覚一本平家物語 和歌一覧 2000.11.11 改訂版
『新編国歌大観』(角川書店)の国歌大観番号を追加しました。
和歌以外の今様や漢詩等も和歌の後に追加しました。
和歌
1.漢字仮名混じり(岩波体系本の通り)
連番 国歌大観番号 巻 章 和歌
1 1 1 3 あり明の月(つき)も明石(あかし)の浦風に浪(なみ)ばかりこそよるとみえしか
2 2 1 3 雲井(くもゐ)よりたゞもりきたる月(つき)なればおぼろけにてはい【言】はじとぞおもふ
3 4 1 6 もえ出(いづ)るもか【枯】るゝもおなじ野辺(のべ)の草いづれか秋にあはではつべき
4 6 1 7 うきふしにしづみもやらでかは竹の世(よ)にためしなき名をやながさむ
5 7 1 7 おもひきやうき身(み)ながらにめぐりきておなじ雲井(くもゐ)の月(つき)をみむとは
6 8 1 12 さくら花(ばな)かもの河風うらむなよちるをばえこそとゞめざりけれ
7 9 1 15 深山木(みやまぎ)のそのこずゑともみえざりしさくらは花(はな)にあらはれにけり
8 10 2 9 みちのくのあこ屋の松(まつ)に木(こ)がくれていづべき月(つき)のいでもやらぬか
9 11 2 13 いのりこし我(わが)たつ杣(そま)の引かへて人なきみねとなりやはてなむ
10 12 2 15 つゐにかくそむきはてける世間(よのなか)をとく捨(すて)ざりしことぞくやしき
11 14 2 16 千(ち)はやぶる神(かみ)にいのりのしげければなどか都(みやこ)へ帰(かへ)らざるべき
12 15 2 16 さつまがたおきのこじまに我(われ)ありとおやにはつげよやへ【八重】のしほかぜ
13 16 2 16 おもひやれしばしとおもふ旅(たび)だにもなをふるさとはこひしきものを
14 18 3 7 ふる里(さと)の花(はな)の物(もの)いふ世(よ)なりせばいかにむかし【昔】のことをとはまし
15 19 3 7 ふる里(さと)の軒(のき)のいたま【板間】に苔(こけ)むしておもひしほどはも【漏】らぬ月(つき)かな
16 20 4 2 雲井(くもゐ)よりおちくる滝(たき)のしらいと【白糸】にちぎ【契】りをむすぶことぞうれしき
17 21 4 2 たちかへるなごりもありの浦(うら)なれば神(かみ)もめぐみをかくるしら浪(なみ)
18 22 4 2 千(ち)とせへん君(きみ)がよはひに藤浪(ふじなみ)の松(まつ)の枝(えだ)にもかゝりぬるかな
19 23 4 2 しらなみの衣(ころも)の袖(そで)をしぼりつゝ君(きみ)ゆへにこそ立(たち)もまはれね
20 24 4 2 おもひやれ君(きみ)が面かげたつ浪(なみ)のよせくるたびにぬるゝたもとを
21 25 4 6 恋しくはき【来】てもみよかし身(み)にそ【添】へるかげをばいかゞはな【放】ちやるべき
22 26 4 8 山法師(やまぼうし)おりのべ衣(ごろも)うすくして恥(はぢ)をばえこそかく【隠】さざりけれ
23 27 4 8 おりのべを一きれもえぬわれ【我】らさへうすはぢ【薄恥】をかくかずに入(いる)かな
24 28 4 12 伊勢武者(いせむしや)はみなひをどしのよろひきて宇治(うぢ)の網代(あじろ)にかゝりぬるかな
25 29 4 12 埋木(むもれぎ)の花(はな)さく事もなかりしに身(み)のなるはて【果】ぞかなしかりける
26 30 4 15 人しれず大内山(おほうちやま)のやまもり【山守】は木(こ)がく【隠】れてのみ月(つき)をみ【見】るかな
27 31 4 15 のぼるべきたよりなき身(み)は木(こ)のもとにしゐをひろひて世(よ)をわたるかな
