のはげしくて涙の露の置まさる哉 K145
結てし心の深きもとゆひに契しすゑのほどけもやせん K146
三界無安 猶如火宅 発菩提心 永証無為 K147
我心無碍法界同 我心虚空其本一 我心遍用無差別 我心本来常住仏 K148
呉竹の本の筧はかはらねど猶住あかぬ宮の内かな K149
呉竹の本の筧は絶はてて流るゝ水の末をしらばや K150
夏山の出入月の姿をばいつか雲井に又も見るべき K151
夏山の緑の色はかはるとも出入月を思ひわするな K152
哀なり老木若木も山ざくらおくれ先立花も残らじ K153
旅立夜な/\袖をかた敷て思へば遠く我は行なん K154
年比の平やを捨て鳩のはにうきみを蔵いけるかひなし K155
古郷を焼野の原にかへりみて末も煙の波路をぞゆく K156
墓なしや主は雲井に別るれば宿は煙と立のぼるかな K157
住なれし都の方はよそながら袖に波こす礒の松かぜ K158
さゞ浪や志賀の都は荒にしを昔ながらの山桜かな K159
かしましのもせにすだく虫音よ我だに物は云でこそ思へ K160
流れなば名をのみ残せ行水のあはれ墓なき身は消ゆるとも K161
なき人に手向る花の下枝はたをれる袖のしをれける哉 K162
御幸する末も都と思へども猶なぐさまぬ浪のうへかな K163
住なれしふる都の恋しさに神も昔をわすれ給はじ K164
こち吹ばにほひおこせよ梅の花主なしとて春を忘な K165
梅はとび桜は枯れぬ菅原やふかくぞたのむ神の誓を K166
是や此こち吹風に誘はれてあるじ尋し梅のたちえは K167
都なる九重のうち恋しくば柳の御所を立よりて見よ K168
思かね心つくしに祈れどもうさには物もいはれざりけり K169
世中のうさには神もなき物を心つくしになにいのるらん K170
さりともと思ふ心も虫の音もよわりはてぬる秋の暮かな K171
見るからに心つくしのかみなればうさにぞ返本の社に K172
月を見しこぞのこよひの友のみや都に我を思ひ出らん K173
恋しとよ去年のこよひの終夜月みる友の思ひでられて K174
君すめば爰も雲井の月なれどなほ恋しきは都なりけり K175
名にしおふ秋の半も過ぬべしいつより露の霜に替らん K176
打解けて寝られざりけり楫枕今宵の月の行へ清まで K177
あかさいてしろたなこひに取替て頭にしまく小入道哉 K178
見る儘に跡絶ぬれば鈴鹿山雪こそ関のとざし成けれ K179
信濃なる木曾の御料に汁懸て只一口に九郎義経 K180
今日迄もあればあるとや思ふらん夢の中にも夢を見る哉 K181
心あらん人に見せばや津国の難波渡の春のけしきを K182
君なくてあしかりけりと思にもいとゞ難波の浦ぞ住憂き K183
あしからじとてこそ人は別れしか何か難波の浦は住うき K184
人しれずそなたを忍心をばかたぶく月にたぐへてぞやる K185
武士のとりつたへたる梓弓引ては人の帰る物かは K186
吹風を何いとひけん梅の花散くる時ぞ香はまさりける K187
我独けふの軍に名とり川 君もろともにかちわたりせん K188
円子川ければぞ波はあがりける かゝりあしくも人や見るらん K189
五月やみくらはし山の郭公姿を人にみするものかは K190
みやこをば霞と共に出でしかど秋風ぞ吹く白川のせき K191
兼てより思し事をふし柴のこるばかりなる歎せんとは K192
行暮て木下陰を宿とせば花や今夜のあるまじならまし K193
吹送風のたよりに見てしより雲間月に物思ふかな K194
わがこひは細谷川の丸木橋ふみ返されてぬるゝ袖かな K195
踏かへす谷のうき橋浮世ぞと思しよりもぬるゝ袖かな K196
たゞ憑め細谷川の丸木橋ふみかへしては落るならひぞ K197
