明治期和本都々逸翻刻
   
                   菊池真一

 菊池所蔵の都々逸資料のうち、明治初期に刊行された和本仕立の都々逸本を翻刻紹介する。(以前に翻刻紹介したものは除く。)
 翻刻要領は次の通り。
一、常用漢字・人名用漢字は新字体とした。(一部例外あり)
一、濁音は適宜付け加えた。
一、特別な場合以外、振り仮名は省略した。
一、二文字以上の繰り返し符号は用いず、該当文字を当てはめた。
一、作者名は ( )に包んだ。
一、都々逸の中に挿入された詩句・文句・歌謡等は〔 〕に包んだ。
一、片仮名の意識のない「ハ」「ミ」は「は」「み」とした。
一、判読不能文字には ? を充てた。
一、パソコンで出せないもじには ● を充てた。
一、配列には意味がない。


一 『色の糸道』
色の糸道
貞信」(表紙)
月花にたゝ捨られず糸の道(半石亭山寿)
田中梓」(見返し)
こがれこがれし此むねの火を消すは水よりぬしの顔
末のはなしはまづまたしやんせ今の仕打があんじられ
野辺の若草つみすてられてたとへ切れても根はのこる
つもるおもひを枕にかたりぬしにあふ迄ひとり言
ひらきかねたる日かげのさくらあだな霞が邪魔をする」(一オ)
口説れて否(いな)にあらねどわしや稲舟の楫もまくらもとほきゑん
ぬしは駒形駒とめいしよどうぞ今宵は首尾の松
つらや日脚をはかりてまてどぬしはけふしもこんてんぎ
雪の梅見につい一枝とひらくかをりをまつ朝日
もしやそれかと掛香のうつりうらみおもてみこひ衣」(一ウ)
浮名けし壺其ふた夜さも逢にや苦労にもゆる胸
逢て嬉しい涙の川にあしと手と手をくわ筏
二世は扨おき翌(あす)さへ知ぬけふは首尾さへ侭ならぬ
うわ気男と焚附られてむねを焼やらこがすやら
まつにつらさを幾夜も重ねひとり寝る夜のこひ衣」(二オ)
とぼけて聞てりやとぼけて嘘をぬかすおかたに聞あほふ
暫し逢ねば最う秋風が吹が身にしむ人の沙汰
はなとたのしむ間に鶏が鳴月の窓から朝あらし
夢にうかれて出た魂もわれにもどりし明のかね
つとめはなれて誠を明し覚へなき身を疑がわれ」(二ウ)
うわき所か一人にしてる苦労辛苦が身に余る
日ごと願ひのかみがみ様へくろうしかまの歩行はだし
心しづめて世を見返れば苦労して又七ころび
またも俤二たび三たび夢の浮世の夢にまで
遠くへだてゝ思ひも近く夜ごと夜ごとの夢にあふ」(三オ)
いやな異見を聞たる耳を逢ふて泪であろふ滝
風の神ほどさはがす人と言ふて河原へ送り出す
命冥加の有そのうちにおとこ冥加に尽ぬやう
遅ひ事じやと最ふ待兼てさきへ迎ひに出るなみだ
可愛がらすよ笑てくれなそちも別れて来たであろ」(三ウ)
くらき心をさぐれば袖に薫りしらなく夜の梅
我(わた)しが好(すく)人皆人がすく是じや茶人と替てみよ
嘘は三千世界の中にたつた壱人もない真事
モツト英吉利亜(いぎりす)なぞむりイスにもたれかゝつて?す女郎」(四オ)
ぬしのおなかにガラスを張て検査したいよその浮気
雪はふれふれ降るゝ咄しとけにや帰さぬ翌(あす)の朝
月につら/\身の越方を語る隙さへ雲の邪魔
四六五六に目鼻が附て添ふて尽せし四九八九
ならぬ堪忍して待からは添はにや堪忍ならぬぞへ」(四ウ)
あへばわかれるつらさをおもやほんにこの世は苦のせかい
跡へひかるゝ柳のいとにわかれ出口のあさぼらけ
まちし花さへあらしが吹ばもとのつぼみが恋しうなる
おつな所へふきつけられて今ぢや苦界の浮しづみ
ひくてあまたのおまへじや物をすこしやりんきもせにやならぬ」(五オ)
いつがいつ迄とめてもおけずけさはかへして跡はさけ
うしや卯か卯かまかしたこのみうまくねとられはらがたつ
泣たむかしはゆびきりぎりす今は身まゝにつゞれさす
なまぜ添はさぬしんくもこして愛相づかしのかるはづみ
すまぬ思ひもつきあふ今宵心あかしてはれたきり」(五ウ)
笑はれるのもむりではないよ泣てくらした跡じやもの
月見かごとに内をば出たがぬしにあふ間はかゝれ雲
ま事あかさず人うたがうてどう言やかうじやとむり計
あはぬつらさに呑玉子酒きみといふ名の嬉しさに
すまぬ心はかげみのわたしぬしのゆかりは腹の月」(六オ)
おつな所へふきつけられて今ぢやくがいのうきしづみ
ひく手あまたのおまへじや物を少しやりんきもせにやならぬ
癪を押にもかひなきちからほそいゆびわもふとうなる
恋の山道人目のせきをこえて嬉しいぬしのそば
人にやかうぢやとまたいわ田帯乳迄くろうになるわひな」(六ウ)
すこしや推(さつ)しておくんなはいよふたつ心のない私し
好てこのんで苦労はすれど少しや先にも知られたい
かわい烏とうたふた宵に替て惜(にく)しとうらむ朝
倶に苦労のかんたん砕きひとつ枕にむすぶ夢
きれるやうにと結ぶ神をいけりやせぬぞへ頼みやせぬ」(七オ)
けふは思はぬこの戸の木工(もく)がわれて苦労をさす旭
何のかいろう気は同穴と二人にへ込ひとつ夜着
逢ふ夜うれしく心も晴て梅の笑顔に月の眉
時節待より思案はないと末を見てるものあんじ
遠ざかるのは当座の苦労あはれねば又逢ふくろう」(七ウ)
登りつめてはわしやゆびさゝれひよんなゑにしをつなぎ凧(いか)
すいたおかたのそのひとことがしやくの納るくすりうけ
筆の命毛きれなばきれよもはやながらへいぬ文句
そうてかうして是から先は可あいみどり子ひとつまつ
われた茶碗もかけさへあへば水もはなしももらしやせぬ」(八オ)
いちど見そめて二世迄かけてさんど笠きてしのぶ旅
私しや地車ツイ気がまはりほんにしんからやせがくる
瀬ぶみしながらツイ深はまりうかみかねたるこひのふち
時の氏神あいさつもたれよもや反古には成やせまい
西へ西へとよぶねにかよひまるのはだかのけふの月」(八ウ)
袖とそでとへ手はとふせどもぬれのかはきしゑもん筆
石にたつ矢に文まきそへてぬしにおもひがとうしたい
あけていはねばわたしがたゝず咄しやぬしへのぎりがかけ
むりなねがひが叶ふていまはよくのかぎりにそう思案
ぎりもうきよも我身をすてゝなぜかおまへがすてられぬ」(九オ)
枕ならべてまだわかくさのもえぎふとんのつまごもり
ほんにあのやうに惚られたならさぞやつらかろうれしかろ
うそはつみじやとしつてはできぬしかしぬしへはするまこと
心そだつに神さんたのみむめをたつたりすはつたり
見ても見ぬふりいはぬがひみついやなせりふはきゝつんぼ」(九ウ)
侭ならぬ恋は一重の障子が七重八重にきをもむ胸の内
りんきせぬのが女の道と浮気したさの下ごゝろ
かねてあふ夜としる笹がにの蜘のいとしひぬしをまつ
あかぬ別れのたもとの露はぬしのかたみとつゝむかほ
すえのつまらぬ事とはしれど思ひきられぬゑんの糸」(十オ)
衿や小褄にこれくけ込で与所のおかたのほれぬやう
まゝにならぬと思ふてゐたがまゝに成てもまゝならぬ
嘘をつくまと言はんすけれどぬしと二人でひとつ鍋
縁はふじ身と付(つけ)まとはれてきるも切られぬ根が深い
独寝と人にとはれて目に持泪すまぬおかたがあるわひな」(十ウ)
恥をもとでが三歩(さんぶ)にまはりほれりや七歩の身のよはみ
嘘と真事が有明あんどくらき言分かきたてる
何のかんのと其深切が今に苦労をさすのだろ
神はちからをかり寝の枕夜たゞ恋しい人の夢
憎や今更振たる毛鑓手のうらかへしてハレハイサツサ」(十一オ)
中々くらへぬアノ渋柿ににくや嘘つく種だらけ
是ほど真事を尽て見てもとゞかぬは身のふしあはせ
嬉しがらせと其うら壁を今宵かへしに来たのかへ
おもひ切る文すゞりの海へ筆の命毛なげてかく
けふは人の身また翌(あす)はわが身の上にきく明がらす」(十一ウ)
鐘もからすも恨まぬ朝はぬしを恨める訳がある
未だ未だ未だ未だ問ねばならぬ枕どころか寝さしやせん
云て仕まへばこゝろの掃除つもりつもりしむねのちり
遠ざかりたる其言草に訳のわからぬねすりごと
見付られたる手燭の火より先へ消たい四ツのそで」(十二オ)
鬼や鬼神?よし言はれてもおもひ込だるぬしはぬし
今は幽かに聞たるやうで兎かく邪魔する水の音
人のうわさを聞たびたびに若や若やとむなさわぎ
おもふ誠がかゝれぬふみに嘘がかゝれるものかいな
ぬしのこゝろは蛇かごの石よかたい様でもぬけ安い」(十二ウ)
(広告)
〔万人形絵双紙〕仕入処
大坂北久宝寺町中橋信濃清助
同南久宝寺町心斎橋西田中安治郎」(裏表紙見返し)


二 『当時流行詩入芳孝之』
当時流行詩入芳孝之」(表紙)
貞信画」(見返し)
たよりなひ身のこのわびずまひ〔辺地鴬花少。年来未覚新。美人天上落。龍塞始応春〕笑がほ見せるはいつの事」(一オ)
こがれづかれにまたそらながめ〔半夜回舟入楚郷。月明山水共蒼蒼。孤猿更叫秋風裡。不是愁人亦断腸〕なにゝつけてもぬしの気は」(一ウ)
いとゞかなしひこのゆふぐれを〔北風吹白雲。万里渡河汾。心緒逢揺落。秋声不可聞〕にくや身にそふあきのかぜ」(二オ)
むごいつれなひわかれに今朝は〔一官何幸得同時。十載無媒独見遺。今日莫論腰下組。諸君看取●辺糸〕かみまでしんきにもつれがち」(二ウ)
どふしたゑんやらをまへとわたし〔湖水還帰海。流人却到呉。相逢同愁苦。涙尽日南珠〕いくそのしん苦をするじややら」(三オ)
こうしてうちとけそひ寝をすれば〔綿綿漏鼓洛陽城。客舎平居絶送迎。逢君買酒因成酔。酔後焉知世上情〕愚痴も口絶もゆめのうち」(三ウ)
おもはず見とれて気もうつゝだよ〔冷絶全欺雪。余香乍入衣。春風且莫定。吹向玉階飛〕余所のはなとはしりつゝも」(四オ)
ふける夜かぞへて寝がほを見つめ〔月落烏啼霜満天。江楓漁火対愁眠。姑蘇城外寒山寺。夜半鐘声到客船〕わかれちかさになみだぐみ」(四ウ)
風にやなぎはあさ/\とけど〔陌頭楊柳枝。已被春風吹。妾心正断絶。君懐那得知〕とけぬはわたしがむねばかり」(五オ)
ふさぐおもひは人にもいえず〔美人捲珠簾。深座●娥眉。但見涙痕湿。不知心恨誰〕そでにつゝむよなみださえ」(五ウ)
やう気うは気でくらせるはるも〔紅粉青娥映楚雲。桃花馬上石?裙。羅敷独向東方去。謾学他家作使君〕逢れにやいつでもふさぎづめ」(六オ)
見とれましたよ今宵のすがた〔雲相衣裳花相容。春風払檻露花?。若非群玉山頭見。会向●台月下逢〕これでうは気がなひならば」(六ウ)
はれた月かげまたつくづくと〔牀前看月光。疑是地上霜。挙頭望山月。低頭思故郷〕見てはおもひにくもるむね」(七オ)
たよりすくなひ身につまされて〔去国三巴遠。登楼万里春。傷心江上客。不是故郷人〕沖のふねさへなつかしく」(七ウ)
こゝろの雲きりよしはれたとて〔西宮夜静百花香。欲捲珠簾春恨長。斜抱雲和深見月。●●樹色隠昭陽〕しのびかねたよ月の夜は」(八オ)
おもひふやすよこのはる雨は〔誰家玉笛晴飛声。散入春風満洛城。此夜曲中聞折柳。何人不越故園情〕ましてこがれで居る身では」(八ウ)
首尾して来る間のこゝろもしらず〔怪来妝閣閉。朝下不相迎。総向春園裡。花間笑語声〕ぬしやつめびきのあてこすり」(九オ)
うたがふ気もなくうつかりのろけ〔君家住何処。妾住在横塘。停船暫借問。或恐是同郷〕あかしすごしたはづかしさ」(九ウ)
うれしこの身のほんもうとげて〔閨中少夫不知愁。春日凝粧上翠楼。忽見陌頭楊柳色。悔教夫婿覓封侯〕ぬしも苦ろうのなひやうに」(十オ)
気まぎれせうとて秋ぞら見れば〔一枝?艶露凝香。雲雨巫山●断腸。借問漢宮誰得似。可憐飛燕倚新粧〕にくや小鳥もいろぐるひ」(十ウ)
にくひとなりのアノせきばらひ〔懐君属秋夜散歩咏涼天山空松子落幽人応未眠〕しのぶこの身をすゐりやうせず」(十一オ)
こゝろさみしくまつ気もしらず〔独座幽篁裡。弾琴復長嘯。深林人不知。明月来相照〕にくやてらしに月までが」(十一ウ)
愚痴なこゝろのやるかたなさに〔欲写愁腸愧不才。多情練●已低催。窮郊二月初離別。独倚寒村●野梅〕のこるうつり香たよりとも」(十二オ)
どふしたゑんやら眼さきについて〔紅衣落尽晴香残。葉上秋光白露寒。越女含情已無限。莫教長袖倚闌干〕わすれられぬよかのひとは」(十二ウ)
そひ寝してさへまたとやかうと〔春眠不覚暁。処処聞啼鳥。夜来風雨声。花落知多少〕すへの思あんにやつれだす」(十三オ)
おもひはれねばけふこのごろも〔画閣余寒在。新年旧燕帰。梅花猶帯雪。未得試春衣〕やつす気はなひはるじやとて」(十三ウ)
うれしごゝろのまたはづかしく〔草色青青柳色黄。桃花歴乱李花香。春風不為吹愁去。春日偏能惹恨長〕やくそくした夜のまちどほさ」(十四オ)
うるむ眼もとにまた空ながめ〔芙蓉不及美人粧。水殿風来珠翠香。却恨含情掩秋扇。空懸明月待君王〕今よゐもまちぼけさゝんすか」(十四ウ)
ぬしにつれなくわかれてそして〔遠聴江上笛。臨觴盃送君。還愁独宿夜。更向郡斎聞〕たれをたよりにながの日を」(十五オ)
とくしんしながらツイみれん気に〔欲別牽郎衣。郎今到何処。不恨帰来遅。莫向臨●去〕またの逢日をとひかえし」(十五ウ)
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板本
大阪心斎橋通塩町角
綿屋喜兵衛」(裏見返し)