28 32 4 15 ほとゝぎぎす名(な)をも雲井(くもゐ)にあ【上】ぐるかな弓(ゆみ)はり月(つき)のゐるにまかせて
29 33 4 15 五月(さつき)やみ名をあらはせるこよひ【今宵】かなたそかれ時もす【過】ぎぬとおもふに
30 34 5 1 もゝとせを四かへ【返】りまでにすぎき【過来】にし乙城(おたぎ)の里(さと)のあ【荒】れやはてなむ
31 35 5 1 さ【咲】きいづる花(はな)の都(みやこ)をふりすててかぜ【風】ふく原(はら)のすゑ【末】ぞあやうき
32 36 5 2 待(まつ)よひのふ【更】けゆく鐘の声(こゑ)きけばかへるあしたの鳥(とり)はものかは
33 38 5 2 物(もの)かはと君(きみ)がいひけん鳥(とり)のねのけさ【今朝】しもなどかかな【悲】しかるらむ
34 39 5 2 ま【待】たばこそふけゆくかねも物(もの)ならめあかぬわかれの鳥(とり)の音(ね)ぞうき
35 40 5 11 あづま路の草葉(くさば)をわけん袖(そで)よりもた【堪】えぬたもとの露(つゆ)ぞこぼるゝ
36 41 5 11 わかれ路をなにかなげかんこえて行(ゆく)関もむかしの跡(あと)とおもへば
37 42 5 12 ひらやなるむねもりいかにさは【騒】ぐらむはしら【柱】とたのむすけををとして
38 43 5 12 富士河(ふじがは)のせゞ【瀬々】の岩(いは)こす水(みづ)よりもはやくもおつる伊勢平氏(いせへいじ)かな
39 44 5 12 富士河(ふじがは)によろひはすてつ墨染(すみぞめ)のころもたゞき【着】よ後(のち)の世(よ)のため
40 45 5 12 たゞきよはにげの馬(むま)にぞの【乗】りにける上総(かづさ)しりがいかけてかひなし
41 46 6 1 き【聞】くたびにめづらしければほとゝぎすいつもはつ音(ね)の心(こゝ)ちこそすれ
42 47 6 1 つねに見(み)し君(きみ)が御幸(みゆき)を今日とへばかへ【帰】らぬ旅ときくぞかなしき
43 48 6 1 雲(くも)の上に行末(ゆくすゑ)とを【遠】くみし月(つき)の光(ひかり)きえぬときくぞかなしき
44 49 6 3 しのぶれどいろに出にけりわが恋はものやおも【思】ふと人のとふまで
45 50 6 4 おも【思】ひかねこゝろは空(そら)にみちのくのちか【千賀】のしほがま【塩釜】ちか【近】きかひなし
46 51 6 4 たまづさ【玉章】を今(いま)は手(て)にだにと【取】らじとやさこそ心(こゝろ)におもひす【捨】つとも
47 54 6 10 いもが子(こ)ははふ程(ほど)にこそなりにけれたゞもりとりてやしな【養】ひにせよ
48 55 6 10 よなきすとたゞもりたてよ末(すゑ)の代(よ)にきよ【清】くさか【盛】ふることもこそあれ
49 56 7 3 千は(ち)やふる神(かみ)にいのりのかなへばやしるくも色のあらはれにける
50 57 7 12 たいらかに花(はな)さくやとも年(とし)ふれば西(にし)へかたぶく月(つき)とこそなれ
51 58 7 13 いかにせん藤(ふぢ)のすゑ葉(ば)のかれゆくをたゞ春(はる)の日にまかせてやみん
52 59 7 16 さ(*)ゞなみや志賀(が)の都(みやこ)はあれにしをむかしながらの山ざくらかな
53 60 7 17 あかずしてわかるゝ君(きみ)が名残(なごり)をばのちのかたみにつゝみてぞをく
54 61 7 17 くれ竹(たけ)のかけひの水(みづ)はかはれどもなをすみあかぬみやの中(うち)かな
55 62 7 17 あはれなり老木(おいき)わか木(ぎ)の山ざくらをくれさきだち花(はな)はのこらじ