谷水の下にながれて丸木橋ふみ見て後ぞ悔しかりける K198
呉竹の本は逢夜も近かりき末こそ節は遠ざかりけれ K199
涙河浮名を流す身なれども今一しほの逢せともがな K200
君故に我も浮名を流しなば底のみくづと共に成ばや K201
あふ事も露の命ももろともに今宵ばかりや限なるらん K202
限りとて立別なば露の身の君よりさきに消ぬべきかな K203
極楽欣はん人は、皆弥陀の名号唱ふべし、阿弥陀仏々々々々、南無阿弥陀仏、阿弥陀仏々々々々、大悲阿弥陀仏 K204
燈 暗 数行虞氏涙 夜深四面楚歌声 K205
折々はしらぬ浦路のもしほ草書置跡を形見とも見よ K206
我恋は空ふく風にさも似たり傾く月に移ると思へば K207
玉鋒や旅行道のゆかれぬはうしろにかみの留ると思へば K208
山ふかみ思ひ入ぬる柴の戸の真の道に我をみちびけ K209
しらま弓そるを恨と思ふなよ真の道にいれる我身ぞ K210
白真弓そる恨と思しにまことの道に入るぞ嬉しき K211
我昔遇(二)薩■[*土+垂](さつた)(一) 親悉伝(二)印明(一) 発無(レ)此(二)誓願(一) 陪(二)辺地異域(一) 昼夜愍(二)万民(一) 住(二)普賢悲願(一) 肉親証(二)三昧(一) 待(二)慈氏下生(一) K212
我せこがくべき宵なりさゝがにのくもの振舞兼て知しも K213
岩田川誓の船にさをさして沈む我身も浮ぬる哉 K214
十方仏土中以(二)西方(一)為(レ)望 九品蓮台間 雖(二)下品(一)可(レ)足 K215
生ては終にしぬてふ事のみぞ定なき世に定ありける K216
故郷にいかに松風恨らん沈む我身の行へしらずば K217
古郷にいかに松風恨むらん沈む我身の行へしらずば K218
君すめばこれも雲井の月なれど猶恋しきは都なりけり K219
住馴し都の方はよそながら袖に波こす礒の松風 K220
時ならぬ花や紅葉をみつる哉芳野初瀬の麓ならねど K221
扇をば海のみくづとなすの殿弓の上手は与一とぞきく K222
今ぞしる御裳濯河の流には浪の下にも都ありとは K223
雲の上に見しに替ぬ月かげの澄に附ても物ぞ悲き K224
都にて見しに替らぬ月影の明石浦に旅ねをぞする K225
詠ればぬるゝ袂にやどりけり月よ雲井の物語せよ K226
我おもふ人は波路を隔てつゝ心幾度浦つたふらん K227
名にしおふ明石の浦の月なれど都よりなほ雲空哉 K228
かつみれど猶ぞ恋敷わぎここがゆづの爪櫛いかゞさゝまし K229
郭公花たちばなの香をとめて啼けば昔の人や恋ひしき K230
猶も又昔をかけて忍べやとやふりしに軒に薫るたちばな K231
これや此ゆくも帰るも別れてはしるもしらぬも逢坂の関 K232
世中はとても角ても有ぬべし宮も藁やもはてしなければ K233
あまた度ゆきあふ坂の関水をけふを限のかげぞ恋しき K234
ちはやぶる三上の山の榊葉は昌ぞまさる末の代までも K235
鏡山いざ立寄てみてゆかん年経ぬる身は老やしぬると K236
東路の埴生のこやの悒さに故郷いかに恋かるらん K237
故郷も恋しくもなし旅の空都もつひの栖ならねば K238
もろ共に思召てしぼるらし東路にたつ衣ばかりぞ K239
東路に思ひ立ぬるたび衣涙に袖はかわくまぞなき K240
三年へし心尽の旅寝にも東路ばかり袖はぬらさじ K241
天くだるあら人神ならば雨下り給へ天くだる神 K242
脱替る衣も今は何かせん今日をかぎりのかたみと思へば K243
憑みおく契はくちぬ物といへば後の世迄も忘るべきかは K244
思事かたりあはせん郭公げに嬉しくも西へ行かな K245
帰りこん事も竪田に引網のめにあまりたる我涙かな K246
白波の打驚す岩の上にねいらで松の幾世へぬらん K247