三 『佐和理』
佐和理」(表紙)
(絵)」(見返し)
(絵)」(扉オ)
爪ひきにそれとさわりの文句からいまはこゝろもうかれ歌とは
荷堂主人」(扉ウ)
どふかあやしきそぶりとおもひ〔(ひらかな)しらぬながらも千鳥がすいりやう敵は川を渡さじと水底大綱小づな十文字に引わたし〕あじな手くだをもちかける」(一オ)
命すてゝもおもひはすてぬ〔(あこや)水ぜめ火ぜめはこたようが情と義理とにひしがれてはこのほねほねもくだくる思ひ〕思案さだめて添ふたもの」(一ウ)
またもそれかとつま戸を明て〔(一の谷)さてはよろひのかげなるか恋しとまよふ心からおすがたとみへけるかと〕にくや水鶏にだまされた」(二オ)
一座しながらツイまよはされ〔(一の谷組討)中に一きはすぐれしひおどしさしもの平山あしらいかねはま辺をさして逃出す〕とめてくろうをするわいな」(二ウ)
とかく浮世はおもひの侭に〔(新口村)奈良のはたごや三わの茶や五日三日夜を明し廿日余りに四十両つかひはたして二部のこる〕かねがせつないわかれする」(三オ)
そへぬほどなをそひたきおもひ〔(道行)お公家さまやら侍さまやらしれぬなりふりすつきりと水ぎはの立よいおとこ〕まよひそめたが身のいんぐわ」(三ウ)
わけを聞たらまた今さらに〔(二代鏡)さのみむりとはおもはねどいかに男のこうけじやとマヽわしといふものそばにおき寝所迄をしゐてやり〕これがなかずにいらりやう歟」(四オ)
この世ばかりかアレさきの世も〔(お七)手に手を引合せめいどの旅を仕升はいの思ひ廻せばまはす程〕どふぞこの身をすてぬやう」(四ウ)
いつかたがひに気をくみかはし〔(?七)水の出花へ茶のはな香そつとさし出す追蹤も〕へだてなひぞやすへかけて」(五オ)
ふつと見そめてどふした縁か〔(岩井??)何のゆかりもないものにうみや御ほんのその上にまたいろいろの御くろうかけおもへばおそろしい〕しのぶおまへもわたしゆへ」(五ウ)
おくる庭先わかれのそでに〔(鳴と)今一度かほをと引よせて見れば見るほど胸せまりはなれがたなきうきおもひ〕切戸ぐちとは気にかゝる」(六オ)
とても此世でそふ事ならにや〔(はし本)乗たわたしに神さんや仏さんがばちあてゝなぜかわたしをさかさまにおとしてころして下されぬ〕いつそ死んだがましじやあろ」(六ウ)
そんなくもりのある身じやないと〔(千両のぼり)うつして見たさくきかゞみ立うつせばうつるかほとかほ〕あわす眼もとにもつなみだ」(七オ)
どふでおまへにまかしたからじや〔(一ノ谷)早く御身が手にかけて人のうたがひ晴されよとにしに向ひて手を合せ〕すきにさゝんせこのからだ」(七ウ)
あつひなさけをフト身にかけて〔(八陣)あなたの事がくになりてほんにねたまもわすれかね〕しをれがちなるなつのくさ」(八オ)
いろはしあんの外みちかけて〔(いもせ山)おんにも恋はかへられず恋にもおんはすてられぬ二ツのみちにからまれし〕まよひましたよぬしのかほ」(八ウ)
手なべさげるはせうちのうへと〔(イモセ山)たかいもひくゐも姫ごぜの夫といふはたつた一人りけがらはしい玉のこし〕なぞとぬかしてちく性め」(九オ)
ほんにつとめの身はまゝならぬ〔(かみ治)南の元の親かたとこゝとにまだ五年ある手の内人手に取れては〕つらき意気路になきわかれ」(九ウ)
おまへゆへからこの身のなりを〔(??店)夕部の風呂の上りばでこの腹おびをかゝさんが見つけさんしてコリヤお染この腹おびはなに事ぞ〕なさけなひとはどうよくな」(十オ)
ほんにうれしくそふたる中も〔(一の谷)年月待た夫ふのさかづきかはす間もなくふり捨てのこれとはどふよくな〕ぬしのうはきにくろうする」(十ウ)
命までともかはせしなかを〔(平治)きこへぬ仰やうらめしやと主すじはなれ水仕から嫁に成たる嫁かたぎ〕それに悪性なこと計り」(十一オ)
とげてそはれぬ二人りが中に〔(二度目)その覚悟とは初からがてんして居ながらもあんまりほゐないうきわかれ〕おもふやくやしゐことばかり」(十一ウ)
いふてあいそをつかされまいと〔(帯や)あんじすごして何にもいわず六角堂へお百度もどうぞ夫にあかれぬやう〕おもふなかにもはらがたつ」(十二オ)
しのびかねてはツイうつかりと〔(かつぽう)おもひあまつて打つけにいふてもおや子の道を立〕傍の人目のはづかしさ」(十二ウ)
ほれた男のすがたとおもや〔(廿四孝)いかにお顔が似ればとや恋しと思ふかつより様そも見まがふてあられふる世にも人にも忍ぶなる御身のうへと云ながら〕仇におもひがますわいな」(十三オ)
逢ふてはなせばほどよゐくちで〔(お七)事をわけてのお詞をさらさらむりとは思はねど仮の契りも二世迄と云かはしたる恋中を〕またもうまうまのせかける」(十三ウ)
人にうき名をツイ立られて〔(?るや)よい女夫(めうと)じやとなぶられてかほのもみぢは色やかもツイ祝げんの新まくら〕いとゞおもひがますわいな」(十四オ)
わけをきくほどなをわすられず〔(彦山)はたちの上を越しながらまゆをそのまゝいかな事かねもふくまぬはづかしさ〕いふにいわれぬ身のつらさ」(十四ウ)
ふたつこゝろのあるぬしゆへに〔(円がく寺)心一ツにとつおいついふてはうらみうらんでは一人明する夜明の烏かはぬかはぬと鳥さへも〕とかくうらみがあるわいな」(十五オ)
愚知なおなごとしりつゝほんに〔(三かつ)在所うまれのこのわしと人なれさんした三勝どのたとへていはゞ深やま木とみやこの花〕うはきさんすがにくらしい」(十五ウ)
あきもあかれもせぬその中を〔(ふせ姫)アノ大ぜんのおによ蛇よ人又むくゐが有物かないものか喰ついてもこのうらみはらさいでおこふかと〕人にせかれてこのくろう」(十六オ)
たとへいかなるくろうはせうと〔(新町)下宮嶋へも身をしきり大坂の?にたつてもこなさん一人はやしのふて男にうき目はかけまいもの〕ぬしに不自由はさしはせん」(十六ウ)
おぼこごゝろにいとしとおもひ〔(山姥)そも水上の初日よりふとあひそめて丸三年何がたがひの浮気ざかりのぼるほどにのぼるほどに〕はづかしいほどわすられぬ」(十七オ)
せうちしながらみれんがのこり〔(鳴戸)今更おどろくきはなけれど一合とつても侍の家にうまれた十郎兵へどの〕こうも気づよくさゝんすな」(十七ウ)
今はわかれてこふなるからは〔(羽生村)其顔もせず??かはひがつて下さんしたおなさけ過て情なやなぜうち明て有やうにいふて聞せて下さんせぬ〕そわぬはじめがこいしなる」(十八オ)
いやなおとこにツイおもわれて〔(古八)わけて恋しいそなたの事見て??へられぬそのうつくしい心の下紐と??もらはにやおちつかぬ〕いとゞにくいはぬしのこと」(十八ウ)


四 『酒宴ノ花 三編』
酒宴ノ花 三編
サワリの部」(表紙)
(絵)」(見返し)
おそひかへりをあんじる今は〔(浄るり三かつ半七 酒屋のだん)今の思ひにくらぶれば一ねんまへにこのそのが死ぬるかゝろがつかなんだ〕かへし惜しんだむくひかよ」(一オ)
うれしかつたよかなふたときは〔(本能寺のだん)今更いふもはづかしながら去年の初春洛東の地主のお庭の花ざかりこし元どもにいざなわれねがい掛まへ初恋にいろもかも有殿御ぶり観音さまのお仲立互ひにむねの下紐もとけてうれしい新まくら〕今のしんくをしらずして」(一ウ)
ほれた男に添ひとげたさも〔(妹背山四だん目)衣紋の紐よ上帯よ解かほどへか大抵では下紐迄は手が届かずつい其中に花にかぜ〕見かへらりよかときがもめる」(二オ)
神にまかしてうつお百度も〔(合法下の巻)俊徳様の御事は寝た間も忘れず恋こがれ思ひあまつてうちつけにいふても親子の道を立連ない返事かたいほどなほいやまさる恋の淵いつそ沈まばどこまでもとあとをしとふてかちはだし〕どふぞま一度かほ見たさ
ぬしにうらみをいふことなひよ」(二ウ)〔(妹背山三だん目)女雛男雛も年に一度は七夕のあふせはあるに此よふなお顔見ながらそふことのならぬは何のむくいぞや〕すまぬむすぶの神さんが」(三オ)
顔見りやさほどに用事もないに〔(しら石二かいのだん)阪東順礼するといふて笈摺もらい国元をつゝ走つたもそんだに尋ねあふたら兄弟心一致に仕もふしだゝあの敵が討たいばかり道中すがらのかんなんもそんだにあはふをたのしみに〕むりな人目のしゆびもして
きやすめいふてはきをゆるませて〔(お三茂兵へ)」(三ウ)鶏のなくねをうき事に案じねもせぬ女房を思わず仇な恋草の花咲そとはうらめしと〕よそへきのせくつらにくさ」(四オ)
そふにそわれぬそのなかさへも〔(ぬまづのだん)今端の際によふ聞しやれ股五郎が落つく先は九州相良道中筋は三州の吉田であうたとの人のうわさ〕にくやせけんにたつうきな
ほれたからにはわしやどこまでも〔(毛谷村のだん)園はとりわけ悲しさをやるせ涙のくどき言ほんに浮世とゆい」(四ウ)ながら身にうき事のかくばかり重る物か父上の敵を?ふ門出に可愛や弟は盲目の侭ならぬ身をくどき泣跡に見捨て古里を〕しらぬたこくもいとやせぬ」(五オ)
いけんした人これ見よがしに〔(十種香のだん)中勝頼様へ親と/\のゆい号(なづけ)ありしよふすを聞よりも嫁いりする日を楽んでお前のすがたをゑにかゝせ見れば見るほど美しいこんな殿御と添臥の身は姫ごぜの果報ぞと〕お礼まいりを手をひいて
一度あふとて此しんくじやに〔(朝がほ宿やのだん)」(五ウ)またも都と迷ひ出いつかは巡り逢阪の関路を跡に近江路や身のおわりさへ定めなき恋しこひぢに目もなき潰し物のあいめも水鳥の〕つがいはなれぬにくらしさ」(六オ)
ほれたわたしの気もしりながら〔(大功記十だん目)残らず聞ておりました夫人くの打死あそばすを妻がしらいで何とせふ二世も三世も女夫ぢやとおもふているになさけない〕あへば邪見なすてことば
浮気さんすを見る目もつらい〔(あこや 琴ぜめ)水責火責はこらやふか情と義理にからまれては此ふしぶしも」(六ウ)砕くる思ひ夫ほどせつない事ながらしらぬことはぜひもなし此上のおなさけにはいつそころしてくださんせと〕ひざにもたれて目になみだ」(七オ)
おとこごゝろはそうしたものか〔(三代記八ツ目)夫婦のかため済まではどふやらつんとこゝろが済ぬみじかきなつのひとよさに忠義のかくる事も有まい是程迄につきしとふ私しがこゝろ思ひやつてくれもせで〕じつにやるせがないわいな
じぶんの浮気は口へはださず〔(千本 すしや場)」(七ウ)父も聞へず母様も夢にもしらせて下さつたらたとへこがれてしすればとて雲井に近き御方にすしやの娘がほれらりよか一生連添ふ殿御ぢやと思ひこんでいるものを〕のいてしまへとどうよくな」(八オ)
そふぢやなかろがついまわりぎに〔(お染久松賃やのだん)それにまだ/\かなしきは夕部のふろのあがり場で此腹帯をかゝ様が見附さんしてコリヤお染とふからよふすしつたゆへ〕いなんすあとから見へがくれ
むりにやとめねどとわねばならぬ〔(菅原とうてんかう)お前方のびつくりよりわしにびつくりさゝしやんしたきこへぬ」(八ウ)連合舅君?むかいを拵らへて菅丞相様ころそふとはあなたになんぞ恨があるか但しは時平に頼まれしよくにはなじみの女房もすて〕どこへきがせくいわしやんせ」(九オ)
とうざかるほどついきがもめて〔(岸の姫松三だんめ)ところをとへばアノかまくらとあとはおたちでたちさわぎ名をきくひまもなみのふねかひなき恋路とおもへどもわすれがたなくなつかしく此順礼をさいわいにかまくらを見せていのといふたももしや恋人にめぐりあわんを力竹〕いつもかゝさぬあさまいり
とめるほどなほ」(九ウ)去にせくにくさ〔(朝がほの哥)露のひひぬまのあさがほやてらす日かげのつれないにあはれ一村雨のはら/\と降かし〕そらに仲人たのみたい」(十オ)
かふもしたればきにいらふかと〔(峯姫かみすき)ヲヽいや/\これでは後に●るぞやと口にはいへど後またぬあへない命はかつら水あふがわかれか前髪もわけていわれぬ親心思ひ返しのまき返し悲しさつらさをかみしめてしまるねどりのもとゆひにむすびもとめぬ玉の緒は一く?づゝにぬきづしのしばし此世をかりわげともさきにはしらぬさけがみ」(十ウ)も見かわすばかりにゆひたてゝ〕わがみながらもばからしい」(十一オ)
いわんすきやすめうそでもなくば〔(まやがだけのだん)今更いふもはづかしけれど人里遠き此内へはじめておじやつたその時からはとしらしうてきつとして明くれおもいまそかゞみ紅おしろいもどふぞしてそなたのこゝろに可愛とおもわれたさの化粧水なにとゆひよる言葉さへなだの塩焼下もいにこがれくらしてあまごろも涙に筆のぬれぶみも」(十一ウ)恋のいろはのてならいに袖につきてふ住吉の神のみかげをあわす手もうれしいあふせを求女塚生田の森のいくたびか運ぶこゝろをちよつとでも〕かあいとおもふてくださんせ」(十二オ)
たきつけられたでいたらぬわたし〔(桂川おびやのだん)わたしも女のはしじやものはらもたつしりんきのしよふもまんざらしらぬではなけれども可愛い夫に苦をやませわづらひでも出よふかとあんじすごしてなんにもいわず六かく堂へお百度もどふぞおつとにあかれぬよふ〕むりとおもわで神だのみ」(十二ウ)
(広告)
大阪南久宝寺町四丁目
心斎橋筋西へ入四十一番地
万画草紙板元
問屋田中安治郎」(裏見返し)