56 63 7 17 旅(たび)ごろも夜な++袖(そで)をかたしきておもへばわれはとを【遠】くゆきなん
57 64 7 19 はかなしなぬしは雲井(くもゐ)にわかるれば跡(あと)はけぶりとたちのぼるかな
58 65 7 19 ふるさとをやけ野の原(はら)にかへりみてすゑもけぶりのなみぢをぞ行(ゆく)
59 66 8 1 一声(こゑ)はおもひ出てなけほとゝぎすおいそ【老蘇】の森(もり)の夜半(よは)のむかしを
60 67 8 1 篭(かご)のうちもなをうらやまし山(やま)がらの身(み)のほどかくすゆふがほのやど
61 68 8 2 すみなれしふるき宮この恋しさは神もむかしにおもひし【知】るらむ
62 69 8 3 世(よ)のなかのうさには神(かみ)もなきものをなにいのるらん心(こゝろ)づくしに
63 70 8 3 さりともとおもふ心もむし【虫】のね【音】もよはりはてぬる秋(あき)の暮かな
64 71 8 3 月(つき)を見(み)しこぞのこよひの友(とも)のみや宮(みや)こにわれをおもひいづらむ
65 72 8 3 恋(こひ)しとよこぞのこよひの夜(よ)もすがらちぎりし人のおもひ出られて
66 73 8 3 わけてこし野辺(のべ)の露(つゆ)ともきえずしておもはぬ里(さと)の月(つき)を見(み)るかな
67 74 9 7 けふまでもあればあるかのわが身(み)かは夢(ゆめ)のうちにも夢をみるかな
68 75 9 7 人しれずそなたをしのぶこゝろをばかたぶく月(つき)にたぐへてぞやる
69 76 9 11 ものゝふのとりつたへたるあづさ弓(ゆみ)ひいては人のかへるものかは
70 77 9 14 行(ゆき)くれて木(こ)の下かげをやどとせば花(はな)やこよひのあるじならまし
71 78 9 19 我(わが)こひ【恋】はほそ【細】谷河(たにがは)のまろ木(き)ばしふみかへされてぬるゝ袖(そで)かな
72 79 9 19 たゞたのめほそ谷河(たにがは)のまろ木橋(きばし)ふみかへしてはおちざらめやは
73 80 10 1 いづくともしらぬ逢(あふ)せのもしほ草(ぐさ)かきをく跡(あと)をかたみとも見(み)よ
74 81 10 2 涙河(なみだがは)うき名(な)をながす身(み)なりともいま一たびの逢(あふ)せともがな
75 82 10 2 君ゆへにわれもうき名をながすともそこ【底】のみくづ【水屑】とともになりなん
76 83 10 2 逢(あふ)ことも露(つゆ)の命(いのち)ももろともにこよひばかりやかぎりなるらん
77 84 10 2 かぎりとてたちわかるれば露(つゆ)の身(み)の君よりさきにきえぬべきかな
78 85 10 6 旅(たび)のそらはにふ【埴生】のこやのいぶせさにふるさといかにこひしかるらん
79 86 10 6 故郷(ふるさと)も恋(こひ)しくもなしたびの空(そら)宮こもつゐのすみかならねば
80 87 10 6 いかにせん宮(みや)この春(はる)もおしけれどなれし吾妻(あづま)の花(はな)やちるらん
81 88 10 6 おしからぬ命(いのち)なれどもけふまでぞつれなきかひのしらねをもみつ
82 89 10 8 そ【剃】るまではうらみしかどもあづさ弓(ゆみ)まことの道(みち)に入(いる)ぞうれしき
83 90 10 8 そるとてもなにかうらみんあづさ弓ひきとゞむべき心(こゝろ)ならねば
84 91 10 14 君(きみ)すめばこれも雲井(くもゐ)の月(つき)なれど猶(なを)恋(こひ)しきは都なりけり
85 92 11 11 ながむればぬ【濡】るゝたもとにやど【宿】りけり月(つき)よ雲井(くもゐ)のものがたりせよ