みちのくの里は遥に遠くとも書尽してぞつぼの石ぶみ K248
つらからば我もろ共にさもあらでなど浮人の恋しかるらん K249
思より友をうしなふ源の家にはあるじ有べくもなし K250
義経はさてもとみつる世中にいづくへつれて行家をさは K251
消ずとて憑む命にあらね共今朝まで露の身ぞ残りける K252
郭公花橘の香をとめてなくはむかしの人や恋しき K253
猶も又昔をかけて忍べとやふりにし軒にかをるたち花 KK254
奥山に紅葉ふみ分啼鹿の声聞時ぞ秋は悲しき K255
岩根ふみ誰か問こんならのはのそよぐは鹿の渡也けり K256
池水に岸の青柳散しきて浪の花こそさかりなりけれ K257
草庵無(レ)人扶(レ)杖立 香炉有(レ)火向(レ)西眠 笙歌遥聞孤雲上 聖衆来迎落日前 K258
雲の上にはのかに楽の音すなり人に問や空聞かそも K259
乾くまもなき墨染の袂かなこはたらちねが袖の雫か K260
思きや深山の奥に住居して雲井月をよそにみんとは K261
消がたの香の煙のいつまでと立廻べき此世なるらん K262
古の奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな K263
うちしめり菖蒲ぞかをる郭公啼くや五月の雨の夕暮 K264
久竪の月の桂も秋はなほ紅葉すればや照まさるらん K265
さしも亦問れぬ宿と知ながらふまでぞ惜き庭の白雪 K266
世中はとても角ても有ぬべし宮も藁屋も果し無れば K267
朝有(二)紅顔(一)誇(二)世路(一) 夕為(二)白骨(一)朽(二)効原(一) K268
古へは月にたとへし君なれど光失ふ深山べの里 K269
よしさらば真の道のしるべして我をいざなへゆらぐ玉の緒 K270
誰が世にか種は蒔しと人とはばいかゞ岩根は松はこたへん K271
50音順
あ行
あかさいてしろたなこひに取替て頭にしまく小入道哉 K178
秋の夜の月けのこまよわがこふる雲井にかけれときのまもみん K029
朝倉や木の丸殿に入ながら君にしられで帰る悲しさ K037 御返事あり、
朝倉やたゞ徒に帰すにも釣する海士の音をのみぞ啼 K038
あしからじとてこそ人は別れしか何か難波の浦は住うき K184
朝有(二)紅顔(一)誇(二)世路(一) 夕為(二)白骨(一)朽(二)効原(一) K268
東路に思ひ立ぬるたび衣涙に袖はかわくまぞなき K240
東路の草葉を分る袖よりもたゝぬ袂は露ぞこぼるゝ K118
東路の埴生のこやの悒さに故郷いかに恋かるらん K237
阿耨多羅三藐三菩提の仏達、我立杣に冥加あらせ給へ K050
哀なり老木若木も山ざくらおくれ先立花も残らじ K153
扇をば海のみくづとなすの殿弓の上手は与一とぞきく K222
あふ事も露の命ももろともに今宵ばかりや限なるらん K202
天くだるあら人神ならば雨下り給へ天くだる神 K242
あまた度ゆきあふ坂の関水をけふを限のかげぞ恋しき K234
天照す光の下にうれしくも雨と我名のふりにける哉 K025
有明の月も明石の浦風に波計こそよると見えしか K140
あるじなき宿の軒ばに匂ふむめいとゞ昔のはなぞこひしき K013
池水に岸の青柳散しきて浪の花こそさかりなりけれ K257
伊勢の海あこぎが浦に引網も度重なれば人もこそしれK045
いとゞしく昔の跡や絶なんと今朝降雪ぞ悲しかりける K051
古の奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな K263
古へは月にたとへし君なれど光失ふ深山べの里 K269
祈りこし我たつ杣の引かへて人なき嶺となりや果なん K049
岩田川誓の船にさをさして沈む我身も浮ぬる哉 K214