五 『酒楼別品どゝ一 初へむ』
酒楼別品どゝ一
初へむ
政田や板」(表紙)
酒楼別品どゝ一
初へん
土ばし
政田や」(見返し)
市川の流れたへせぬ三升の紋は角でもあづまの花じやもの(清元 しまず)
かさねあふぎはよいつじうらよすいたおまへのもんどころ(しんばし 小はる)
まねく尾花にちかよるほたるそれかとのろけてさとられる(久保町 ひさ吉)
恋の闇路に瓦斯燈たてゝまよふお???道しるべ(清元 ??ち)」(一オ)
こひのおもにを????のせてむねで火をたくおかじようき(久保町 小七)
きしやうせいしはむかしのことよいまじやゆびわのとりかはせ
とほざかつても又アイウヱヲかはらぬちかひをタチツテト
海山へだてゝくらしてゐても心はきれないてらがらふ」(一ウ)
(東)遠くはなれてくらすも時代からだ大事に神だのみ(美吉)
(東)おまへに逢ふたびわがまゝいふもつらい座敷のうめあはせ(波?)」(二オ)
(東)文の便りじや??やらしれぬみれんなやうだが顔みたい(小糸)
(都)??むしとこらへもせうが承知しながら口が出る(小がね)
(東)にげて添ふとそりやあさはかなすゑを思ふて人頼み(小さん)」(二ウ)
(都)開きかけたるアノ梅のはな誰か水あけ床の花(小龍)
(東)思ひけるにもまことはとゞく露には色ます?にの花(小橋)
(都)心やたけに身ははやれどもさきへとゞかぬふし合せ(松吉)」(三オ)
(都)くろふさせたりしもするからはすゑは目出たくなこどやく(小悦)
(東)私ばかりがみな人さんかおまへの実意を誉ている(はん)」(三ウ)
(都)くるわ/\とおまへのうはさうか/\?れて夜も明す(小いく)
(東)せなかそむけていゝたい事もがまんすりやこそしやくの種(うた)
(都)炭をつぎ/\しあんの胸へまたもはねこむさくら炭(小かね)」(四オ)
(都)あどけないのがかわゆいけれど初心過るも程がある(小ふじ)
(都)十分の事といふてはわしやないけれどどふぞ百まで此すがた(かま八)
(東)須磨の心に短夜明し気げん直せづ鳥の声(島八)
(東)岩うつ波より手あらいおまへくだけりややさしい谷小川(波吉)
(東)庭のもみぢ葉心を染て色もさめづにちらさずに(?まさ)」(五オ)
(東)今は人目を忍んでいてもうつ?出し度ねつ??(つ?吉)
(東)実と誠を?はり?て心さだめしわしがむね(きん)」(五ウ)
(都)春が来たとて外へは出さず内で咲?る室の梅(小吉)
(都)どふせこふなりや手事にゆかぬ(六文字程不明)人頼み(?ね)」(六オ)
(都)(九文字程不明)さへみればおふた心でしんぼする(小菊)
(都)たつた一トこと落つくよふにいふて聞せて下さんせ(みつ)
(都)心のこして跡見送ればきりが邪魔して見へ?れ(のぶ人)」(六ウ)
(?)門に立たるめまつとをまつなかを取持つ〆かざり(豊菊)
(都)先をかんがへ寝られぬ宵はともにかたらふほとゝぎす(花吉)
(都)?をおもへば神々さまにむりを(以下不明)(小とし)」(七オ)
(東)浮草のういて見せても心に??さけの席なら是非がない(多喜)
(都)おもはないとは人目の関よ昼はまぼろし夜は夢(小いま)
(都)見ても見ぬふりこゝろをしめてしらぬ顔すりやます思ひ(小花)」(七ウ)
(都)わしが心?明石の浦にぬしは白波須磨の顔(赤坂こと)
(都)わたしや野に咲嫁菜やつくし人に??てつくわいな(かね吉)
(都)ある夜(以下不明)」(八オ)
(?)ふつと?つた思ひ(数文字不明)思ひ切られぬ仇思ひ(?次)
(東)気げん直してくれおみなへし花がうつむきや露のちる(小今)
(都)笑はれる?と思へと(数文字不明)切られぬ筆の先(同大吉)」(八ウ)
(東)ゑんがありやこそまたあいおひのまつにかひあるけふのしゆび(こまつ)
(都)きがね苦労は兼而のかくごはれりやいろます?の露(しげ)」(九オ)
(東)しのゝめがらすをにくひといへどかわひ/\となくわいな(??)
(都)こゝろ残してたて????じ胸にこたへるかねの声(小梅)
(東)けふのやくそく文での便りお顔見ぬうち気がまよふ(春吉)
(東)蔵にたからもほしくはないよぬしと添ふたが身のたから(ネヅ才造)
(都)けふといふけふ互のむねもはれて???やみやうと松(ふさ吉)」(十オ)
(東)人の願ひも届けば叶ふおもひはれ間に月の出る(??)
(東)すいたどうしがせにあふとり手人目のせきじなけりやよい(小綱)」(十ウ)
(東)遠江はなれて暮すも時代いまに美濃側友かせぎ(赤サカひで吉)
(東)庭の松虫なき鳴く度にもしやそれかとむなさはぎ(同小鉄)
(都)有る物をないといはんす心がにくいなんぼ?しないわたしでも(同小かね)」(十一オ)
(?)(数文字不明)しばしがまんも恋のいぢ(同米吉)
(都)こちら向なと引寄られてうらみつらみもどこへやら(同小福)」(十一ウ)
(東)朝のかへりをいそぐじやないが人目うるさい土地のくせ(同小しん)
(東)赤いまいだれきれいな茶つみ(以下不明)(同こま次)
(東)揚げた?かと人にはいふてやつておくれよ上手まく(同小つね)」(十二オ)
(都)紅葉色ます二人りが中もどふぞ秋風たゝぬよふ(同才造)
(都)峯の紅葉に夜明を聞てたにの水しもいとやせん(同小糸)」(十二ウ)
(東)手寄過ると笑ばわらへ親とわたしできめた人(仝小てふ)
(東)かはる座敷にういてはいれどあんじられるは今朝の事(仝小とく)」(十三オ)
(東)いたらぬわたしが心のくろふしれちや理みちも猶しれず(小つる)
(東)今の身もちをさらりとやめてそふたうへなら水しわざ(小竹)」(十三ウ)


六 『都々一 二編』
都々一
二編
杉丘画
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
れいの野暮めがまたしげしげにうるさいことだよどうしやうぞ
そふたゆめ見てつひおこされてあとをみたさにはらがたつ」(一ウ)
つきにむらくもはなにはあらしぬしにあふよのあけのかね
ねてもさめてもおまへのことをおもはぬひとではないわいな
ないてわかれてつひそれなりに一人りねるよのあだまくら」(二オ)
らくなせかいにくがいのつとめしばしわすりよとさけをのむ
むねにしあんはさだめてあれどぐちがこうじてものおもう
うはきなおまへにしみじみほれて」(二ウ)わたしやあはびのかたおもゐ
ゐかにつとめのわたしぢやとてもこうもうたがふものかいの
のやまこへてもおまへとふたりくらそと思ふてゐるものお」(三オ)
おもひつめたがふたりのいんぐわまゝにならねばつれてゆく
くるかくるかとまつ身のつらさあへばわかれのまたつらや」(三ウ)
やがてふうふといふてはいれどむねのけぶりがあさまやま
まゝにならぬがうき世といへどあまりしんきとちやわんざけ」(四オ)
けさもけさとておまへのうはさあんじすごしてものおもふ
ふかくなるほどおもひがますよはやくゆきたやぬしのとこ」(四ウ)


七 『珍笑団団都々一 弐号』
珍笑団団都々一
弐号
山村清助編」(表紙)
珍笑団々都々一
弐号」(見返し)
鰻の性かへぬらくらおまへ私しや焼々身をこがす
雨が取もつ相合傘よ柄漏の雫でぬるゝ恋」(一オ)
筆ぢや笑はせ文句ぢやころしほんに佞弁(べんちやら)は罪つくり
三味線の撥を小楯に欠伸を隠し強(むり)にこぼしたそら涙」(一ウ)
おまへがさうしたごま菓子いへば私しやお臍で茶をわかす
海山越えても便りが出来る切れちやいやだと伝信機」(二オ)
風船にフツト乗られこちや登りつめ先は浮気な空だのみ
恋の闇路に迷ふた中を早く月夜でくらしたい」(二ウ)
末に車を曳うと侭よ引にひかれぬ恋の意地
斯もしたらと議論をしてもどふもならない此規則」(三オ)
たがひに寄添ひ心のたけを咄して嬉しい演舌所
ほつとため息つくづく詠め〔(常は津岩川)江戸なが崎くにぐにへゆかしやんした其跡は〕残る写真が癪のたね」(三ウ)
廓(さと)の塗家(ぬりや)はツイはげやすい嘘でかためた煉瓦石
心とこゝろがあひさへすれば性があはうが合まいが」(四オ)
ぬしの心がくるはぬやうに神に願ひをかけ時計
浮気心は少しもないが恋しいお方があるばかり」(四ウ)
浮気で叩いた背中へ今は着せる羽織もうしろから
私しや鎖の継目かたく主は時計のくるひがち」(五オ)
文明開化の西洋でさへも色で分たる国の絵図
はれて女夫(めをと)となる其うちにむねは互ひに曇りがち」(五ウ)
神経病ぢやと笑はゞわらへ夢やうつゝに主のかほ
胸の蒸気のつひ燃すぎていつも航海する苦労」(六オ)
起証誓紙へ印紙を貼て末に間違や訴訟する
筆の命毛ふるうて書た起証誓紙は反古にやせぬ」(六ウ)
わたしも食るよ其鰒なべを死んでもおまへと離りやせぬ
羅生門より晦日がこわい鬼が金札とりに来る」(七オ)
主が来たかと窓の戸明りや憎やからすの阿房なき
庭の鈴むし鳴やむたびにそれと手に持摺附木」(七ウ)
嘘も誠も仕方で知れる隠すおまへの気がしれぬ
惚た同士と寒暖計は熱くなる程昇りつめ」(八オ)
ぬしの下歯はわたしと極てやめておくれよ食ちらし
鳥渡口舌で背中とせなか探る互ひの腹とはら」(八ウ)
束縛されよと斯ふなりや侭よどうせ人目の関やぶり
ふつと目覚し小声でおこし風邪を引なよ最(もう)かへる」(九オ)
あれさお待よ硝子で透(みへ)る只さへ人目の多い口
主とつながる鎖があれば赤い着ものもいとやせぬ」(九ウ)
ひるは夫の車を曳て夜るはおさせる照手姫
規則で啼のかアノ明がらすたまにや日曜(どんたく)するがよい」(十オ)
土手の柳につひまねかれて〔(清元小?)かすみのころも衣紋坂えもんつくろふ初買に袂ゆたかに大門の花の江戸町京まちや背中あはせの松かざり松のくらゐを見かへりのやなぎさくらの仲の町〕恵方参りの道迷ひ」(十ウ)
上等なお前に下等なわたし〔(清元とばゑ)どうぞだかれてねずみとはおよばぬこひの身のねがひ〕中等に隔があるはいな」(十一オ)
主の誓ひ流行(はやり)のペンキはじめ美事ではげやすい
赤い衣裳(しかけ)に迷ふたゆゑにあかい衣類(べゞ)着る佃じま」(十一ウ)
煙(けむ)と知りつゝこゝろの浅間口の端に乗る巻煙草
惚たお方は皆筒袖ですがる袂のないつらさ」(十二オ)
烏(から)サうたれる時計は狂ふ主と同寝(ともね)を正午(どん)までも
背中合せの口舌がいつか解し帯まで腹あはせ」(十二ウ)
写真になるならこゝろの内を主に見せたいこの苦労
一すぢ縄ではいかない奴が三筋の糸にはしめられる」(十三オ)
松といふ字は開化の文字よ君にわかれりや木(ぼく)ばかり
電信で便りにする様(よ)な開化の時節写真に口舌がいはせたい」(十三ウ)
はなして居たいはやまやまなれど又も蒸気の笛が鳴
最早四時かと酒あたゝめて待間程なく靴の音」(十四オ)
明の鐘の音きゝたくないがゴンとなるとはたのもしい
うそも誠も皆うちあけて話しや手管とうたぐられ」(十四ウ)
かたく育てた箱入ものを誰に解れる夏氷
憎いからすは開化で廃し残る恨みは明の鐘」(十五オ)
腹を立せて泣せたうへで重い瞼をわらはせる
悪く言りよがおまへとならば出ても嬉しい新聞紙」(十五ウ)
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〔地本錦絵〕問屋 浅草区瓦町十二番地 島鮮堂 綱島亀吉」(裏見返し)


八 『度々一礒くまで』
度々一礒くまで
豊原周春画」(表紙)
魁鴬輯
ちか春画がく
延寿堂上梓」(見返し)
そもこの草紙を礒くまでと名附けしは何でもかでも筆書(ひつかい)て一所に集めて御機嫌を酉の市から割出したおかめ八もく笑ひ種在来(これまで)発兌(よにある)の秀逸(どゝいつ)にまけましたまけましたとは知ながらそこを延喜にドヽ一の中の一番大がしらと御愛顧(おことば)あれば唐の子の是を運とや謂ふなるべし
また親につく芋作者 魁鴬しるす」(一オ)
おきが付きます道路の修繕〔(長うた石けう)万民とめりうるほふもすなわちはしのごとくとかや然るに此石橋は〕人の目につくめがねばし」(一ウ)
実じやふじつじやふじつじや実じや〔(うたざわ)かねてゝくだとわしやしりながらくどきぜうづについのりやすく〕などゝ互ひに想像論」(二オ)
あれさおよしよ人目があるよ〔(上るり太功記十段め)ぬきあしさしあしさしあしうかゞひより〕花を折ても三課ゆき」(二ウ)
是非ともきゝたゐおまへのこゝろ〔(長うた紅葉がり)そもやまことがつゆほどあらば二世も三世もかみかけてわするゝひまはないわゐな〕口のさきではあんどせぬ」(三オ)
血をはくおもひで忍んだわたし〔(清元思案の外)手にてを鳥の一とこえは月がないたかほとゝぎすめいどの鳥とかいふげなか〕なぜかこんなにこひし鳥」(三ウ)
開化のぬしをばもし見そめずば〔(上るり太閤記十だん目)こふしたたなげきはあるまいもの〕わたしや旧へゐ恋やまい」(四オ)
塞のかわらとわたしのこゝろ〔(常盤津うつぼ)おまへとだかれてねるならばおさつやすきないしないしをたちものしたがにくゐかへ〕こいしこいしで山をなす」(四ウ)
つぎこむはづだよ相手がおしやく〔(長うた舌出し三番)ふへのひしぎのねもさへたりなさへた目もとのしほらしき〕出来る時ぶんにやあつくなる」(五オ)
咲もさかぬも時せつがくれば〔(清元梅の春)はるげしきういてかまめのひいふうみゐよう〕いつか含(つぼみ)が花ざかり」(五ウ)
権(ごん)にするとて得心させて〔(上るり日本ふり袖の初序)およばぬくものうへびとさまうらみともらすもおそれながら〕それじや余(あん)まり不人情」(六オ)
窃盗ならんといぶかりとへば〔(常わづ大江山)これはおもひもよらぬおたづねわらわふたりがみのうへはおはなし申もめんぼくないがと〕のろけに査公もにがわらひ」(六ウ)
はらをおたちかすましたかをで〔(うた沢辻うらや)ひとり雪の夜忍んで来たに〕何用あるとはあんまりな」(七オ)
羽おりかくして袂にすがる〔(長うたもみぢ)さすがいわきにあらざればこゝろよわくもひきとめられて〕いやでかくせるものじやない」(七ウ)
いじのきたないわたしじやけれど〔(清元文や)おとこよけならそつちから?(ほう)はたかれがはらのうへのせるてごとはおことわり〕どふも臭気でたまらなゐ」(八オ)
翌日(あす)はおたちと蒸気のてはづ〔(上るり?のふじ四だん目)ずゐぶんごぶくとばかりにてあとは得いわぬ不定の生死おもひすごせばふさがる胸〕につこり笑ふた目に泪」(八ウ)
泣きごとまじりのおし付むしん〔(常わづ梅川)子をつれづれとうちまもりそれそのやうにいわんすほど〕わたしやゑこじでかすはいや」(九オ)
浮たせかゐにわしや水草よ〔(唄ざわ?々)その日その日のかぜしだいうそもまこともぎりもなし〕流れしだゐに花とさく」(九ウ)
わしがやきもちおまへにくわせ〔(常わづげん太)とつてつきのけ大おんあげ〕癪の根きりがしてみたゐ」(十オ)
浮気がはじめで苦労をもとめ〔(清もと山がへり)すいたらしいとおもうたがいんぐわのゑんのいとぐるま〕乃の字と子の字でさかもめる」(十ウ)
覚悟きわめて言出すならば〔(うた沢)しのびそこねてもしあらわれてながゐ刀でちよんぎらりよとまゝよ〕どうせ命はぬしのもの」(十一オ)
花の弥生は心のこまの〔(清元小夜衣)しかもさくらの初日の夜はでな一座のそのなかでついおかぼれのうわきから〕狂ふくるわの夕げしき」(十一ウ)
座しきをひかせるやくそくしたが〔(うたざわ)ゆめのたまくらついよが明てわかれたばこのおもひのけむり〕あゐにくじしんで御とり消」(十二オ)
丁度よゐ世へひよつくりうまれ〔(上るり日本ふりそで)神代のいふり末の世に恵わおふ秋津民〕男女同権じしゆ自由」(十二ウ)
はなしづくゆへ黙つて居たが〔(上るり扇富士四)むねんに無念をかさぬる月日いまだこんれゐのしゆびせぬうち〕とつくり聞たゐ主の胸」(十三オ)
文画(ぶんじん)ばやりの其また中に〔(長うた江のしま)水は山のかげをふくみ山は水のこゝろにまかす〕福しま格圃が筆のあや」(十三ウ)
親が忰へ異見をすれば〔(清元重妻)こゝろなをきはおれやすくしんじつみへてたのもしく〕忰がせがれえまたいけん」(十四オ)
急なでんしん本意なゐわかれ〔(常わづ忠のぶ)なみだはそでにおきのいしひとこそしらねさいこくへおんげこうのごかいせう〕何日の汽船でもどるやら」(十四ウ)
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東京日本橋通三丁目十三番地
丸屋 小林鉄次郎板」(裏見返し)