86 93 11 11 雲のうへに見(み)しにかはらぬ月(つき)影(かげ)のす【澄】むにつけてもものぞかなしき
87 94 11 11 わが身(み)こそあかしの浦(うら)に旅(たび)ねせめおなじ浪(なみ)にもやどる月(つき)かな
88 95 11 12 八雲(やぐも)たつ出雲(いづも)八(や)へがき【重垣】つまごめにやへがきつくるその八重(やへ)がきを
89 96 11 17 都(みやこ)をばけふをかぎりの関水(せきみづ)に又(また)あふ【逢】坂のかげやうつ【映】さむ
90 97 11 19 せきかねて涙(なみだ)のかゝるからごろも【唐衣】のちのかたみにぬ【脱】ぎぞかへぬる
91 98 11 19 ぬぎかふるころも【衣】もいま【今】はなにかせんけふ【今日】をかぎりのかたみとおもへば
92 99 12 3 かへりこむことはかた田(だ)にひくあみの目にもたまらぬわがなみだかな
93 100 13 1 郭公(ほとゝぎす)花(はな)たちばなの香(か)をとめてなくはむかしの人や恋(こひ)しき
94 101 13 2 岩根(いはね)ふみたれかはとはむならの葉(は)のそよぐはしかのわたるなりけり
95 102 13 3 池水(いけみづ)にみぎはのさくら散(ちり)しきてなみの花(はな)こそさかりなりけれ
96 103 13 3 おもひきやみ山のおくにすまゐして雲(くも)ゐの月(つき)をよそに見(み)むとは
97 104 13 5 このごろはいつならひてかわがこゝろ大みや人(びと)のこひしかるらむ
98 105 13 5 いにしへも夢(ゆめ)になりにし事(こと)なれば柴(しば)のあみ戸(ど)もひさしからじな
99 106 13 5 いにしへは月(つき)にたとへし君(きみ)なれどそのひかりなきみ山辺(やまべ)のさと
100 107 13 5 いざさらばなみだくらべむ郭公(ほとゝぎす)われもうき世(よ)にねをのみぞなく
和歌以外
国歌大観番号 巻 章 歌
3 1 6 君(きみ)をはじめてみる【見る】おり(をり)【折】は千代(ちよ)も経(へ)ぬべしひめこ松(まつ) おまへの池(いけ)なるかめをかに鶴(つる)こそむれゐてあそぶめれ
5 1 6 仏(ほとけ)もむかしはぼんぶ【凡夫】なり我等(われら)も終(つひ)には仏(ほとけ)なり いづれも仏性(ぶつしやう)具(ぐ)せる身(み)をへだつるのみこそかなしけれ
13 2 16 よろづの仏(ほとけ)の願(ぐわん)(ぐはん)よりも千手(せんじゆ)の誓(ちかひ)ぞたのもしき 枯(かれ)たる草木【くさき】も忽(たちまち)に花(はな)さき実(み)なるとこそきけ
17 3 7 桃李不言春幾暮煙霞無跡昔誰栖
37 5 2 ふるき都(みやこ)をき【来】て見(み)ればあさぢ【浅茅】が原(はら)とぞあ【荒】れにける 月(つき)の光(ひかり)はくまなくて秋風(あきかぜ)のみぞ身(み)にはしむ
52 6 9 妻子王位財眷属死去無一来相親 常随業鬼繋縛我受苦叫喚無辺際
53 6 9 敬礼慈恵大僧正天台仏法擁護者 示現最初将軍身悪業衆生同利益
2.総ひらがな(岩波大系本の振り仮名のない箇所は、独自に入れました。)
和歌
連番 国歌大観番号 巻 章 和歌
1 1 1 3 ありあけのつきもあかしのうらかぜになみばかりこそよるとみえしか
2 2 1 3 くもゐよりただもりきたるつきなればおぼろけにてはいはじとぞおもふ
3 4 1 6 もえいづるもかるるもおなじのべのくさいづれかあきにあはではつべき
4 6 1 7 うきふしにしづみもやらでかはたけのよにためしなき名をやながさむ
5 7 1 7 おもひきやうきみながらにめぐりきておなじくもゐのつきをみむとは