岩根ふみ誰か問こんならのはのそよぐは鹿の渡也けり K256
いふならく奈落の底に入ぬれば刹利も首陀も異らざりけり K042
今ぞしる御裳濯河の流には浪の下にも都ありとは K223
伊予讃岐左右の大将かきこめて欲の方には一の人哉 K003
浮節に沈みもはてで川竹の世にためしなき名をばながしつ K014
宇治川(うぢがは)に沈むを見れば弥陀仏誓の舟ぞいとゞ恋しき K079
宇治川(うぢがは)のせゞの淵々落たぎりひをけさいかに寄まさるらんK089
うちしめり菖蒲ぞかをる郭公啼くや五月の雨の夕暮 K264
打解けて寝られざりけり楫枕今宵の月の行へ清まで K177
生ては終にしぬてふ事のみぞ定なき世に定ありける K216
奥山に紅葉ふみ分啼鹿の声聞時ぞ秋は悲しき K255
おぼつかな誰杣山の人ぞとよこのくれにひく主をしらずや K136
思かね心つくしに祈れどもうさには物もいはれざりけり K169
思ひかね心のおくは陸奥のちかの塩がまちかきひなし K133
思きや富士の高根に一夜ねて雲の上なる月をみんとは K046
思きや深山の奥に住居して雲井月をよそにみんとは K261
思きや憂身ながらに廻きておなじ雲井の月をみんとは K015
思やれくらき暗路のみつせ川瀬々の白浪払あへじを K078
思やれ暫しと思ふ旅だにもなほ故郷は恋しき物をK034
思事かたりあはせん郭公げに嬉しくも西へ行かな K245
思より友をうしなふ源の家にはあるじ有べくもなし K250
織のべを一切もえぬ我等さへ薄恥をかくことぞ悲しき K076
か行
鏡山いざ立寄てみてゆかん年経ぬる身は老やしぬると K236
限りとて立別なば露の身の君よりさきに消ぬべきかな K203
かしこまる四手に涙ぞ係りける又いつかもと思ふ身なれば K070
かしましのもせにすだく虫音よ我だに物は云でこそ思へ K160
春日山かすめる空にちはやぶる神の光はのどけかりけり K009
風(かぜ)蕭々兮(しようしようとして)易水寒 壮士一去不(二)復還(一) K108
かつみれど猶ぞ恋敷わぎここがゆづの爪櫛いかゞさゝまし K229
兼てより思し事をふし柴のこるばかりなる歎せんとは K192
迦毘羅衛に共に契しかひありて文殊のみ顔相みつる哉 K129
帰りこん事も竪田に引網のめにあまりたる我涙かな K246
神風や祈る心の清ければ思ひの雲を吹やはらはん K055
乾くまもなき墨染の袂かなこはたらちねが袖の雫か K260
消がたの香の煙のいつまでと立廻べき此世なるらん K262
消ずとて憑む命にあらね共今朝まで露の身ぞ残りける K252
君があけこし手枕の、絶て久く成にけり、何しに隙なくむつれけん、ながらへもせぬもの故に K100
君が名ぞ猶あらはれん降雪に昔の跡は絶えはてぬとも K052
君が代に二万の里人数そひて今も備る貢物かな K104
君すめばこれも雲井の月なれど猶恋しきは都なりけり K219
君すめば爰も雲井の月なれどなほ恋しきは都なりけり K175
君なくてあしかりけりと思にもいとゞ難波の浦ぞ住憂き K183
君故に身をば省とせしかども名は宇治川(うぢがは)に流しぬる哉 K081
君故に我も浮名を流しなば底のみくづと共に成ばや K201
君を始て見時は、千代も経ぬべし姫小松、御前池なる亀岡に、鶴こそ群居て遊なれ K096
敬礼慈恵大僧正 天台仏法擁護者 示現最勝将軍身 悪業衆生同利益 K135
漁舟火影冷焼(レ)波 駅路鈴声夜過(レ)山 K117
草村におく白露に身をよせてふく秋風をきくぞ悲しき K012
朽果ぬ其名計は有木にて身は墓なくも成親の卿 K064
崩れつる岸も我身もなき物ぞ有と思ふは夢に夢みる K053
雲の上にはのかに楽の音すなり人に問や空聞かそも K259