九 『東花開化都々一』
東花開化都々一
丸鉄板」(表紙)
周はるゑがく
まる鉄はん」(見返し)
唐詩に五言七言律と絶句ありまた往昔より皇国にては和歌と号け三十一文字と定まれり是を二ツに引わけて上十七字を発句と名付く二十六文字纒めしを都々逸ぶしとて一派を分かちよく人情を悟せしむ詩哥とも天地を感動せしむる功徳あればトヽ一以て永湯を補ふ功ありとしかいふ」(一オ)
胸で定めた吾妻(わがつま)ばしにあふて比翼のまくらばし
柳ばしから小舟はむかしいまじや合のり一とはしり」(一ウ)
写真でほれたは私しがぶ念逢ばおまへはあきめくら
口説たからとて否(いや)ならおよし出来た例(ためし)のなゐ私」(二オ)
ぬしの来る日をまつ辻うらにホヲホヲけふじやと鳥が啼
鳥はなく梅がわらへば山さへともに笑ひそめたる今朝の春」(二ウ)
羽おりきせかけ行さきとわずすねてたんすを背(せな)でしめ
しわにして来てはいやだとかけたる羽織折目だゝなゐちんちんめ」(三オ)
いつそこゝろをぶんせきさせて惚れた度量が知らせたゐ
こうするときには石さへとけるなぜにとけなゐぬしの胸」(三ウ)
長がゐお髭にみじかゐお知恵高ゐ帽子に低ゐはな
程もわるゐが女もわるゐそのくせおぜんはよくすへる」(四オ)
恋の会社が設立あらば僕は社長か副社長
無学むしつの私だけれど恋のきわめは聞にきな」(四ウ)
階子(はしご)の上からお客の背中たゝきおろしてホツと息
無しん言をかとようすを見れば惚れた横目と気障なやつ」(五オ)
三巾のふとんを土俵にしゐて素はだゆるしの大相撲
短かゐちぎりの夏の夜よりも私しやきになるあきの風」(五ウ)
初手はてくだで言たることがこんな真事になつた中
人目忍んであふかとおもや義理といふ字が邪魔をする」(六オ)
いふがほのたねがこぼれてつゐはながさくどふせ日影は身のかくご
主が露ならわたしが萩よぬれたからには退きはせぬ」(六ウ)
錐でもむよな真身の異見こたへましたよ胸に釘
主のむりをば聞くこの耳で親のいけんはうわのそら」(七オ)
忌(いや)な鯰にきがねをするもゑびすの笑顔にほれたゆへ
逢ひたゐ見たゐはわたしのくせさぬしの顔より金のかほ」(七ウ)
顋(あご)で知らせりや横目で返事顔も口ほど物をいふ
恋は思案の外とはいへどしあんつくしたけふの首尾」(八オ)
火さへ消ゆるにまだ帰らなゐマツチで居る身もさつさんせ
ちよいとうわべは寄麗に見せてすれりや火になるいつマツチ」(八ウ)
浮気なこゝろはすこしもないが恋しゐおかたがあるばかり
寄体きてれつ妙へんちきな主に添寝もおかねゆへ」(九オ)
私は水素でたゞ昇りつめ主は風船うわのそら
わたしのおしりは汽車軽気球かるゐと早ゐで人がすく」(九ウ)
いまさら荷になるわたしのからだ背追(しよつ)たおまへゝおきのどく
主と私しがふたりの中へ打ておきたゐ蝶つがゐ」(十オ)
主の意(こゝ)ろはあの八重ざくら一重のわたしをよそにして
月よ雪よとおもふちやいれど人の手活の花じやもの」(十ウ)
うしろ指をばさゝりよとまゝよぬしの小指になればよゐ
つねるその手もまた爪弾(つめびき)さ恋の手だてに遣われる」(十一オ)
高ゐかぎりの月かげさへも手に持つ鏡にかよふぞへ
胸のかゞみの曇るもどふかはれてあわれぬ月のくも」(十一ウ)
雨がさゝせる相合傘は濡るゝはじめの袖とそで
光る計りのアレゴロゴロと夕立する中ぬれ燕」(十二オ)
まけて裸かで酒だる枕末はこもまで着る積り
どふで兵隊のがれぬこの身あわれぬつらさの火燗ざけ」(十二ウ)
忍びあしして閨の戸あけてそつとたちぎくむしのこゑ
若やそれかと門の戸明けりや棒をかゝへて立ている」(十三オ)
針がねだよりが人目にしれず届きややりたいこゝろいき
ふじの山ほど登つたわたし烟(けむ)にするとは浅間しゐ」(十三ウ)
忍ぶ間もなくはや東雲を告るからすの啼わかれ
しつぽりぬれたる情の露が袖をしめらす種となる」(十四オ)
粋なおまへと添たゐばかり梅子(うめ)を断つての神だのみ
すゐてすかれてすかれてすゐて酢あじをすく身となりました」(十四ウ)
(広告)
東京日本橋通三丁目十三番地
丸屋 小林鉄次郎板」(裏見返し)


十 『開化五もくドヽ一』
開化五もくドヽ一
豊原周春筆」(表紙)
与兵衛の混交(ごもく)鮨は甘口ながら下戸には却て口に合ひ竃ゐがらの笹巻は酢の利たのと堅ゐが天狗(じまん)粋もあまいもお客の好々どふか口調も新らしき草?(たね)を吟味の蛇の目ずしもやし生姜の味じもなき開化五もくと外題を付け山葵と倶に摺出せばきゐた風なと御見捨なく安宅の松の末永う御愛顧を乞と
魁鴬」(一オ)
風船究理の始めじやなどゝ〔(長うたあたか)にはかにふきくるはやち風天地も一どにめいどうしてがんせきこぼくゆさゆさゆきどろどろどつと〕世かゐが崩れる空ばなし」(一ウ)
親のさとしを背(そむ)ゐて出かけ〔(清元落人)とまりどまりのはたごやでほんのたびねのかりまくら〕君(ぬし)と私しの此苦労」(二オ)
知恵のつるべがとゞかぬゆへに〔(雨もと浅間)あさいこゝろとしらいとのそめてくやしきなれごろも〕深ゐこゝろはくみかねる」(二ウ)
病ませたおまへに貰ふたくすり〔(うたざわ)本家はおゝさかあづち町のぶ山かでんのせんきんたん〕直りましたよ癪つかへ」(三オ)
骨がなければ一所になるよ〔(常わづいろのともし)あゝもしもしこりやどうでござります〕などゝふわけのお医者しやれ」(三ウ)
まわる布達(ふこく)を見習ふからは〔(上るり忠臣蔵三)ちつとは女房のいふことをきいてくれたがよいわゐな〕いけん圧制きゝはせぬ」(四オ)
人目の関さへ誰はゞからず〔(朝がほ)なにしおふかいどう一のおゝ井川今は開化ではしわたし〕今は開化ではしわたし」(四ウ)
店(たな)子もいきだが鯰もすきさ〔(清元亀かけ?)まさりおとらぬ花もみじ中にやなぎのどちらになびく〕わたしや鰻でのらくらと」(五オ)
ぬしのためには苦がいへしづみ〔(清元二人奴)たがいにむねをうちあけてきもあいぼれのすいたどし〕すへの約定楽しみに」(五ウ)
海老で鯛とは旧幕ごろよ〔(唄ざわ)げいしや朝がへりをまんまどからみれば顔は青ざめこしはふりふり定めし夕しはおたのしみ〕今じや蛭子で猫をつる」(六オ)
しばし間のある解隊までを〔(常わづ忠のぶ)あかぬわかれの神いぢりほとけなぶりも恋ゆへに〕旧弊らしゐに断つ煙草」(六ウ)
猫に三すじの手綱があれば〔(清元暦うた)ほれたせうこのいゝがゝりきかぬきせうもとりかわし〕乗せてひかれるのら鯰」(七オ)
ぬしと家業と一処にこれば〔(上るりあだち三)こゝろのやみのくれちかく〕いそがしゐぞへがすがゝり」(七ウ)
出かせぎとはいへこゝろのうちは〔(清元権八)つらゐつとめのそのうちに情はかれとこゝろまでうらぬわたしがくがいのまこと〕おまへの女房と極ている」(八オ)
君をまつむしわしやひとり虫〔(ときわづ茜ぞめ)なつのむしかやともしびをともすじぶんにきかゝりて〕こいにこがれて身をこがす」(八ウ)
ころで一升番州はやく〔(清もと網打)いもはわれらがこうぶつもの大がんぜうじゆかたあしで〕忘れられなるおやじ橋」(九オ)
じつと手をとりみぞ落おさせ〔(清元おはん)いとしかわゐのかずかずがつもるとかいて癪とやら〕胸にこたゆるヱレキテル」(九ウ)
まゝになるならこゝろをわつて〔(長うたきせう)おもうこと叶わねばこそうき世とはよくあきらめたむりなことかみやほとけがうそつくならばほれたせうこをどうかこかいな〕写して見せたゐ此写真」(十オ)
人の愉快を害すじやないが〔(ときわづ宗きよ)じせゐにらんをわすれぬため〕朋輩(とも)を諫めは人の義務」(十ウ)
としはゆかねどはゞかりながら〔(長唄三重がすみ)目見へそめにしその日よりいわでおもひのますかゞみ〕わたしやとうから開化した」(十一オ)
わたしやからんだ団扇の糸を〔(うたざわ)おまへと一所にくらすなら深やまのおくのわびずまゐ〕ほねになつてもはなりやせぬ」(十一ウ)
ふんばりあまめとおしかりなれど〔(うた沢)はかなきこいのやるせなやなんにうき世はまゝならぬ〕旧ばくごろには姫ごぜん」(十二オ)
世かゐのゑづでも銀行札も〔(長うたそ????)おぐらのゝべのゑびすがみふみにうれしきさまゝいる〕いつでまとめて出来ている」(十二ウ)
外にやがす燈内にはらんぷ〔(うたざわ)しのびしのびであいぼれにくぜつのとこの泪あめ〕夫れにわたしは恋のやみ」(十三オ)
今夜ふたりで十銭出せば〔(清元きせん)せうじも此ごろはりかへてたゝみも此ごろかへてある〕ちよゐときれゐな安どまり」(十三ウ)
〆たこゝろもいつしか君(ぬし)に〔(清元愛いの字)ぴつたりいだき月と梅むつまじかりけるしだゐなりしだゐなり〕しのびどけする繻子の帯」(十四オ)
権柄は民に授けて憲兵おかれ〔(清もと北洲)日々に太平のあしをすゝむるあしわらの〕国は長閑かな御代の春」(十四ウ)
(広告)
東京日本橋通三丁目十三番地
丸屋 小林鉄次郎板」(裏見返し)


十一 『開花都々逸 後篇』
開花都々逸
後篇」(表紙)
(三下り)わしがおもいはさんごくいちよふじのみやまのしらゆきつもりやするともとけはせぬうきなたつかやたつかやうきなあんなおひとゝいわんすけれどひとのこゝろはあいゑんきへんほんにいのちもやるきになつたわいなア
(同)こんのまへだれまつばをそめてまつにこんとはきにかゝる」(一オ)
(同)とりがけにねづみなきしてなぶらるゝこれもくがいのうさはらしぐちがのませるひやざけはしんきしんなくのヱヽくのせかい
(とゝいつ)ぬしにわかれてなにたのしみにしづむかくごにきわめしか」(一ウ)
(本てうし)みじかよにのこるくぜつのあさなおしむかいのちよきはすておぶねそのまゝけふのいつゞけはたがいにつのるこひのじやうはれてそいねをまつわいな
(同)みはひとつこゝろはふたつみつまたのながれによどむうたかたのとけてむすぶのかりまくらあかつきがたのくものおびなくかなかずのほとゝぎす」(二オ)
(同)はるかぜにうめがかほればきみをまつこゝろのたけをうしれさにはつねのゆめにみをそへてにくらしいあけのかね
うそとまことのふたせがはだまされぬきでだまされてすへはのとなれ山となれわしがおもひはきみゆへならばみつまたがはのふねの?ちこゝろのうちをおんさつし」(二ウ)
(同)じつとなさけのついまちがいにあそびすごしてとまるてふ(入り連 ?香)
はなはさかりでめにつきながらいやなあらしがふきたがる
(同)はつゆめのはなしなかばにおまゑのふみはゆめもゆめとはおもわれぬ(入り連 松井あん)
(同)ゆめの見そめにだきしめかざりふたりねまつのゑほふだな(入り連 梅香)」(三オ)

(同)おもいつのりてとけないゆきもとけてはなさくふくじゆそふ(谷ツ山れん 青?)
(同)ひいきがしらにはつはるしばいはなぢやさんばがふくじゆそふ(???ふ 松??)
(同)こゝろうれしやこのはつゆめは〔(はうた)ひととへばつきがないたかほとゝぎすいつしかしらぬみじかよにまだねもやらぬたまくらや〕もふいちど見なおししてみたい(??連 小林かね女)」(三ウ)
ないてうれしいゆふべにかわりわらつてせつないこのざしき
てづるもとめておくりしふみがいまはうきなのひやうばんき
あかるいしあんがついでるならばこいのやみじにまよやせぬ」(四オ)
ふたまたたいこのわれめを見てもくにのにやうぼをおもひだす
はごをつくみはひとごにふたごどこのとふじんのむすめエだろエ
やきもちをやくよりぱんでもやきなくわねじやうはきもいでやせん」(四ウ)
あいそめはたしかふじゆうの日でありんしたのかそはねどきられぬふかいゑん(吉田 婦久寿)
けさはおかへりまたあふまでもそうすりやみのためへやのまい(神田大工丁 げいしやとり女)」(五オ)
みせへよばれてやれうれしやとおもやおくにのおさむらひ(本郷元丁 常わづかきやう)
女ぼさらせてはたしを女ぼまたもぢよろしゆにはまりこみ(行田 柳我)」(五ウ)
明治廿七年三月二日印刷
同年仝月五日出版
東京市日本橋区伝馬町三丁目十七番地
近江屋号 長谷川園吉
(広告)」(裏見返し)


十二 『〔文明開化〕どゞ逸』
※外題は手書き。
〔文明開化〕どゞ逸
歌合亭」(表紙)
梅とさくらのあひ乗ぐるまかけていそがす人力車」(見返し)
たまたまあふのにあの明がらすうるさひ時計の一時はん」(一オ)
旧へいがんこにわたしがこゝろおもひきれとは開化せぬ」(一ウ)
むかしや高尾は大名ふるが今じや大名がたかをふる」(二オ)
松といふ字はひらけた文字よ公(きみ)と木(ぼく)とのさしむかひ」(二ウ)
やみよがすとう晦日に月よさぞやしつはりやこまるだろ」(三オ)
おまへのゆびわをわたしがはめて見ればしつくりあふうれし」(三ウ)
あわじ嶋かよふ千鳥はありや文づかひうちへしれてはすまの浦」(四オ)
やくは女房のりんきといへどやかざなるまい鍋のしり」(四ウ)
おもふおかたのしやしんをだひてせめてにつこりしておくれ」(五オ)
浅草奥山
大慈大悲のぼさつのお庭よもや地ごくはありやせまひ」(五ウ)
顔見たばかりできはすみはせぬものいふしやしんがなぜできぬ」(六オ)
かごの内とはむかしの事よ今じや気まゝのほたるむし」(六ウ)
こがれちや居れども其人さんにあへばこゝろもてれがらふ」(七オ)
雪のあしたのつひいつゞけにつもるはなしのむつの花」(七ウ)
恋しひおかたのあの一ト声は夢であつたらほとゝぎす」(八オ)
ゆふべあふたにまたかほ見たくこゝろにうなづくてれがらふ」(八ウ)
おまへのしやしんにうきみをやつし人目わすれてしのびなき」(九オ)
よひの口ぜつに背なかとせなか気げんなをしてはだとはだ」(九ウ)
羽織きせても洋服きてもしんそこほれたがむりかひな
日本ばしことふり四丁め まつざかや板」(十オ)