6 8 1 12 さくらばなかものかはかぜうらむなよちるをばえこそとどめざりけれ
7 9 1 15 みやまぎのそのこずゑともみえざりしさくらははなにあらはれにけり
8 10 2 9 みちのくのあこやのまつにこがくれていづべきつきのいでもやらぬか
9 11 2 13 いのりこしわがたつそまのひきかへてひとなきみねとなりやはてなむ
10 12 2 15 つゐにかくそむきはてけるよのなかをとくすてざりしことぞくやしき
11 14 2 16 ちはやぶるかみにいのりのしげければなどかみやこへかへらざるべき
12 15 2 16 さつまがたおきのこじまにわれありとおやにはつげよやへのしほかぜ
13 16 2 16 おもひやれしばしとおもふたびだにもなをふるさとはこひしきものを
14 18 3 7 ふるさとのはなのものいふよなりせばいかにむかしのことをとはまし
15 19 3 7 ふるさとののきのいたまにこけむしておもひしほどはもらぬつきかな
16 20 4 2 くもゐよりおちくるたきのしらいとにちぎりをむすぶことぞうれしき
17 21 4 2 たちかへるなごりもありのうらなればかみもめぐみをかくるしらなみ
18 22 4 2 ちとせへんきみがよはひにふじなみのまつのえだにもかかりぬるかな
19 23 4 2 しらなみのころものそでをしぼりつつきみゆへにこそたちもまはれね
20 24 4 2 おもひやれきみがおもかげたつなみのよせくるたびにぬるるたもとを
21 25 4 6 こひしくはきてもみよかしみにそへるかげをばいかがはなちやるべき
22 26 4 8 やまぼうしおりのべごろもうすくしてはぢをばえこそかくさざりけれ
23 27 4 8 おりのべをひときれもえぬわれらさへうすはぢをかくかずにいるかな
24 28 4 12 いせむしやはみなひをどしのよろひきてうぢのあじろにかかりぬるかな
25 29 4 12 むもれぎのはなさくこともなかりしにみのなるはてぞかなしかりける
26 30 4 15 ひとしれずおほうちやまのやまもりはこがくれてのみつきをみるかな
27 31 4 15 のぼるべきたよりなきみはこのもとにしゐをひろひてよをわたるかな
28 32 4 15 ほととぎぎすなをもくもゐにあぐるかなゆみはりつきのゐるにまかせて
29 33 4 15 さつきやみなをあらはせるこよひかなたそかれどきもすぎぬとおもふに
30 34 5 1 ももとせをよかへりまでにすぎきにしおたぎのさとのあれやはてなむ
31 35 5 1 さきいづるはなのみやこをふりすててかぜふくはらのすゑぞあやうき
32 36 5 2 まつよひのふけゆくかねのこゑきけばかへるあしたのとりはものかは
33 38 5 2 ものかはときみがいひけんとりのねのけさしもなどかかなしかるらむ
34 39 5 2 またばこそふけゆくかねもものならめあかぬわかれのとりのねぞうき
35 40 5 11 あづまぢのくさばをわけんそでよりもたえぬたもとのつゆぞこぼるる
36 41 5 11 わかれぢをなにかなげかんこえてゆくせきもむかしのあととおもへば
37 42 5 12 ひらやなるむねもりいかにさはさわぐらむはしらとたのむすけををとして
38 43 5 12 ふじがはのせぜのいはこすみづよりもはやくもおつるいせへいじかな
39 44 5 12 ふじがはによろひはすてつすみぞめのころもただきよのちのよのため
40 45 5 12 ただきよはにげのむまにぞのりにけるかづさしりがいかけてかひなし
