尾崎紅葉の落語

               菊池眞一


『一分線香』三号・四号に紅葉作・訳の落語が載っている。
いずれも岩波書店『紅葉全集』には掲載されていない。



  ○大笑ひ       硯友社 紅葉山人
山賊の棲家に大勢仲間があつまつて盗みものゝ配当をした。一人の賊は金時計をもらつて傍へ置たのが急に見へなくなつたとて。みんな気をつけろ此中には盗賊が居るぜ
(『一分線香』三号。明治21年9月14日出版)



  ○半人前       硯友社 紅葉山人訳
三才ばかりの乳児をだいた旅の婦人が馬車へ乗たが其車のおそいことおそいこと中気やみの羊が屠所へ行やうなれば婦人は御者にむかひ。もしおまへさんこの子の賃銭はいくらです、ナアニいりません五ツ六ツのお子さんなら半人前いたゞきますけれど。そんなら半人前あげて置ませう。ヘエーなぜ。でも此馬車が着く中には此児がそのくらひになりませう
(『一分線香』四号。明治21年10月12日出版)



菊池眞一
2016年8月27日公開


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