十三 『開化どゞ一 壱号』
開化どゞ一 壱号
永島辰五郎録」(表紙)
円き地球に頭もまるく西洋かざりにしやぼん玉
しんぼうさんセヨ雨だれさへも石を突ぬくちからあり」(一オ)
文明開化で規則が替るかはらないのは恋のみち
おまへと私しが二人りの胸へ掛けて置たや天利加羅夫」(一ウ)
井戸の蛙はこの大空を四角なものじやと議論する
雪見がへりにもやひをつけてとけてうれしき舟のうち」(二オ)
朝夕に顔は見合ど心のたけを通じ兼たるがらすまど
二人りの間へよい子をもうけ家族二人と門の札」(二ウ)
ぬしはかうもり私しやステツキよ互ひにさしたりさゝせたり
つらい座しきやしにくな客の機嫌とるのも親のため」(三オ)
通ふ恋路に石橋かけて手に手ひかれて渡りたい
真直に往(ゆか)にやならない車でさへも横にそれるはかぢしだい」(三ウ)
いろはせず京のきむすめさへも今じやアイウヱオでサシスセソ
いきでかうとて極(ごく)人がらで夫で金もち女房もち」(四オ)
ぬしの来ぬ夜は写真を出して愚痴の様だが懐(だひ)て寝る
いやならいやだと判然(はつきり)いひなおめへ計りが色じやない」(四ウ)
おまへばかりがばかりじやないよほかにばかりがあるばかり
髷をはらつて散髪あたま開化すがたの程のよさ」(五オ)
浮気商売さらりと廃て権妻き取りでぬしのそば
風船に二人り乗組地球をはなれ晴てはなしがして見たい」(五ウ)
軒にひらめく日の丸旗に霞たなびくてりがらふ
学校へ雪の降日も露いとわずに通ふ生徒の末を見よ」(六オ)
ぬしが道理か私しが無理か是非の裁判してほしい
逢た初手から袖ない人と知りツヽほれたが馬鹿らしい」(六ウ)
夏もつめたい氷といへど胸のほむらは消はせぬ
ほれた同士でつひうか/\と九時の出仕が遅くなる」(七オ)
美しづくならよしてもおくれ五色がらすは破やすい
娘大事と人にも見せぬうちに色づく室のうめ」(七ウ)
屏風小楯に枕の土俵床へ切込む抜刀隊
恋の夜学に勉強つみて色の手くだの大教師」(八オ)
私しや旧弊ぬしや開化人そりのあわぬは知れて居る
先は多情であらふとまゝよわたしや実意をどこまでも」(八ウ)
日本国中でそはれぬならば知らぬ異国でそひとげる
楽を振すておまへと添てくらうするのもいぢと情」(九オ)
朝顔の花のやうなるおまへの気まへ日ごと日ごとに気がかわる
足を突張り両手でおさへこしをしねつてふむミシン」(九ウ)
おまへが時計で私しがねぢよすこしのゆだんでくるひだま
そはれにや死ぬとは昔しのことよ命ありヤこそあへもする」(十オ)
姿ばかりの写真じやいけぬ心の底までうつしたい
鎧兜をさらりとすてゝ洋服でたちのいくさ人
木宗版」(十ウ)
(広告)
〔地本錦絵〕問屋〔馬喰町三丁目十番地〕出版人 木屋 小森宗次郎」(裏見返し)


十四 『大ゆかひどゝいつ日記 一号』
大ゆかひどゝいつ日記 一号
金英堂はん」(表紙)
月もあだにて田毎につるぬしの実はいづくゑか
一声は夫か現(あらは)に姿は見へぬおぼろ月よのほとゝぎす」(一オ)
ちらと影さす軒端の雀鼠なきまでしてくれる
身でもなしかはでもないよありやたゞの客せはにやなれどもすじぢやない」(一ウ)
思ふお方と夏吹く風はそつと入たや我がねや
わけもないことぶつたりけたりしまだのけまりじやあるまいし」(二オ)
かくしとふしてけふ此頃はのろけたいのが胸の中
花にやどりし月影よりもとけてねるよの雪の肌」(二ウ)
花の笑顔にさす月の眉ゆきの肌えに三ツぶとん
末の約束書巻紙のつぎめはなれて者思ひ」(三オ)
ないて待よに更行かねは明のとりよりまだつらい
言て置のになぜ浅はかな口ゆへ浮なが立わいな」(三ウ)
色のあるのを初手からしらばかうしたわけにはならぬもの
菊に隠るゝあの姫小松はやく根分をして見たい」(四オ)
船や車じや便りがおそい早く聞たいてりがらふ
東京街(ちまた)と借金の穴はやけのたびたび広くなる」(四ウ)
生ていりやこそあきらめられぬそわれざおまへのてにかけて
我が身で分らぬ我身の心とんだはづみで此始末」(五オ)
かげはさしても顔見る計手にはとられぬ月の水
人の落めとしらない顔をするが世間の人のつね」(五ウ)
ぎりを思へば浮気はできず酒をのんでもよいもせず
だましたものよりうかうかのつてだまされた身がうらめしい」(六オ)
今に見なんせ最(もう)程もなくひだりうちはでくらします
家を思へば為にはならず為にするのはきがすまぬ」(六ウ)
惚たどふしで気楽なくらし小袖ぐるみで朝ねぼう
私(わたしや)お前故遠藤豆じやないが胸にいつぱいたへはせぬ」(七オ)
垣の朝がほ便りにされてからみつくほど力竹
ところ定めぬあのうきくさやけふはあちらのきしに咲」(七ウ)
命を捨るはてんから覚ご死までゑんを切ものか
梅と桜の色かをくらべ中をすました糸柳」(八オ)
主はお店へ私は内で飯(まゝ)ごしらへしてはり仕事
世間の口のは身中の歎はぢも思はぬぎりしらず」(八ウ)
かわいけりやこそりんきもするに別れるほどならやきはせぬ
惚たどふしで婦夫(ふうふ)になれば家内和合でとみさかへ」(九オ)
雪はつもれど互の胸はとけてなかよきたまござけ
わしが思ひはやけのゝきゞすけんもほろゝのへんじいや」(九ウ)
わしが心はかやぶきやねよ瓦ないのをさつしやんせ
かくす恋路とよるふる雪は人目しのんでふかくなる」(十オ)
色があるならまた楽しみも有にくやしきやけなすび
ぬしをかへして又おもひだす雪のなごりの下駄のおと」(十ウ)


十五 『開化浮世とゞ一 三・四』
(表紙欠)
上のお世話の下々までも届く郵便早だより
常に優しいほうばい迄がお前をそねんでむかふづら」(一オ)
鎧兜をさらりと廃て筒袖じたてのいくさ人
添ふて苦労は世上のならひそはぬ先から苦労する」(一ウ)
輪る地球は眼に見へねども積るよはひは目にあまる
様子聞なキヤさぞ腹が立是には漸々訳がある」(二オ)
女郎の誠と玉子の四角なくても三十日にて月が出る
嬉しい中にもこはひが三分惚たおまへに新まくら」(二ウ)
人力車の喧嘩を夜る出て見ればやみでげんこのめつたうち
女房もちとは初手から承知惚るに加減が出来やうか」(三オ)
ぬしが道理か私が無理か是非の裁判してほしい
親はこの手で切文かけて言ふて手習ひさせはせぬ」(三ウ)
意気な芸者が素顔に成て路の便所が白くなる
思ひ出すやうじや惚よが薄いおもひ出さずに忘れずに」(四オ)
赤い仕掛で迷わす者は色の夜学の教道師
今朝の夢見によろこび烏心うれしきねずみ鳴」(四ウ)
主は石盤私しや石筆よたがひに離れぬすゐた同士
浮気なおまへにまじめな私し結びちがひの仇ゑにし」(五オ)
西洋姿にズボンとはまり袖ないお方でくらうする
虫を殺して言れて居るもみんなおまへをかばふゆへ」(五ウ)
いろはせず京の娘でさへも今じやアイウエヲでサシスセソ
遺趣も意恨もない客人へつらくあたるもおまへ故」(六オ)
是は盆載眺めの花よあれは権妻閨房(ねや)の花
出来ぬ辛抱もおまへ為とつらい苦労のうき月日」(六ウ)
美しづくならよしてもおくれ五色ガラスは破やすい
愚痴も言ふまい吝気もせまい人の好人もつ過報」(七オ)
陸(おか)にや蒸気車海には気舟空天(そら)にや風船てりがらふ
ほつとため息枕にもたれ互ひに見合す顔とかほ」(七ウ)
昼夜はたらく時計でさへも狂ひ出すのはねぢしだい
義理と世間と人目がなけりやこんな苦労はせまいもの」(八オ)
学校へ雨の降日も露いとはずに通ふ生徒の末を見る
気づよいばかりが男の情か少しはなさけをかけさんせ」(八ウ)
昔しや色恋今金次第程や美麗(きりやう)はそつち除
度胸定めて挨拶しやんせ酒の上だと言しやせぬ」(九オ)
美麗尽せし博覧会の品は精工(せいく)のうでくらべ
ぎりにからまれ心の竹を八重にくんだる籠細工」(九ウ)
十五夜に兎飛出て空天(そら)打ながめ月の出ぬのでまごついた
のぼりつめたよ方図もなしに糸のありたけ奴凧」(十オ)
恋の手ならひいつ書そめて筆に言せるいろは文字
たつた一ト夜が思ひの種よ知らざ他人でくらすだろ」(十ウ)
(広告)
東京日本橋区松島町一番地水天宮通り
地本問屋 松延堂 伊勢屋 大西庄之助板」(裏見返し)
開化浮世とゞ一 四」(表紙)
馬車にされたも京橋かぎり煉瓦あくればぬしの側
今宵みめぐり嬉しの森よ何卒あしたも首尾の松」(一オ)
中もよし原ひつくり合てほれた同士の仲の丁
替るまいぞへ万代までも堅くかけたる石のはし」(一ウ)
私しや三ツ井のしやちほこじやないが恋にや心もうはのそら
撞(つい)てくりやるな浅草がねよ真乳と言ふなも有わゐな」(二オ)
高い燈籠は戦死の者を祭る九段の招魂社
抱て玉姫玉秘めいなり深い中田と人がいふ」(二ウ)
心両国身は一ツ目よほんに思ひは侭ならぬ
三筋で世渡る身も立通す恋と意気地の日本ばし」(三オ)
たまに大橋別れのつらさ是が中洲に居られうか
開化の世の中筒袖ばやり昔しや兜に鎧也」(三ウ)
惚た同志で遂寝過して九時の出仕がおそく成る
三味線枕にぐと引寄て可愛らしいとだく小猫」(四オ)
腰をそらして大あせかいてアレサ行ます人力車
大学の道をおしへる孔子でさへもほれりや死ふとのたまはく」(四ウ)
私しや旧弊主や開化人そりの合ぬは知れて居る
じれツたい程なぜ此やうに惚た私しの気が知れぬ」(五オ)
堅い約束石橋かけて私しの眼鏡で好た人
お前一人に苦労は為せぬ足ぬ私しも共々に」(五ウ)
取た誓紙違約と成ば到底(つまり)分署の御厄介
秋の風(はつかぜ)身に染々と便り聞たや鳫の文」(六オ)
なまじ写真が思ひの種よ越力(ゑれき)で口をば聞せたい
私しやおまへの煙管と成て片時側をば離りやせぬ」(六ウ)
ぢつと手にとるおまへの写真あふた初めを思ひだす
錐で揉よな真身の異見こたへましたよ胸にはり」(七オ)
寺の大黒貧乏の種よペラの恵比寿は福の神
月にそなへた彼花すゝき風の吹たび小手招ぎ」(七ウ)
新聞で発(ばつ)と世間へ知れたる上は末に貞女と出るまで
逢ぬ身なればあきらめよいがなまじ顔見りやます思ひ」(八オ)
私しや長靴お前はとんび晴て逢れぬ身の因果
あきらめましたよどうあきらめたあきらめられぬとあきらめた」(八ウ)
(裏表紙欠)


十六 『開化入りどゝいつ』
※表紙と中身がそぐわぬ感じがする。
開化入りどゝいつ
辻文板」(表紙)
一隣斎芳?画
(都々一)あら玉のとしの始のさてふでとりてぬしのなをかきなぶらるる
(都々一)はるがきたとて二人がふたりこふもまがよくなるものか」(一オ)
(とゞ一)いやなおきくをわるとめするみんなおへやをぬしのため
(都々一)しがみつこうとおもふちやいれどあへばうかうかだまされる
(とゝ一)おもひきれときらるゝものかすいかじやなけれどほんのいろ」(一ウ)
(とゞ一)かんがへて見てもはからぬよるひるかよふこいはしあんの外のもの
おかごどころかかねならかりよふしん見舞によし原へ
(とゞ一)うわきものじやと人にはいわれこがるゝおまゑはうはきもの」(二オ)
(とゝ一)くるかくるかとまつかいもなくとふとふ今宵も明がらす
(とゝ一)おまへがある故神々さんもさぞやわたしがうるさかろ
(とゝ一)そいはそふたがこういつ迄か二人ねていちやくらせない」(二ウ)
(とゝ一)はるをまつとて心の竹をいもせ結し〆かざり
(とゝ一)ぐちもでるはづみれんといわれそこでもわたしはきれはせぬ
(二上り)さてもかわいやうぐひの庭のこぼくに宿をかり花をまくらにはなすへてつきほしながめてほけきよよむわいな」(三オ)
表二階に只二人きせるをついてうつむいていつそそはれぬゑんなら思ひきりたひわすれたいとは云ものゝ心では添とげたいのが身のねがひ
(とゝ一)せめてかた時わすれてみたいひるはまぼろしよるはゆめ
(とゝ一)つゝいづゝ井づゝの中のはねつるべ深くなるほどあげにくひ」(三ウ)
(とゝ一)げいしやしやうばいさらりとやめててなべさげてもぬしのそば
(とゝ一)歌は恋路をとりもつものよみすじ引出す縁のつな
(とゝ一)しあん中場につきやさんがとふるおもひきねとのつぢうらか」(四オ)
(どゝ一)弁天様だとくどいておいて今はわたしを山の神
(二上り)他人ぢや他人ぢやなぜ他人今?かゞなくなつたからあれあのおんなとゆびさしてわらはさんすぢやないかいな
(とゞ一)みれんなわたしにぢやけんなお前〔(しん内)さほどにいやなみづからを女房にもとうとなぜいふたいかに法印さんぢやとて〕ほらを吹にもほどがある」(四ウ)
なくなこつちをむけうたがひはらせほれていりやこそむりもない
(二上り)枕の下たへやるてさへきつふやせたといだきしめうれしがるかほみるにつけなんの命もほしかろふ
(とゞ一)芋とかぼちやでうき身をやつしまけておくれよ八百やさん」(五オ)
およびなひとてほれまいものかしづが伏家につきがさす
夜たか売(かう)よりもゝうつてくやれもゝにやけもあるさねある
かへすうらなみちどりはなけどぬしをかへすにやたれがなく」(五ウ)
(どゝ一)むこふとふるはくずやさんぢやないか〔(清元)くずやはたちはいろざかり〕若いに似合ぬかせぐ人
(とゞ一)腹が立ともことわけきけばのろひやうだがそふかいな
(とゞ一)最早くるかとこふじのそとをみればうつくしつきのかほ」(六オ)」(六オ)
(どゝ一)人わこりしよと只一口にこるもこらぬもさきしだい
(とど一)よそのくぜつがまくらになびきひよんなくろふをゆめにまで
(とゞ一)霜よけにたわらかぶせたあのきくでさへ蝶がこがれてくるわいな」(六ウ)
(とゝ一)いつそりんきのつのでもはやしついてやりたい人がある
(とゝ一)いりあいをかねてまつみは軒(のきば)の雲のいとのもつれもきにかゝる
(とゝ一)二世とちかいてむすびしゑんのきれたゆめみてしやくのたね」(七オ)
(とゝ一)二世とちかいてむすびしえんのつらいくろうにほねをおる
(とゝ一)立ひきどころか股引までをつとめにさげれば丸はだか
(とゝ一)まつはつれないことおばしらずよそではなさくそのにくさ」(七ウ)
(とゝ一)おまゑへこゝろは兵たんなまづぬらくらせづともきめさんせ
(とゞ一)やめたさけでものめならのもふ神のばちでもいとやせん
どうぞあひきやうこぼさぬうちにつけばうちばの目はちぶん」(八オ)
(とゞ一)ほれてこがれてかいないことよ合ばぢやけんなことばかり
(どゝ一)死ぬほどほれてもしぬのはいやよしんではなみがさくかひな
(とゞ一)おまへ鈴虫わしやくつはむしなん(ママ)丁子が合ものか」(八ウ)
(とゞ一)これほどまでにぎりしんじつを尽すかいなき人でなし
(とゞ一)放がひなるおまへにかわりわたしやあんじるかごの鳥
(とゞ一)花にうかれしうわきな人にうつかりまことがあかさりよか」(九オ)
(とゞ一)こひのわづらひ親たちやしらぬいやな薬をのめのめと
(とゞ一)どろ水渡世ひといわんすけれどはちすの花さくどろにさく
(とゞ一)冨士山(ふじのやま)よりおもひは高きゑんは海よりふかいはづ」(九ウ)
(広告)
東京横山町三丁目二番地
〔書肆地本錦絵〕問屋 ??? 辻岡文助」(裏見返し)


