売女の称呼

                        

菊池眞一

『文芸倶楽部』第六巻第十二編(明治33年9月10日)に、北水生が
「売女の称呼」
という一文を寄せている。港町の用語を集めたもの。
落語「三人旅」には「おしくら」「おしっくら」「八兵衛」などが出てくる。これは内陸部の言葉らしい。
以下、引用。


  売女の称呼
                 北水生

世の中に動物異名は多くあれど淫売女ほど名称の多きものはあらざるべし。海岸に位せる各地について、これを耳にせるもののみにても五十に近づけり、試にこれを挙ぐれば次の如し。

○大阪(摂津)テタタキ、モグリ、
○堺(仝)フンバリ、
○神戸(仝)シロクビ、
○兵庫(仝)チヤラ、拾銭、
○馬関(長門)ソーガ、白ユモジ、
○境(伯耆)団子、
○西郷(隠岐)ドツサリ、
○敦賀(越前)カンピヤウ、
○夷(佐渡)猫、
○新潟(越後)ヲコモ、コロビ、モツキリ、
○酒田(羽後)コモ、
○土崎(仝)下駄、
○船川(仝)野牛(やぎ)、
○能代(仝)ハガワ、
○深浦(陸奥)ゲンボ、
○函館(北海道)后嫁(ごけ)、コモカブリ、
○室蘭(仝)スミスゴ、
○森(仝)早馬、
○宮古(陸中)ヲシヤラク、
○荻ノ浜(陸前)草餅、
○東京(武蔵)ジゴク、ヒツパリ、ヨタカ、
○横浜(仝)テンセンス、
○浦賀(相模)マンヂウ、
○木更津(上総)ダルマ、
○下田(伊豆)牛、
○荒井(遠江)ラクダ、
○大浜(三河)ヤシヤコラ、
○四日市(伊勢)モーカ、
○富田(仝)ケーマンヂウ、
○鳥羽(志摩)ハシリガネ、
○久木(紀伊)ドンテレガン、
○三木島(仝)サンヤレ、
○和歌山(仝)ヲクジマ、
○大島(仝)章魚(たこ)、
○高知(土佐)キリミセ、
○博多(筑前)百文屋、
○長崎(肥前)ヨモヤチリメン、シロチリメン、トービー、クロチリメン、
○若津(筑後)粟餅、
○唐津(肥前)ノス、
○呼子(仝)ケーラン、
○鹿児島(薩摩)ハイダユ、
○琉球  アンガー、
(『文芸倶楽部』第六巻第十二編。明治33年9月10日)






2016年3月7日公開

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