41 46 6 1 きくたびにめづらしければほととぎすいつもはつねのここちこそすれ
42 47 6 1 つねにみしきみがみゆきをけふとへばかへらぬたびときくぞかなしき
43 48 6 1 くものうへにゆくすゑとをくみしつきのひかりきえぬときくぞかなしき
44 49 6 3 しのぶれどいろにいでにけりわがこひはものやおもふとひとのとふまで
45 50 6 4 おもひかねこころはそらにみちのくのちかのしほがまちかきかひなし
46 51 6 4 たまづさをいまはてにだにとらじとやさこそこころにおもひすつとも
47 54 6 10 いもがこははふほどにこそなりにけれただもりとりてやしなひにせよ
48 55 6 10 よなきすとただもりたてよすゑのよにきよくさかふることもこそあれ
49 56 7 3 ちはやふるかみにいのりのかなへばやしるくもいろのあらはれにける
50 57 7 12 たいらかにはなさくやともとしふればにしへかたぶくつきとこそなれ
51 58 7 13 いかにせんふぢのすゑばのかれゆくをただはるのひにまかせてやみん
52 59 7 16 さざなみやしがのみやこはあれにしをむかしながらのやまざくらかな
53 60 7 17 あかずしてわかるるきみがなごりをばのちのかたみにつつみてぞをく
54 61 7 17 くれたけのかけひのみづはかはれどもなをすみあかぬみやのうちかな
55 62 7 17 あはれなりおいきわかぎのやまざくらをくれさきだちはなはのこらじ
56 63 7 17 たびごろもよなよなそでをかたしきておもへばわれはとをくゆきなん
57 64 7 19 はかなしなぬしはくもゐにわかるればあとはけぶりとたちのぼるかな
58 65 7 19 ふるさとをやけののはらにかへりみてすゑもけぶりのなみぢをぞゆく
59 66 8 1 ひとこゑはおもひいでてなけほととぎすおいそのもりのよはのむかしを
60 67 8 1 かごのうちもなをうらやましやまがらのみのほどかくすゆふがほのやど
61 68 8 2 すみなれしふるきみやこのこひしツさはかみもむかしにおもひしるらむ
62 69 8 3 よのなかのうさにはかみもなきものをなにいのるらんこころづくしに
63 70 8 3 さりともとおもふ心もむしのねもよはりはてぬるあきのくれかな
64 71 8 3 つきをみしこぞのこよひのとものみやみやこにわれをおもひいづらむ
65 72 8 3 こひしとよこぞのこよひのよもすがらちぎりしひとのおもひ出られて
66 73 8 3 わけてこしのべのつゆともきえずしておもはぬさとのつきをみるかな
67 74 9 7 けふまでもあればあるかのわがみかはゆめのうちにもゆめをみるかな
68 75 9 7 ひとしれずそなたをしのぶこころをばかたぶくつきにたぐへてぞやる
69 76 9 11 もののふのとりつたへたるあづさゆみひいてはひとのかへるものかは
70 77 9 14 ゆきくれてこのしたかげをやどとせばはなやこよひのあるじならまし
71 78 9 19 わがこひはほそたにがはのまろきばしふみかへされてぬるるそでかな
72 79 9 19 ただたのめほそたにがはのまろきばしふみかへしてはおちざらめやは
73 80 10 1 いづくともしらぬあふせのもしほぐさかきをくあとをかたみともみよ
74 81 10 2 なみだがはうきなをながすみなりともいまひとたびのあふせともがな
75 82 10 2 きみゆへにわれもうきなをながすともそこのみくづとともになりなん
76 83 10 2 あふこともつゆのいのちももろともにこよひばかりやかぎりなるらん