十七 『新撰別品辻占都々一』
新撰別品辻占都々一
作名入」(表紙)
新聞で発(ぱつ)と世間へ知れたる上は末に貞女と出るまで
逢ぬ身なればあきらめよいがなまじ顔見りやます思ひ」(一オ)
私しや長靴お前はとんび晴て逢れぬ身の因果
あきらめましたよどうあきらめたあきらめられぬとあきらめた」(一ウ)
乾為天
たつとき人にはよし平人はわろし万事つゝしむべしねがひ事叶がたしたび立凶まち人きたらず
のぼりつめたる五階のはしご人のゐけんもうはのそら」(二オ)
天風后
女一人男五人にましはるかたち万事とりしまりなしねがひ事かなひがたしまち人おそくとも来る
てきは大ぜいみかたはひとりわたしや女できがもめる」(二ウ)
風沢中孚
人の口おほくして万事はかどらず物事とりしまりなし○ねがひごとかなふまち人きたれどもおそし
かたいやくそくいし山なれどかげじやわたしに秋の月」(三オ)
風山漸
おいおい吉にむかふかたち也ねがひ事六七分かなふこんれいわたまし吉まち人おそし
はるもやゝけしきとゝのふアノ月と梅ぬしはおぼろできがしれぬ」(三ウ)
天山逐(ママ)
万事すゝんで利なししりぞひてときをまつべしねがひ事月をこへて叶ふまち人おそくきたる
あきもあかれもせぬなかなれど義理といふ字でなきわかれ」(四オ)
天地否
はじめあしくとものちにはすこしよし○ねがひごとさわりありてはかどらず○まち人はとちうにとゝまりておそし
しやうじひとへも人目のせきにものもいはれぬ身のつらさ」(四ウ)
風天小畜
てんくもりてあめふらざるかたちなり○ねがひごとなるやうにてならず○まちびときたらず
まはしびやうぶのおしどりヲながめひとりねるならうちへねる」(五オ)
風火家人
女の事につきかないにくらうもめあひあり○ねがひごと叶へどもさはりあり○こんれいわろし○まち人きたる
もゝとさくらはなかよいやうに見へてもりんきでいろにでる」(五ウ)
風雷益
思ひのほかそんしつあるかたちなりきをつけべしねがひ事さはりありまち人おそくきたる
たてひきのあると思ふはあちらの手くだいまにこちらがまるはだか」(六オ)
風水渙
船に帆をあげて水上をはしるかたちなりねがひ事やうすよけれども不叶○まち人きたらず
こゝろ矢走に気はあせれどもおそい帰帆のかへりごと」(六ウ)
坎為水
すゝむもしりぞくもなやみありとゞまりてときをまつべしねがひ事不叶まち人きたらず
にようぼさらずにわたしもきれずほかにしあんはあるまいか」(七オ)
水沢節
はじめくるしむかたちなれどものちにはよしねがひ事すゑにかなふまち人きたる
としの瀬をこへてうれしいけふあらたまの春の始めのたから船」(七ウ)
兌為沢
よろこびあれどもとり〆りなくをだはらひやうぎなりねがひ事なるやうでならずまちびとたよりあり
わけもないことわけあるやうにいはれりやぎりにもせにならぬ」(八オ)
沢水困
しんぱいくらうおほく物にくるしむかたちなりねがひ事てまどるまち人きたるべし
ぬしの心はいまひき汐でふちも瀬となるあすか川」(八ウ)
沢地華
にきやかにてはなばなしきていなり見るところはよけれども内にくらうあり○ねがひごと不叶○まち人きたる
ほどもきりやうもよしのゝさくらこれはこれはといふばかり」(九オ)
沢山咸
引よりよきことのつげ有万事吉にむかふかたちねがひ事人にしたがひてよしまち人てまどる
ねんがとゞひてこよひのあふせこれでわかれがなけりやよい」(九ウ)
水雷屯
とゞまつてまもるかたち也すゝむによろしからずねがひ事さはりありまち人きたらず
しあんするほどきれてはならぬいまゝでくらうしたかひがない」(十オ)
水火既済
もの事をはりてまたはじまるかたちなり○ねがひごとかなへどもさはりありまち人きたらず
汐の満干をアレ見やさんせときのおしよくもまつりもち」(十ウ)


十八 (辻占どゝ一)
※題簽欠。東京都立中央図書館東京誌料本『辻占どゝ一』(5644−130)と同内容。
上手の做る俳諧は和合夫婦の背中合に寝たるがごとしト古人も教訓てうはべ転じて意の附を尤善とする理にあなれど多くは例の猪に抱れて寝たりと誰やらがかこちしごとく意の附ぬが是凡庸の俳諧なり既に唐詩と都々一も上を離れて意の附を専らとなす縡(こと)ながら詩も語も解せぬ戯作者流べつたり附に重言のみ?に離し物とては本卦変卦の占方にて夫かと似寄事さへあらず斯はそも何の謂ぞとあれば自己も知らぬ故にこそ棚てふものへ揚おくになん
   弄月陳人記」(一オ)
(絵)」(一ウ)
(絵)」(二オ)
天沢履
こころざはりのことあれどもすみやかにしづまるなり
ねがひ事はか/゛\しからず
うせもの出がたし
待人おそくも来るたゞしつれあり
ひよくれんりもひきはなされて〔盧家少婦鬱金堂海燕双棲玳瑁梁〕いまにかへらぬながのたび」(二ウ)
火水未済
身のうへさだまらずくろうおほし
ねがひ事ひまどる
うせものせんぎしてよし
まちびときたらず
秋のよながもあふにはたゞで〔白狼河北音書断丹鳳城南秋夜長〕まつにこぬよのそのながさ」(三オ)
山水蒙
花を生じていまだひらかざるの意
ねがひごととゝのふといへどもおそしすゑに花のひらく心後によし
うせもの出がたし
まち人きたる
こゝろしらずなとなりのはうた〔誰為含愁独不見更教明月照流黄〕むねにさしこむまどのつき」(三ウ)
乾為天
貴人にはよろし平人にはあしゝ
ねがひ事おそくもとゝのふ
うせもの手ぢかにありて出がたし
まち人おそし
およびぬねがひもやう/\かなひ〔龍池躍龍竜已飛龍徳先天天不違〕いまぢやうへ見ぬたまのこし」(四オ)
天火同人
おもふことすみやかにとゝのふ
ねがひのぞみ叶ふべしすゝんでよし
うせものいでる
まち人すみやかに来る
ちよの松もとそのぜんせいは〔粧楼翠幌教春住舞閣金舗借日懸〕むかしいまやうためしなや」(四ウ)
沢地萃
ものごととかくいやしきかたち也
ねがひ事たゞしからざればかなひがたし
うせものいそぐべしおそければいでがたし
まち人きたる
きみの誘引けふはからずも〔敬従乗輿来此地称觴献寿楽釣天〕じゆめうのばしのこのしゆゑん」(五オ)
地沢臨
はじめくらうあれどものちあんしんあり
びやうにんはぜんくわいしがたし
こんれいによし
まち人きたる
いまにひらけてやはたのやぶも〔誰謂此中難可到自憐深院得徊翔〕うぐひすなかせるとちとなる」(五ウ)
火天大有
平人にはくらゐまけのする意也よつてきん/゛\のそんしつあるべし
ねがひ事叶ひがたし
うせもの出る
こんれいとゝのへどもおそし
すだれかゝげて見るすだづゝみ〔雲峰四起迎宸幄水樹千重入御筵〕かほへちりくる花ふゞき」(六オ)
雷地予
らいの天にのぼるの意人もりつしんしゆつせをなすべし
ぢゆうしよにくらうあるべし
うせものでがたし
まち人こちらにさはりあり
はうたどゝいつさてさんさがり〔宴楽已深魚藻●(「口」+「永」)●恩更欲奏甘泉〕さツサ盃はじゆんまはり」(六ウ)
沢雷随
馬にのりて鹿を追ひ少女長男にしたがふ意
ねがひ事人にしたがつてよし
まち人きたる
うせ物女にきくべし
びやうにんにはあしし
うまをとばせてさきぶれさすりや〔駸々羽騎歴城池帝女楼台向晩披〕ふたつへんじであけるかど」(七オ)
火雷噬●
くちのうちにものあるのかたちふうふねやをいかるの意はじめわるく後に吉
ねがひ事叶へどもおそし
まち人きたる
うせもの出べし
ぬしはたなばたこのぎよくちようも〔当軒半落天河水遶径全低月樹枝〕まれにしるしのほしのかず」(七ウ)
風地観
花を見て?りあふの意おもひたらざることできてくらうありされど人にあいさるゝのかたちあり
まち人とちうにてとゞこほりあり
ねがひ事人のたすけをえてとゝのふ
うけたちよくへもちりくるさくら〔細草偏承回輦処飛花故落舞觴前〕をりもよしはら花のころ」(八オ)
山火賁
とらのはやしをいでゝあそぶの意立身しゆつせあるべし
ねがひ事やまごとはそんしつあり
うせもの手ぢかにあり出べし
たにのうぐひすなくかとおもや〔宸遊対此歓無極鳥弄歌声雑管弦〕あだなげいしやのうたふこゑ」(八ウ)
山地剥
ふるきをさりてあたらしきをとる意なり
かれ木にはなをはつするのかたちなれば物をとりたてるによし
うせものでがたし
こんれいあしし
にどのつとめもおまへのためよ〔共知人事何嘗定且喜年華去復来〕もとのにようぼにやいつのこと」(九オ)
火山旅
とりを見て矢をうしなふのかたちはじめよしのちあししぢうしよのくらうあり心たゞしければ又吉にかへることあり
まち人きたる
うせものきふにたづねべし
つらいくがいをおもしろさうに〔老去悲秋強自寛興来今日尽君歓〕つとめるそなたがいぢらしい」(九ウ)
雷風恒
ならびゆきてあひそむくのかたちとかくさんざいおほし
ばんじいちぶんのりやうけんをもつてなすはわるし
ねがひ事かなはず
まち人きたる
たまのあふせにひきとめられて〔今日還?犯?斗乗?共泛海?帰〕さんやがへりをいそぐふね」(十オ)
地火明夷
日の地中にいりてふんみやうならざるの意なりゆゑに人のしらざるくらうたへずのちはこゝろざしあらはれてふうきをえべし
ねがひ事かなはず
まちひときたらず
うせものでがたし
はなしはすれどもいもやませやま〔機中織錦秦川女碧沙如煙隔窓語〕おかほ見ながらまゝならぬ」(十ウ)
山風蠱
山中に風をふくみふきいだして物をやぶるの意諸事につけてなんぎ也
ねがひ事叶ひがたし
まち人さはりありてきたらず
万事大凶
りんきらしいといはずにゐたが〔中原還逐鹿投筆事戎軒〕いはにやうはきがなほつのる」(十一オ)
地雷復
地をほりてたからを得るのかたちひとたびあしきことありとも心正しければ吉にむかふ
住所かはるべし
びやうにん治す
まち人きたる
見すてられてもこゝろのみさほ〔縦横計不就慵慨志猶存〕にどのをとこをもちはせぬ」(十一ウ)
沢水困
かれ木にからすなくのかたちわがこゝろざしさきへつうぜずくらうおほきなり
ねがひ事あしけれども目うへのたすけを得る事あり
まち人きたらず
おまへゆゑぢやとおもふてゐれば〔豈不憚難険深懐国士恩〕つらいつとめもくにやならぬ(十二オ)
沢風大過
花街にうまをはしらすの意わがおもふことをおこなひてのちにくゆるのかたちあり
ものごとはじめすこしよけれどものちわるし
つゝしむべきなり
手なべさげるはかねてのかくご〔孤鴻海上来池?不敢顧〕なんの望まうたまのこし」(十二ウ)
天山遯
貴人やまにかくるゝのかたち
ねがひのぞみじやまありてらちあかず
人のそねみあり
びやうにんしさいなし
まち人きたらず
もめるうきよにつく/゛\あきて〔美服患人指高明逼神悪〕隅田のいほりにしぶがみこ(十三オ)
山天大畜
あさせにふねをやるのかたちとかくくらうおほし
こんれいわるし
うせものおそく出る
まち人きたらず
けさのさむさにふねでのかへり〔秋風吹不尽総是玉関情〕あんじらるゝよしゆびの松」(十三ウ)
天雷无妄
いしの中にたまをつゝむのかたち
ねがひごといつさいつうじがたし
しいておこなへばそんしつ多し
うせもの出がたし
まち人きたらず
おやをふりすてこきやうをはなれ〔渓回松風長蒼鼠●古瓦〕うばのざいしよへわびずまゐ」(十四オ)
坎為水
ふたり水におぼるゝのかたちなりしごくなんぎこんきうの意
ねがひ事叶ひがたし
うせものでがたし
まち人きたるつれあり
松の太夫といはれたはてが〔梁王昔全盛賓客復多才〕つゞれさすやらちんしごと」(十四ウ)
艮為山
関をとざすのかたちすくむにそんありしりぞくにとくありすゑかならずよし
まち人はおそくもきたる
こんれい半吉
あまつをとめと見まがふばかり〔玉輦縦横過主第金鞍絡●向侯家〕かよひくるわのはちもんじ」(十五オ)
離為天
あきの木の葉風におちちるかたち也ものにはなるゝの意あり
女なんさんざいあるべし
うせものはやければ出るなり
きれたをとことつまづくいしは〔既傷千里目還驚九折魂〕にくいながらもふりかへる」(十五ウ)
地風升
はしのうへを人のゆきかふかたち也いつたんにぎやかなれど又さびしき事あるなり
ねがひ事叶ふ
うせもの出べし
こんれいとゝのふ
とうろうにはかのぜんせい見れば〔啼花戯蝶千門側碧樹銀台万種色〕あきのあはれはどこにある」(十六オ)
山雷頤
壮士剣をとるのかたちものごといそぎてはとゝのひがたし
こんれいとゝなふ
うせものよく/\たづねべし
まち人きたらず
一日なりともふうふとなれば〔得成比日何辞死願作鴛鴦不羨仙〕それなりしぬともいとやせぬ」(十六ウ)
天風后
いち陰にして五陽にあふといふ不貞なる女のかたち
あらそひ事たへず
女につきてくらうあり
松のくらゐのけんしきすてゝ〔娼家日暮紫羅●清歌一転口氤●〕しぬのいきるのちわげんくわ」(十七オ)
火地晋
玉のきだはしにのぼるの意とすあさひのぼるかたちありてしだい/\にりつしんあるべし何事も吉
びやうにんはぜんくわいおぼつかなし
うせものいづれどもおそし
しんぞかぶろが手をとり/゛\に〔此日遨遊美女此時歌舞入娼家〕もしへぬしへともてはやす」(十七ウ)
風火家人
かないわがうしてむつましき卦也
なに事も婦人をもつてすれば吉
こんれいよろし
うせもの出べし
まち人きつと来る
ねがひ事かなふ
人がゆびざしわらをとまゝよ〔花際徘徊双●蝶池辺顧歩両鴛鴦〕どこへゆくにもふたりづれ」(十八オ)
兌為沢
新月池にえいずるのかたち
よろこびあらはるゝのかたちなれどもとりしまりなし
女なんあり
まち人きたる
うせものでがたし
てうどをりよくいまきあはせて〔古来容光人所羨況復今日遥相見〕はなのだうちうをまのあたり」(十八ウ)
震為雷
ふたつのりよう玉をあらそふ意
りやうの手に花をもつこゝろなり
平人にはよろしからず
まち人きたらず
たよりあるべし
あめのふる日とひのくれがたは〔浮雲遊子意落日故人情〕おもひますぞへぬしのこと」(十九オ)
水山蹇
龍の玉をうしなひしかたち
手にもちし物をとらるゝごとき事あり
ねがひ事不叶
うせもの出がたし
まち人きたらず
なま木さくやうにこんどのしまつ〔揮手自茲去蕭々斑馬鳴〕これがなかずにゐられうぞ」(十九ウ)
巽為風
ばん事つうだつのかたちあり
おもふこととぐのこゝろなれどもさはりあり
ねがひ事十ふんのながはを得べし
うせもの出る
ひとつながめてなにたのしみぞ〔誰念北楼上臨風憶謝公〕ともにみてこそつきも月」(二十オ)
水沢節
あなをほつてみづからおつるの意なに事もとゞこふりてらちあかず
たび立あしし
うせものでがたし
まち人きたらず
鳥もねぐらへはやかへるのに〔晩景寒鴉集秋風旅雁帰〕なぜにかへらぬうちの人」(二十ウ)