雲上に響聞ば君が名の雨と降ぬる音にぞ有りける K024
雲の上に見しに替ぬ月かげの澄に附ても物ぞ悲き K224
雲間より忠盛きぬる月なればおぼろげにては云じとぞ思ふ K137
雲間より忠盛きぬる月なれば朧げにてはいはじとぞ思ふ K141
雲井より吹くる風のはげしくて涙の露の置まさる哉 K145
呉竹の本の筧はかはらねど猶住あかぬ宮の内かな K149
呉竹の本の筧は絶はてて流るゝ水の末をしらばや K150
呉竹の本は逢夜も近かりき末こそ節は遠ざかりけれ K199
荊鞭蒲朽蛍空去、諫鼓苔深鳥不(レ)驚 K063
今日迄もあればあるとや思ふらん夢の中にも夢を見る哉 K181
極楽欣はん人は、皆弥陀の名号唱ふべし、阿弥陀仏々々々々、南無阿弥陀仏、阿弥陀仏々々々々、大悲阿弥陀仏 K204
心あらん人に見せばや津国の難波渡の春のけしきを K182
心有てひくての網のたゆたはば打すてましやすまの浦風 K021
心の闇の深きをば、燈篭の火こそ照なれ、弥陀の誓を憑身は、照さぬ所は無れり K071
爰を又我住うくてうかれなば松は独にならんとやする K044
こち吹ばにほひおこせよ梅の花主なしとて春を忘な K165
琴の音に引きとめらるゝ綱手なはたゆたふ心君しるらめや K020
恋敷ばきてもみよかし身に副るかげをばいかゞ放遣べき K074
恋しとよ去年のこよひの終夜月みる友の思ひでられて K174
不(二)是花中偏愛(レ)菊(これははなのなかにひとへにきくをあいするにあらず) 此花開後更無(レ)花 K084
これや此ゆくも帰るも別れてはしるもしらぬも逢坂の関 K232
是や此こち吹風に誘はれてあるじ尋し梅のたちえは K167
さ行
草庵無(レ)人扶(レ)杖立 香炉有(レ)火向(レ)西眠 笙歌遥聞孤雲上 聖衆来迎落日前 K258
霜草(さうさう)欲(レ)枯虫思苦 風枝未(レ)定鳥栖難 K101
双■(さうふ)倶北飛 一■(ふ)独南翔 余自留(二)新館(一) 子今帰(二)故郷(一) K035
咲出づる花の都をふり捨て風ふく原の末ぞあやふき K094
桜花賀茂の河風恨むなよ散をばわれもえこそとゞめね K016
さゞ浪や志賀の都は荒にしを昔ながらの山桜かな K159
さしも亦問れぬ宿と知ながらふまでぞ惜き庭の白雪 K266
五月闇雲井に名をも揚ぐるかなたそがれ時も過ぬと思ふに K092
五月やみくらはし山の郭公姿を人にみするものかは K190
薩摩潟沖の小島に我ありと親には告よ八重の塩風 K033
薩摩方沖の小島に我ありと親には告げよ八重の塩風 K068
さまも心も替かな、落る涙は滝の水、妙法蓮華の池と成、弘誓舟に竿指て、沈む我等をのせたまへ K059
五月雨に沼の石垣水こえて何かあやめ引ぞわづらふ K090
さりともと思ふ心も虫の音もよわりはてぬる秋の暮かな K171
沢に生る若菜ならねど徒に年をつむにも袖はぬれけり K143
三界無安 猶如火宅 発菩提心 永証無為 K147
鹿を指て馬と云人も有ければ鴨をもをしと思ふなるべし K125
十方仏土中以(二)西方(一)為(レ)望 九品蓮台間 雖(二)下品(一)可(レ)足 K215
信濃なる木曾の御料に汁懸て只一口に九郎義経 K180
忍れど色に出けり御恋はものや思ふと人の問ふまで K132
白露は月の光にて、黄土うるほす化あり、権現舟に棹さして、向の岸によする波 K054
白波の打驚す岩の上にねいらで松の幾世へぬらん K247
白真弓そる恨と思しにまことの道に入るぞ嬉しき K211
しらま弓そるを恨と思ふなよ真の道にいれる我身ぞ K210
白児党皆火威の鎧きて宇治の網代に懸りけるかな K080
随分管絃還自足、等閑篇詠被(レ)知(レ)人 K008
住なれしふる都の恋しさに神も昔をわすれ給はじ K164