77 84 10 2 かぎりとてたちわかるればつゆのみのきみよりさきにきえぬべきかな
78 85 10 6 たびのそらはにふのこやのいぶせさにふるさといかにこひしかるらん
79 86 10 6 ふるさともこひしくもなしたびのそらみやこもつゐのすみかならねば
80 87 10 6 いかにせんみやこのはるもおしけれどなれしあづまのはなやちるらん
81 88 10 6 おしからぬいのちなれどもけふまでぞつれなきかひのしらねをもみつ
82 89 10 8 そるまではうらみしかどもあづさゆみまことのみちにいるぞうれしき
83 90 10 8 そるとてもなにかうらみんあづさゆみひきとどむべきこころならねば
84 91 10 14 きみすめばこれもくもゐのつきなれどなをこひしきはみやこなりけり
85 92 11 11 ながむればぬるるたもとにやどりけりつきよくもゐのものがたりせよ
86 93 11 11 くものうへにみしにかはらぬつきかげのすむにつけてもものぞかなしき
87 94 11 11 わがみこそあかしのうらにたびねせめおなじなみにもやどるつきかな
88 95 11 12 やぐもたついづもやへがきつまごめにやへがきつくるそのやへがきを
89 96 11 17 みやこをばけふをかぎりのせきみづにまたあふさかのかげやうつさむ
90 97 11 19 せきかねてなみだのかかるからごろものちのかたみにぬぎぞかへぬる
91 98 11 19 ぬぎかふるころももいまはなにかせんけふをかぎりのかたみとおもへば
92 99 12 3 かへりこむことはかただにひくあみのめにもたまらぬわがなみだかな
93 100 13 1 ほととぎすはなたちばなのかをとめてなくはむかしのひとやこひしき
94 101 13 2 いはねふみたれかはとはむならのはのそよぐはしかのわたるなりけり
95 102 13 3 いけみづにみぎはのさくらちりしきてなみのはなこそさかりなりけれ
96 103 13 3 おもひきやみやまのおくにすまゐしてくもゐのつきをよそにみむとは
97 104 13 5 このごろはいつならひてかわがこころおほみやびとのこひしかるらむ
98 105 13 5 いにしへもゆめになりにしことことなればしばのあみどもひさしからじな
99 106 13 5 いにしへはつきにたとへしきみなれどそのひかりなきみやまべのさと
100 107 13 5 いざさらばなみだくらべむほととぎすわれもうきよにねをのみぞなく
和歌以外
国歌大観番号 巻 章 歌
3 1 6 きみをはじめてみるをりはちよもへぬべしひめこまつ おまへのいけなるかめをかにつるこそむれゐてあそぶめれ
5 1 6 ほとけもむかしはぼんぶなりわれらもつひにはほとけなり いづれもぶつしやうぐせるみをへだつるのみこそかなしけれ
13 2 16 よろづのほとけのぐわんよりもせんじゆのちかひぞたのもしき かれたるくさきもたちまちにはなさきみなるとこそきけ
17 3 7 たうりものいはずはるいくばくくれぬるえんかあとなしむかしたれかすんじ
37 5 2 ふるきみやこをきてみればあさぢがはらとぞあれにける つきのひかりはくまなくてあきかぜのみぞみにはしむ
52 6 9 さいしわうゐざいけんぞく しこむいちらいさうしん じやうずいごうきけばくが じゆくけうくわんむへんざい
53 6 9 きやうらいじゑだいそうじやう てんだいぶつぽうおうごしや じげんさいしよしやうぐんじん あくごうしゆじやうどうりやく
作成者:荒山慶一
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