十九 (漢語都々逸)
※表紙・裏表紙欠。一丁〜四丁欠。五丁〜十七丁のみ。
判然水性の確証あれば謝罪の周旋するは無益(むだ)
(はやし)わちきももちまい(数文字不明)おまへばかりが(以下不明)」(五オ)
夜更の忍来合図を待ば再三(またも)水鶏に化●(だま)される
(はやし)よもふけやせまひよそほかへぐちなこゝろできをまはす」(五ウ)
霜に悠然(いぜん)として居る松に慚愧赧顔する紅葉
(はやし)なまけちやあたまがあがらないかいちうどけいでせいだしな」(六オ)
君の僕のといふ身をもつて濁●(とびろく)騒雑(さはぎ)は何事ぞ
(はやし)ぶたのおさしにぎうのねたちよこじやちいせへちやわん酒
」(六ウ)
絆衣(はんてん)股引従着結(きたいさみより)卒着(ちよつき)ヅボン之好男(いろおとこ)
(はやし)おくに??どもいきなものときよときよでしかたがね」(七オ)
廊下無端(ばたばた)障子ヲ明●(がらり)卒哉(おや)ト莞爾(につこり)笑顔
(はやし)まめどんなかどんおあつらへおかんができたらもつてきな」(七ウ)
朱鞘之刀仁真黒衣裳(でたち)胸之広狭(ひろせま)未分明(わからなひ)
(はやし)ちいちがしもんのおあたじけどいづでいちばんぶちこはし」(八オ)
心石炭焚付られて顔も蒸気も●(たく)思ひ
(はやし)おかまをわつたのおさはぎみづさしやかつたかにくらしい」(八ウ)
恋之横文字不図書初而(かきそめて)情夫(ぬしが)師範之色之学
(はやし)ぺぷぽぱぽぺツぱつぽほどよくもちやげてさしすせそ」(九オ)
水性(うはき)な蔽習さらりと捨て慚愧悔悔(くわいご)をして稼ぐ
(はやし)たばこものまず酒のまずよくばりだしちやアかぎりかね」(九ウ)
西戎東戎と誹謗(そしろ)と何の私婦(わたし)が大切(だいじ)の好男子(いろをとこ)
(はやし)たでくふむしもすききらひはれてらしやめんになりたかろ」(十オ)
愚私(ぐし)に何等の落度があろと発(はい)す貴方(おまゑ)は浮薄者(はくじやうもの)
(はやし)まくらがくちききやどふぢやいなあきれがあんまりあんまりな」(十ウ)
訛言と不思(しらず)に空浮(うかうか)信じ当今(いま)は悔悟(くやしひ)此所為(このしだら)
(はやし)あきがきたかぜちるもみぢいろもうわきもほどがある」(十一オ)
西洋姿も見馴て襟へ巻た衣切(きれ)迄(さへ)程が宜(よい)
(はやし)いじんことばのかたなまりわからないのもいきなもの」(十一ウ)
吉原島原此両廓が色之大隊調練場
(はやし)けんつきでつぱうおつたてづゝぐるとかゝへづゝふたつだま」(十二オ)
穴エ為望(のぞませ)竿押建(おつたて)テ入ル祭之幟●(のぼりぐひ)
(はやし)きやりの声やてれんけてんてんてんあせみづながしてだしをひく
」(十二ウ)
しやつぽ革沓蝙蝠傘の骨に●(からん)だ異国風
(はやし)いろのりやうぢの水ぐもりどふでも一生なをりやせぬ」(十三オ)
喇叭に合せる足並よりも恋の手管に蹴蹉(けつまづく)
(はやし)ころんでぢごくにおつこちでたてばつばきのひざがしら」(十三ウ)
花之笑顔仁皎(さす)月之眉雪之肌(はだへ)遠(を)三重蒲団(みつぶとん)」(十四オ)
(数文字不明)尻而喇叭之笛遠嘯(ふえをふく)
(はやし)たいしよくたいちやうくいちらしぷツぷくぷうしやらしよくもたれ」(十四ウ)
心励(はげ)しき此世態(せいたい)に無心で平気な●(ぶた)や牛(ぎう)
(はやし)かいちどけいのおつかけくくらにこみもそつぷも(以下不明)」(十五オ)
??しの心は鉄張船よどんな中でも押てゆく
(はやし)にへたつこゝろのぜうきせんやけじやくるまもきもまはる」(十五ウ)
脱籍無産の身をもちながら因循姑息の此???
(はやし)やぼでいやみで大き(以下不明)」(十六オ)
戦ひ倦(つかれ)て晨旦(あした)になれば夜着や蒲団は古戦場
(はやし)さんをみだした(以下不明)」(十六ウ)
惜名残仁視帰柳跡江罷?後髪
(はやし)ぼんやり八丁いぬのくそすべつてびつくりしやうてん丁」(十七オ)
??植ても会計たてゝ(以下不明)」(十七ウ)


二十 『漢語都々逸』
※一・二丁欠。見返しに「明治五年壬申十一月吉旦」の落書きあり。
漢語都々逸
貞信画
?綿喜梓」(表紙)
狂句
外題 貞信筆
浪花金随堂板」(見返し)
転寝の顔に見とれて唯恍惚(くはうこつ/うつかり)とどふすりやこんなに好男子(かうだんし/いゝおとこ)」(三オ)
わたしも辛抱おまへもどふぞ家業勉強(べんきやう/せいだすこと)しておくれ」(三ウ)
酒がすぐると粗暴(そぼう/そまつにあらく)の言路(ごんろ/ことば)さめりやいつでも悔悟(くはいご/くやみさとる)する」(四オ)
嫌なお人に渇望(かつぼう/のぞみかけらるゝ)されて好たお人はなぜ浮薄(ふはく/なさけがなひ)」(四ウ)
別れ程経てふと逢ながらほんに談意(だんゐ/はなし)が相投(あいとう/よくあふ)ず」(五オ)
あいつ故には怠惰(たいだ/おこたり)がすぎて百事(ひやくじ/いろいろ)多難(たなん/なんぎおほく)に困迫(こんぱく/こまりせまる)す」(五ウ)
しのび来よとの羽檄(うげき/いそぎぶみ)を見たら僕(ぼく/わたし)が意(こゝろ)は有頂天(うてうてん/うわのそら)」(六オ)
おまへのこゝろを諒察(りやうさつ/よくさつする)するに戮力(りくりよく/ともにちからをあはす)ありやせまひ」(六ウ)
文はやれども返辞は来なひなぜに因循姑息(いんじゆんこそく/ぐづぐづおそくなる)する」(七オ)
おもふ男を隔絶されて常に追暮(ついぼ/おひしたふ)が積(しやく)のたね」(七ウ)
真実方今(はうこん/このごろ)そなたの事は傀儡(くゞつ/ゆうじよ)夜発(やほつ/じよろう)とおもやせぬ」(八オ)
逢た見たさがわたしの病ひ草根(さうこん/くさのね)木皮(もくひ/きのかわ)なをりやせぬ」(八ウ)
傍輩闘諍(とうじやう/いさかい)親かたさんがきひて鎮撫(ちんぶ/とりしづめ)のやさゐけん」(九オ)
いくらおまへが陳述(ちんじゆつ/いひわけ)しても疾(とく/はやく)に探索(たんさく/さぐりもとむる)遂てある」(九ウ)
流石顔見りや解体(かいたい/こゝろのはりがゆるむ)なしておもふうらみは口へ出ぬ」(十オ)
初手はおまへに説得(せつとく/ときえる)されて今ぢや苦労も吾儕(わし)ばかり」(十ウ)
いつも女郎衆が屯集(とんしう/たむろしてあつまる)ぬしを賞誉(しようよ/ほめそやす)の出ぬはなひ」(十一オ)
ひとつは意気張きれても見たが何卒(どふぞ)回復(くわいふく/もとへもどす)してほしひ」(十一ウ)
最早浮名は江湖(ごうこ/よのなか)へしれる添れざ情死(じやうし/しんじう)と覚悟した」(十二オ)
おまへの●家(こんか/やどのつま)と確証(くわくしよう/たしかなせうこ)とつてあとでぬきさしさせはせぬ」(十二ウ)
広ひ宇内(うだい/せかいぢう)欧羅巴(ようろつぱ/おろしやはじめいこく)にもおまへに見かへる人はなひ」(十三オ)
おまへは狡●(かうかつ/わるがしこい)わたしは迂遠(うえん/まはりどほひ)なんでつぢつま合ものか」(十三ウ)
常に御部家で苛刻(かこく/むごきこと)の責もあの人故ぢやと辛抱す?」(十四オ)
王制復古(わうせいふくこ/むかしにかへす)のうき世ぢやものを吾儕(わたし)ももと木へ帰り咲」(十四ウ)
蝦夷のはてさへ開拓(かいたく/とちをひらく)するになぜにおまへはひらけない」(十五オ)
腹も立ふがかんにんさんせ概略(がいりやく/おほだゝい)わたしが跋扈(ばつこ/わがまゝ)から」(十五ウ)
松の太夫と威権(ゐけん/はかきゝ)はあれどもとは?邑(かゆう/とほきいなか)の田草取」(十六オ)
ほれちや見たれど●直(がうちよく/てづよくまつすぐ)すぎて解て話説(わせつ/はなし)もなひお人」(十六ウ)
寺子傍輩朋友故人(ほういうこじん/ふるきともだち)縁でこそあれ二世三世」(十七オ)
夜着の敷ぞめ紋日の仕舞かゝる洪費(こうひ/ものいり)ぢやつゞかなひ」(十七ウ)
人のしやくりに乗地となりて慷慨(かうがい/いきどふりなげく)するのも程がある」(十八オ)
浮気なおまへにうかうか惚て日々に歎痛(たんつう/いたくなげく)たへはせぬ」(十八ウ)
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〔書物画草紙〕問屋
大坂北ほり江市場 綿屋徳太郎版
心才ばし塩町角 綿屋喜兵衛版」(裏見返し)


二十一 『英語都々逸』
英語都々逸
金随堂梓
貞信画」(表紙)
英語都々一
長谷川貞信画
金随堂綿屋梓」(見返し)
○漢語百々逸ノ部
よしや交誼(かうぎ/まじはりのぎり)は立ずとまゝよぬしの偉烈(いれつ/すぐれてつよき)を他よりとも」(一オ)
それと事状(じじやう/ことのしだい)はまだ聞ねども顕然(げんぜん/あきらかなことば)お前の素振では」(一ウ)
あれほど必然(ひつぜん/きつとしたこと)した其ことをまたも変革(へんかく/あらためてかはること)しやさんす」(二オ)
人眼潜行(せんかう/しのんでゆく)して逢なかをにくや失策(しつさく/やりそこない)さゝれては」(二ウ)
せめて一旦(いつたん/ひとあさ)気をいれかへて常の隔心(かくしん/へだてごゝろ)やめさんせ」(三オ)
熟慮(ぢゆくりよ/よくよくかんがへること)なほさら主のことばに感銘(かんめい/ふかくよろこびわすれぬこと)するばかり」(三ウ)
すへのやくそく堅確(けんくわく/かたくしつかりしたこと)とつてぬしの仁慮(じんりよ/じひなおぼしめし)まつばかり」(四オ)
わたしがいふこと主や尾撃(びげき/しりへをうつこと)していつか応戦(おうせん/こちらからもたゝかふ)やみはせぬ」(四ウ)
よしやおまへの国情(こくじやう/くにぢうのこゝろ)にせよ無理な応酬(おうしう/へんとう)できはせぬ」(五オ)
いやよおまへの労詞(ろうし/ねぎらひことば)をやめて実な就約(じうやく/やくそくきまる)しやさんせ」(五ウ)
愚論(ぐろん/おろかなろん)俗論(ぞくろん/いやしきろん)モフやめにして真実応接(おゝせつ/おゝたい)きめてほし」(六オ)
おなごの微力(びりよく/すこしのちから)と主や気づよくもふりきりいなんす遺憾(ゐかん/ざんねん)さは」(六ウ)
アレまたさんせと憤発(ふんぱつ/げんきをいだす)してもにくや疑心(ぎしん/うたがひごゝろ)にいぬる気は」(七オ)
それとこゝろで垂察(すいさつ/すいりやう)すればまたも造言(ざうげん/つくりことば)仕やさんす」(七ウ)
<八・九丁欠>
きめた約誓(やくせい/ちかひ)ちがはぬやうにしかと答論(とうろん/ろんをこたへる)仕やさんせ」(十オ)
○英語百々逸ノ部
口舌しながら寝ヱール(ゑいる/る気)が出たてテール(ている/なみだ)の中から出る笑がほ」(十ウ)
ナイルデ(ないるで/夜る昼る)心に逢つめながらカシル(かしる/当座)かつたよ逢夜さは」(十一オ)
びつくりしたナイ(ない/夜に)気がどきつくよ思はずラープ(らあぷ/うれし)といふてから」(十一ウ)
<十二丁欠>
このモルニング(モルニング/あさがらす)のからすを夜るとスリトプ(すりとぶ/寝すご)さしたようれしさに」(十三オ)
フヱース(ふゑいす/かほも)見られずモフこ(一字欠)ころはラープ(らあぷ/うれし)い夢にも遠座かり」(十三ウ)
<十四丁欠>
ニー(にひ/ひざ)にウオンナイ(うをんなひ/ひと夜さ)と置なみださへいく夜さ私しのスリフ(すりふ/そでに)とめ」(十五オ)
ラープ(らあぷ/うれし)とおもふて苦をすればこそアイ(あい/目に)立リンリ(びつくりしたナイ(んり/ほぞ)に気もつかず」(十五ウ)
レーン(れいん/あめ)も粋してふりつゞくことわたしのためためテール(ている/なみだ)ほど」(十六オ)
末のブヒミス(ぶひみす/やくそく)さへちがはねばヱンナイト(ゑんないと/ひとよさ)ぐらいとおもふても」(十六ウ)
宵にやラープ(らあぷ/うれし)い初会の人もモルニング(もるにんぐ/けさ)は恥かしつみなぬし」(十七オ)
余所ではトウヘル(とうへる/他人)といはれるにくさ気やすめ計がワイフ(わいふ/女房)かて」(十七ウ)
スピツトル(すぴつとる/よだれ)流して蕩気(のろけ)たときの今さらはづかしヱール(ゑいる/気が)つきて」(十八オ)
切たリツトル(りつとる/小ゆび)もまつ夜のかづにいれてもヱンナイト(ゑんないと/一ト夜)が逢へぬとは」(十八ウ)
(広告)
〔書物画草紙〕問屋
大坂北ほり江市場 綿屋徳太郎版
同心才橋塩町角 綿屋喜兵衛版」(裏見返し)