住なれし都の方はよそながら袖に波こす礒の松かぜ K158
住馴し都の方はよそながら袖に波こす礒の松風 K220
住吉の松吹く風に雲晴て亀井の水にやどる月影 K048
た行
桃李不(レ)言春幾暮煙霞無(レ)跡昔誰栖 K065
高きやに上りて見れば煙たつ民のかまどはにぎはひにけり K027
誰が世にか種は蒔しと人とはばいかゞ岩根は松はこたへん K271
薪こる賤かねりその短きかいふ言のはの末のあはねば K077
たぐふべき方も渚のうつせ貝くだけて君を思ふとをしれ K004
忠清はにげの馬にや乗つらん懸ぬに落かづさしりがい K123
たゞ憑め細谷川の丸木橋ふみかへしては落るならひぞ K197
谷水の下にながれて丸木橋ふみ見て後ぞ悔しかりける K198
憑みおく契はくちぬ物といへば後の世迄も忘るべきかは K244
旅立夜な/\袖をかた敷て思へば遠く我は行なん K154
旅人のたもとすゞしくなりぬらん闕吹きこゆる須磨浦波 K019
玉章を今は手にだにとらじとやさこそ心に思ひ捨つとも K134
玉鋒や旅行道のゆかれぬはうしろにかみの留ると思へば K208
誰人隴外久征戎何処庭前新別離 不(レ)酔(二)黔中(一)争去得磨囲山月正蒼々 K073
千早振(ちはやふる)現人神のかみたれば花も齢はのびにけるかな K007
千早振(ちはやふる)神に祈のかなへばや白くも色のあらはれにけり K142
■振(ちはやふる)神に祈のしげければなどか都に帰らざるべき K057
ちはやぶる三上の山の榊葉は昌ぞまさる末の代までも K235
千尋まで深く憑て石清水たゞせきあげよ雲の上まで K116
つき/゛\しくもあゆぶものかな いつしかに雲の上をば蹈なれて K087
月を見しこぞのこよひの友のみや都に我を思ひ出らん K173
つとめんと思ふこゝろのきよもりは花はさきつゝ朶もさかえん K002
常に見し君がみゆきをけふとへば帰らぬ旅ときくぞ悲しき K130
津国やこまの林をきて見れば古はいまだ変らざりけり K031
終にかく背はてける世中をとく捨ざりし事ぞくやしき K032
露深き浅茅が原に迷ふ身のいとゞ暗路に入るぞ悲しき K110
つらからば我もろ共にさもあらでなど浮人の恋しかるらん K249
時ならぬ花や紅葉をみつる哉芳野初瀬の麓ならねど K221
年比の平やを捨て鳩のはにうきみを蔵いけるかひなし K155
燈暗数行虞氏涙 夜深四面楚歌声 K205
な行
詠ればぬるゝ袂にやどりけり月よ雲井の物語せよ K226
流れなば名をのみ残せ行水のあはれ墓なき身は消ゆるとも K161
流よる硫黄が島のもしほ草いつか熊野に廻出べき K056
なき人に手向る花の下枝はたをれる袖のしをれける哉 K162
夏山の出入月の姿をばいつか雲井に又も見るべき K151
夏山の緑の色はかはるとも出入月を思ひわするな K152
名にしおふ秋の半も過ぬべしいつより露の霜に替らん K176
名にしおふ明石の浦の月なれど都よりなほ雲空哉 K228
猶も又昔をかけて忍べやとやふりしに軒に薫るたちばな K231
猶も又昔をかけて忍べとやふりにし軒にかをるたち花 KK254
涙河浮名を流す身なれども今一しほの逢せともがな K200
南無薬師(なむやくし)憐給へ世中に有わづらふも病ならずや K103
脱替る衣も今は何かせん今日をかぎりのかたみと思へば K243
上るべきたよりなければ木の本に椎を拾ひて世を渡るかな K088
法の花終にひらくる八牧には心仏の身とぞ成ぬると、不思議なりける事也。 K114
は行
墓なしや主は雲井に別るれば宿は煙と立のぼるかな K157
はかなしや浪の下にも入ぬべし月の都の人やみるとて K023
