『円朝全集』未掲載円朝俳句(その六)
菊池眞一
歌舞伎囃子方・初代田中凉月(十代目田中伝左衛門。本名・赤田礼三郎)は、落語家二代目三遊亭金朝の次男である。その聞書筆記に『田中凉月歌舞伎囃子一代記』(平成四年。日本芸術文化振興会)がある。
その中に父親の思い出話が出てくるが、二代目金朝は三遊亭圓朝の弟子であり、二八六頁には、次のような記述がある。
やはり父の眼が悪くなってから、円朝の弟子で円橘(二代目三遊亭円橘)という人がおりまして、この人は人情噺のほかに影絵を切っておりましたんで、この円橘が父の影絵を切ってくれまして、それに円朝が「拝むとき杖に着せたる頭巾かな」という俳句を書いて贈ってくれたことがありました。円朝という人は手も綾田流とかでなかなかお上手でした。
これも影絵が現存するのかどうか不明であるし、田中凉月の証言による他ないものであるが、円朝作の俳句であろうということで、紹介をしておく。
2022年04月21日公開
菊池眞一
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