有(レ)花(はなあり)有(レ)獣山中友、無(レ)愁無(レ)歎世上情 K085
花の山高き梢と聞きしかど蜑の子かとよふるめひろふは K005
這程にいもがぬか子もなりにけり 忠盛とりてやしなひにせよ K139
浜千鳥跡は都へ通へ共身は松山に音をのみぞ啼 K036
春風に花の都は散ぬべし榊の枝のかざしならでは K072
春来遍是桃花水 不(レ)弁(二)仙源(一)何処尋 K047
久竪の月の桂も秋はなほ紅葉すればや照まさるらん K265
久に経て我後の世を問へよ松跡忍ぶべき人もなき身ぞ K43
一枝ををらではいかで桜花八十余の春にあふべき K144
人くらふ鬼とてよそになき物を生なぶりする醜女入道 K126
人しれずそなたを忍心をばかたぶく月にたぐへてぞやる K185
人しれぬ大内山の山もりは木がくれてのみ月を見るかな K086
人はいさ心もしらず故郷は花ぞむかしの香ににほひける K066
ひらやなる宗盛いかに騒ぐらんと柱とたのむ助を落して K121
吹送風のたよりに見てしより雲間月に物思ふかな K194
吹風を何いとひけん梅の花散くる時ぞ香はまさりける K187
富士川に鎧は捨てつ墨染の衣たゞきよのちの世のため K122
富士川のせゞの岩越水よりも早くも落るいせ平氏哉 K120
補陀落の南の岸に堂たてて北の藤なみ今ぞ栄ゆる K127
踏かへす谷のうき橋浮世ぞと思しよりもぬるゝ袖かな K196
古き都を来て見れば、浅茅が原とは成にける、月の光はくまなくて、秋風のみぞ身には入 K102
故郷にいかに松風恨らん沈む我身の行へしらずば K217
古郷にいかに松風恨むらん沈む我身の行へしらずば K218
故郷の軒の板間に苔むして思ひしよりももらぬ月哉 K067
故郷も恋しくもなし旅の空都もつひの栖ならねば K238
古郷を焼野の原にかへりみて末も煙の波路をぞゆく K156
蓬莱山には千歳経る、万歳千秋重れり、松の枝には鶴巣食、巌の上には亀遊 K095
法華経の序品をだにもしらぬ身に八牧が末を見るぞ嬉しき K113
仏の方便也ければ、神祇の威光たのもしや、扣ば必響あり、仰ば定て花ぞさく K060
仏も昔は凡夫なり、我等も終には仏なり、三身仏性具ながら、隔る心のうたてさよ K099
敦公名をば雲井にあぐるかな 弓はり月のいるにまかせて K091
郭公花たちばなの香をとめて啼けば昔の人や恋ひしき K230
郭公花橘の香をとめてなくはむかしの人や恋しき K253
ま行
待たばこそ更行く鐘もつらからめ別を告ぐる鳥のねぞうき K107
松枝は皆さかもぎに切はてて山にはざすにする者もなし K028
松樹千年終是朽、槿花一日自成(レ)栄 K040
松山の浪に流れてこし舟のやがてむなしく成にける哉 K039
待宵の深行くかねの声聞ばあかぬ別の鳥は物かは K105
まどひつゝ仏の道をもとむればわが心にぞたづね入ぬる K011
円子川ければぞ波はあがりける かゝりあしくも人や見るらん K189
見せばやな我を思はん友もがな磯のとまやの柴の庵を K062
道遠し程も遥にへだたれり思ひおこせよ我も忘れじ K061
みちのくのあこやの松の木高に出べき月の出やらぬ哉 K030
みちのくの里は遥に遠くとも書尽してぞつぼの石ぶみ K248
三年へし心尽の旅寝にも東路ばかり袖はぬらさじ K241
源はおなじ流れぞ石清水せきあげてたべ雲の上まで K115
都なる九重のうち恋しくば柳の御所を立よりて見よ K168
都にて見しに替らぬ月影の明石浦に旅ねをぞする K225
都をば霞と共に出でしかど秋風ぞ吹く白川の関 K112
みやこをば霞と共に出でしかど秋風ぞ吹く白川のせき K191
深山木のその梢ともみえざりし桜は花にあらはれにけり K026
御幸する末も都と思へども猶なぐさまぬ浪のうへかな K163
見るからに心つくしのかみなればうさにぞ返本の社に K172
見る儘に跡絶ぬれば鈴鹿山雪こそ関のとざし成けれ K179
結てし心の深きもとゆひに契しすゑのほどけもやせん K146
梅はとび桜は枯れぬ菅原やふかくぞたのむ神の誓を K166
埋木は花咲事もなかりしに身のなるはてぞ哀なりける K082
萌出るも枯も同じ野べの草いづれか秋にあはで有るべき K098
物かはと君が云けん鳥のねの今朝しもいかに恋しかるらん K106
武士のとりつたへたる梓弓引ては人の帰る物かは K186
百年をよかへり迄に過こしに愛宕の里は荒や果なん K093
もろ共に思召てしぼるらし東路にたつ衣ばかりぞ K239
や行
山城の井出の渡に時雨して水なし川に浪や立らん K083
山の端に契て出でん夜半の月廻逢べき折を知ねど K022
山ふかみ思ひ入ぬる柴の戸の真の道に我をみちびけ K209
山法師織のべ衣うすくして恥をばえこそ隠さゞりけれ K075
闇路にも共に迷はで蓬生に独り露けき身をいかにせん K111
行暮て木下陰を宿とせば花や今夜のあるまじならまし K193
よしさらば心の儘につらかれよさなきは人の忘がたきに K097
よしさらば真の道のしるべして我をいざなへゆらぐ玉の緒 K270
義経はさてもとみつる世中にいづくへつれて行家をさは K251
よしや君むかしの玉の床とても係らんのちは何にかはせん K041
夜泣すと忠盛たてよみどり子は清くさかふる事もこそあれ K138
世の中にあきはてぬれば都にも今はあらしの音のみぞする K018
世中のうさには神もなき物を心つくしになにいのるらん K170
世中はとても角ても有ぬべし宮も藁やもはてしなければ K233
世中はとても角ても有ぬべし宮も藁屋も果し無れば K267
夜半にふく嵐につけて思ふかな都もかくやあきはさびしき K017
諸の仏の願よりも、千手の誓は頼もしや、枯たる木草も忽に、花咲実なるとこそ聞 K058
ら行
林間煖(レ)酒焼(二)紅葉(一)石上題(レ)払緑苔(一) K131
霊山の釈迦の御前にちぎりてし真如朽せず相みつる哉 K128
わ行
我おもふ人は波路を隔てつゝ心幾度浦つたふらん K227
我門に千尋ある竹を植つれば夏冬誰か隠ざるべき K006
我心無碍法界同 我心虚空其本一 我心遍用無差別 我心本来常住仏 K148
我恋は空ふく風にさも似たり傾く月に移ると思へば K207
わがこひは細谷川の丸木橋ふみ返されてぬるゝ袖かな K195
我せこがくべき宵なりさゝがにのくもの振舞兼て知しも K213
別路を何歎くらん越て行く関をむかしの跡と思へば K119
わしの山おろす嵐のいかなれば雲ものこらずてらす月かげ K010
予(われ)捨(二)身命(一)(しんみやうをすて)惜(二)妙法(一)神投(二)霊竹(一)垂(二)感涙(一) K109
我是日本花京客、汝則同姓一宅人、為(レ)父為(レ)子前世契、隔(レ)山隔(レ)海恋情苦、経(レ)年流(レ)涙宿(二)蓬蒿(一)、逐(レ)日馳(レ)思親(二)蘭菊(一)、形破(二)他州(一)成(二)燭鬼(一)、争帰(二)旧里(一)寄(二)斬身(一) K069
我独けふの軍に名とり川 君もろともにかちわたりせん K188
我昔遇(二)薩■[*土+垂](さつた)(一) 親悉伝(二)印明(一) 発無(レ)此(二)誓願(一) 陪(二)辺地異域(一) 昼夜愍(二)万民(一) 住(二)普賢悲願(一) 肉親証(二)三昧(一) 待(二)慈氏下生(一) K212
乙女ごが乙女さびすもから玉を乙女さびすも其から玉を K001
をとめこが乙女さびすも唐玉をとめさびすも其唐玉を K124
折々はしらぬ浦路のもしほ草書置跡を形見とも見よ K206