二十二 『新文句婦喜寄東都一』
※筑波大学蔵本・菊池蔵別本と同じ。
新文句婦喜寄東都一
豊原周春画」(表紙)
ふき寄都々逸」(見返し)
吹澄んで空にちゐさし冬の月凩暴れる。真夜中も。厭わず怒鳴を。寒?と。唱へて。昔しは。流行れり。方今は。殊さら街道(おゝらい)の。放歌は棒えの。恐あり。夫ゆー内々小声にて。新文句。吹よせ都々一と。外題を号(つけ)。何くれとなく。掃寄て。飽きぬが山の。言の葉を。かき集めたる。落葉籠。屑と異名を。呼たまわず。拾らひて。御目に。触るやう。千草の風の。伏て希
魁鴬山人」(一オ)
目元に紅葉の愛敬見せて〔(上るり忠臣蔵二)小浪ははつと手をつかへじつと見かわす顔とかほ〕鹿と返事が出来かねる」(一ウ)
便りばかりで互ひにいれど〔(はうた)あだなゑがほについほれこんで妻こふきじのほろゝにもちひろのふみを厂がねにことづて頼む乙鳥のたより〕縁は切れない伝信機」(二オ)
情夫(まぶ)と寝たとて恨むは無理よ〔(はうた)びんのほつれはまくらのとがよ勤する身はぜひもなし苦界じや/\放さんせ〕嫌な客も鳴からす」(二ウ)
広き世界をことはるさめに〔(常わづ夜のつる)実に世の中はあだ波のよるべは何国雲水の身の果いかで知らざりし〕せまくして行く模合傘(三オ)
恋の重荷でこらした肩は〔(長うた舌出し三番)玉をのべたるなかもちにかずもてうどのいさぎよや〕ぬしに揉まれりや直治る」(三ウ)
積るも解るも其日の手管〔(はうた)うそならほんにかほとりみてと羽がいの肌にいだきしめ〕浮気な水から出来た雪」(四オ)
主しへ年賀のふみ書初に〔(冨本あさま)墨と硯りのこい中をたが水さして濡衣の〕色よい返事をまつかざり」(四ウ)
恋のもつれを言解きかねて〔(ときわづ三ツの朝)笑顔つくろふけわい坂いろ香争ふ梅が香のかしくのかなの蕾より開らける文の待人も〕いとゝ心かやるせなや」(五オ)
角を生やして出先を咎め〔(長うた馬おい)まつはういものつらにくやよそのあねさアとねくさつて〕隠す時計も龍頭巻」(五ウ)
思ふまいぞへもうおもわぬと〔(はうた)さきやさほどにもおもやせぬのにこちやのぼりつめ〕思へばおもわずおもひ出す」(六オ)
恋の湊の花燈籠を〔水駅路穿児店月華船棹入女湖春〕見当に乗り込む浮気船」(六ウ)
明はからすにせき立てられて〔(長うた越後じし)いざやかへらんおのがすみ家へ〕宵には水鶏に欺される」(七オ)
是やこの行くもかへるも別れて後は〔(上るりあだち)唯さへ曇る雪空に心のやみも暮れちかく〕兎角気になる靴の音」(七ウ)
髯の来る夜は時計をすゝめ〔梅花帯雪飛琴上柳色和烟入酒中〕情夫の来る夜は後れさせ」(八オ)
浮気で握つた手とての縺れ〔(長うた初子の日)しらぬふりしてしら雪のしら/゛\しいかほわゐな〕解けりや絡る二世三世」(八ウ)
いやな座敷の勤めがふけて〔一声山鳥曙雲外万点水蛍秋草中〕撥で欠びのふたをする」(九オ)
君の安否は片かなだより〔(常わづたゞのぶ)ひとこそしらね西国へ御下向の御海上波かぜあらく御船を住よしの浦へ吹上げられそれよりよしのへ落たまふ〕百里とゞくも一時間」(九ウ)
親のためなら娘を二字に〔(長うた傾城)あわぬつらさをこがるゝふりも逢ふてわかるゝことこそつらや〕裂た勤めも是非がない」(十オ)
月に一とこゑふと目をさまし〔(はうた)今やくるかとまつ身は知らで〕聞けば鍋やきうどん売」(十ウ)
思ひ出しては思案にふさぐ〔(ときわづ梅川)すへは夫婦と言かわし今のおまへのうきなんぎかんにんしてと計りにて跡はなみだのむら時雨〕折しも聞ゆる暮の鐘」(十一オ)
写真ながめてほろりと泪〔(上るり朝がほ)いつかはめぐりあふ坂の関路を跡に近江路やみのおわりさへ定めなく〕ぬしは航海浪の上」(十一ウ)
おんなでこそあれいざ其時きは〔砕身折骨妾何厭明暮懐君忘苦辛〕車ひいても主へ義務」(十二オ)
かわい男になぞではないが〔(はうた)忍ぶ身の月といは不破の板びさしもれてうき名のたま/\に〕解かせて見せたい胸のうち」(十二ウ)
またの逢ふ瀬が大事サなどゝ〔(ときわづいな川)気てんきかしてかごのたれ内は歎きに暮近く〕言てかへして舌を出す」(十三オ)
年がかわれば気もまたかわる〔(きよもと梅のはる)太々かぐら門礼者〕春の色ます梅さくら」(十三ウ)
郵便報知に気は休まれど〔(上るり忠臣蔵七)繰りおろすふみ月かげにすかし見て〕逢わねば解からぬことがある」(十四オ)
痴話がこうじてついそのまゝに〔(長うた浅づま)すまぬ口舌のいゝがゝりせなか合せの床の山こちら向せて引よせて〕無言とむごんのこん競」(十四ウ)
(広告)
東京 日本橋通三丁目十三番地
丸屋 小林鉄次郎板」(裏見返し)


二十三 『文の枝折』
※題簽欠。序題による。文範集であるが、所々に都々逸を配す。ここでは都々逸のみを翻刻する。
今よひみめぐりうれしのもりよどうぞあしたもしゆびの松
ふみのやりとりはれてはできぬうはきするのもむねのうち
いちかばちかをいふのはよいがそれじや御まへをこまらせる
今日びはこよふとおいひだけれどきゝにゆくのもよしわるし
たよりよきいたりきかせて見たりこれがくがいのたのしみよ
どふしたらすへをとげよと気できがいつかしめりしまくらがみ
人がなんくせつけないうちよあへばあふたびふかくなる
たよりぐらいはできそなものとかこちなみだにぐちばかり
水は二すぢみすぢをのせてすだとあやせのゆさんぶね
うはきしやうばいしてゐるけれどぬしほどうはきはしはしない
卯月なかばに箱根ゆばてさほをいためてこまります


二十四 『しん撰さわり入都々逸 弐号』
※表紙には「弐号」とあるが、柱は「どゝいつ三」であり、関西大学図書館蔵本『開化新撰都々逸 三号』と同じものである。同様のものに、東洋大学図書館蔵本・蓬左文庫蔵本がある。
しん撰さわり入
都々逸
弐号」(表紙)
たれをきかせてのろけて見ても五分でもすかない人じやもの
見初た其時はおまへのなかがたしか帽子(しやつぽ)にまるばおり
深切めかして私をだまし田舎かせぎのやとひにん」(一オ)
ぬしと二人で合乗りぐるまこれ見よがしがして見たい
借はあれどもへいきな顔よあはびをくはせてふむつもり
主をつれ出しあの待合へ泊つた事もおもひ出す」(一ウ)
三なき車でくるしみしやんせやがてしくじりや車ひき
たまにあふのに人めが多い内せうばなしがいひかねる
まはりかねたるおまへのしんしやう口車でもいひなはい」(二オ)
うつゝ心ではしらにもたれ主のみなりを夢にみる
にくいかわいと言たもきのふ今日はあすかの渕となる
本妻あるとは初手からしればかうしたわけにはならぬもの」(二ウ)
赤いべゞきてくさりをこしに主とともならいとやせぬ
身には錦をまとつてゐれど心はきたない主のむね
いろのあるのを私はしらなんだ今さらいふたら愚痴になる」(三オ)
せつかくしんせつつくしちやゐれどなぜかこんなにきらはれる
屏風ひとへのわりどこなれば靴のおとさへきこへはせぬ
百日ぐらゐはかくごのうへよどうせ亭主の目をぬくからは」(三ウ)
気やすめいはれて鼻毛をのばし間夫のあるのもしらないで
おまへのお尻はラムネの瓶よいつでもすはつた事はない
あれさおよしよわ誰やら外へヱヽモ憎らし郵便屋」(四オ)
きざな野郎としつてはゐれどなんでこんなにほれたらう
ほれた女房のあるその上に猫や娼妓はなんのその
咄しどころか気も落付ぬ胸へどた/\靴の音」(四ウ)
わたしが女房は牛だと見へて一寸したこと角を出す
けん査するたびおまへのかほがながめられたらなほよかろ
寝たるおまへの顔つく/\とほんにばかげたこの野郎」(五オ)
こうさい証書をたんとためて主と隠居をするこゝろ
温泉のお六さんには大あつ/\よあせをしつぽりかしゆかた
おん泉のねへさんたちの色かにまよひはだかにされてもまづきがつかぬ」(五ウ)
若いうちは二度とないヘレ/\ヘラ/\たんとおし老テルれんテはできないよ
ルウデサツクジヤ人情がうすいといふてはめなきやよけられぬ
ざいせいこんなんみなおまへゆへ今となつてはどうさいかくも」(六オ)
生れ古郷は田舎の土よ今じや廓のどろのみづ
おもひ思ふてふたりが中へできたこの子はうはきもの
おやにも見せない大事なものをけん査おいしやにたんと/\」(六ウ)
実があるなら此三味線をどうかなほしてくださんせ
うしろすがたをもしへとよんで人がちがつておきのどく
うはきといはれて私は一言もないがいけんのそうじまい」(七オ)
といたつき/\あんじて見れど主はかんそうのうちに居る
二人しよんぼりかんがへ見れどどうで末にはわかれもの
ころんだせうこに亭主のかほへ泥をつけたるやまの神」(七ウ)
ぬしは外国わたしは日本たよりないのもむりはない
さぞやあんじてゐるのは女房こまつてまつのはかこひもの
すこし鯰がいやきになつてかはりのできたもしらないで」(八オ)
とてもあへぬとうたゝねしたら思ふお方を夢に見る
ともだちの亭主にほれては済ないけれどしあんのほかならぎりもかく
主が来たとてあはてゝ蚊屋を出ればあの子にだまされた」(八ウ)
人のいけんもなにきくものか思ひ切れぬ恋の情
しらぬお方と牛やでけんくわソツプたゝかれ目がさめた
だいじなだんなをよこどりされてすぐにもかみつく猫の恋」(九オ)
おゝきなおせわと口ではいへどいふてくれるはぬしばかり
おやもせうちでころんだむすめ今さらおきろといひにくい
人もしらないかはつた所をおまへはどうしていつて見た」(九ウ)
(広告)
〔地本錦絵〕(この間不鮮明)辻岡屋文助」(裏見返し)


二十五 『開化新撰度々逸』
※題簽欠。扉題による。本書は、東京都立中央図書館東京誌料本と同じである。
開化新撰度々逸
虎重筆」(見返し)
風船にフツト乗られこちや登りつめ先は浮気な空だのみ
酒にのまれたおまへの無理をさます塩茶の口うつし
思ふまいぞへもう思はぬとおもへば思はず思ひだす」(一オ)
主の心に伝話機かけて浮気のいけんがして見たい
起請せいしを洋紙へかいてだます手くだのやぶれ口
うなぎの性かほぬらくらおまへ私しや焼々身をこがす」(一ウ)
うはの空行身は風舟よ落るところがわからない
内証内証でつひした事をいつしか読うり新聞紙
鳥渡苦舌が遂すれ合てクワツト燃たつ早附木」(二オ)
染たしら歯が証券印紙うわきで反古にはさせはせぬ
開化のくづやは面倒なものよ兵子おびふんどしかぎわける
我身でわが身が自由にならぬしれて喰付夜着の袖」(二ウ)
鏡の権兵へを宵からやとひ明のからすを追したい
真(まこと)写した私しのすがた浮気なあなたにやるわいな
便り待のに又川ずかへアヽもぢれつたい五月あめ」(三オ)
浮気心は少しもないが恋しいお方がある計り
真におまへはラムネの徳利どうすりやおしりがすはるやら
ほれた私しの迷ひか主がじつをやる程うそらしい」(三ウ)
浮た同士といわるゝはづよ涼み舟から出来た中
たよりない身にたよりが出きてもとめて苦労するわいな
ぬしは秋風私しや気を紅葉いろにもへたつむねのうち」(四オ)
そふての苦労はかくごだけれどそわぬさきからこの苦労
胸のほむらと石炭油はちよいとしてさへもえやすい
なれぬ世たいにたがひにやつれ今は辛苦の実くらべ」(四ウ)
ほれたお方は皆筒袖ですがるたもとのないつらさ
お気にさわろがかうゆうたらとあんじこうらす筆のさき
一すじ縄でもいかない奴が三筋の糸ではしめられる」(五オ)
苦労する墨硯の海のふかい浅いは客と間夫
見捨しやんすな行末までもなどゝ写真へとりすがり
世帯かためてヤレうれしやと思やおまへのまた浮気」(五ウ)
主のうわ気をきく度ごとにしやくがふとつて身はやせる
出雲のやしろへでんしんかけて妹背むすびし神だのみ
母のまへでは洋語をつかひ忍ぶやそくする書生」(六オ)
実意(じつ)のあるのがかへつて苦労人にもそんなであろうかと
のぼりつめたをしやくりにせて切てくやしい凧のいと
忍ぶ恋じに胸気なランプあふて噺しもたちがくれ」(六ウ)
娼妓(わちき)をきつねといふ舌の根で主をたぬきのそらいびき
なげた枕につみとがないがなげにや手まくらさせられぬ
たがひにふりそひ心のたけを咄して嬉しい演舌所」(七オ)
松といふ字は好るゝ筈よ君と木とのさしむかひ
新ぞうにやきらわれ年増にやふられ僕ほど果報なものはない
口で悪言(けな)して心でほれて人目忍んで見る写真」(七ウ)
東はしらめど女郎はこないそこでアホウトなくからす
帯はとけどもまたとけかねる主の心と峯の雪
ゆめもみじかい夏の夜明てみれんのこすは蚤のあと」(八オ)
秋の天気とおまへの心変つてかはつて又かはる
人に話せば噂がこわし二人じや文珠の知恵も出ず
晴てはれない税金出してつらい辛抱も今しばし」(八ウ)
うそも誠も皆うちあけてもしや手管とうたぐられ
うたがわしやんすがわしや心まで見せてゐるぞへ葛まんぢう
小鳥の名に似た女郎のたんす明て見さんせ四十雀」(九オ)
束縛されよと斯ふなりや侭よどふせ人目のをきやぶり
おまへによふ似たよい子をうんで家族二人と門の札
赤いしかけに迷ふたゆへにあかい衣類(べゝ)着てつく田じま」(九ウ)
はれて女夫(めうと)となる其内にむねは互に曇りがち
雷の光りでにげ込蚊屋の中でとられたへその下
うそも誠も仕方でしれる隠すおまへの気がしれぬ」(十オ)
鳥渡口舌で背中とせなかさぐる互ひの腹とはら
植木や盆さへながめの花よこれは権妻閨房(ねや)の花
悪く言りよがおまへとならば出ても嬉しい新ぶん紙」(十ウ)
金の時計が目当じやものをえりにつくのはしれたこと
意地にも添はねば世間の手管たちし浮名の新ぶん紙
たがひに人目は忍んでみたがひとの耳には戸がたゝぬ」(十一オ)
開化する程恋には便利遠けりや蒸気や電信機
日増に道路はひらけるけれどなぜかひらけぬ恋のみち
君が不服でそはねば僕は願ひ出でゝもそふ所存」(十一ウ)
はたからおまへの噂を聞ば逢たはじめをおもひ出す
繻子の帯ほど解あふ主に遠ざかるので気にかゝる
主に淡路の夜は無理酒にかよふ廊下の千鳥あし」(十二オ)
〔恋の辻うら〕独うらなひ
このうらかたの仕様はまづ銭を六文握り南無けんげんかうり南無けんげんかうり南無けんげんかうりと三へん唱へその銭を投出すなり文字ある方を白とし浪形の方を黒と見なし都々一の文句の上にある○○○○○○この印と合せ待人うせもの願ひ事の吉凶を定むべし
○まち人 ▲うせもの □ねがひ事」(十二ウ)
●●●●●●乾為天
花よ青葉とたのしむうちにいつしか身にしむ秋のかぜ
○○○○○○坤為地
奥歯でぎりぎりまへばで世事を言ふもおまへがあるゆへに
○●○○○●水雷屯
雁が帰ればつばめが通ふおまへいやでもまた出来る
●○○○●○山水蒙
つらい峠をやうやう越て是から二人が新世帯」(十三オ)
○●○●●●水天需
霜よけに俵かけたるアノ菊の花蝶がこがれて逢に来る
●●●○●○天水訟
降れたあげくにまたてらされる狐の嫁入じやあるまいし
○○○○●○地水師
風も吹ぬにアレ見やさんせのゝ字ころがすかんなくず
○●○○○○水地此
恋の綾瀬を辛苦にするな今になかよくすみだがは」(十三ウ)
●●○●●●風天小畜
枕のぬれたは涙じやないよ風邪の残りのみづツぱな
●●●○●●天沢履
花の笑顔でみさほの松の色もかほらぬ主のそば
○○○●●●地天泰
年が明たらこの風呂しきをおまへ背負せて外へゆく
●●●○○○天地否
あきらめられうかこりしよなわたしいのちかけてもそひとげる」(十四オ)
●●●●○●天火同人
春のはつ日のゆたかにさしてのむは目出たいとそのさけ
●○●●●●火天大有
閨の戸をぬしがうつかとうたゝね覚てきけばきぬたの人じらし
○○○●○○地山謙
庭の雪間のアノ梅さへも寒苦しのひで花がさく
●○●○○○雷地予
行燈のうしろでくらひ文をばよめど今に明るくなる夫婦」(十四ウ)
○●●○○●沢雷随
きせる筒にてまゆ毛をかくし主の女房にやふけたかへ
●○○●●○山風蠱
泣てだませばお客のこけが色のしおくり仁舞札
○○○○●●地沢臨
うしろから着せる羽織のその襟さへもかへすがいやではないかいな
●●○○○○風地観
月にむら雲わたしにおまへ邪魔と知りつゝきれられぬ」(十五オ)
●○●○○●火雷噬●(口+盍)
せけばやむかとお部屋のどじがせけばみれんできれられぬ
●○○●○●山火賁
土地は元より世間はなほも広くさせたいこちの人
●○○○○○山地剥
わたしの恋路とアノ朝顔は露のなさけで咲て居る
○○○○○●地雷復
無理なねがひもやうやうかなひ逢てうれしき花のかほ」(十五ウ)
●●●○○●天雷无妄
うちの亭主と巨燵のあしなくてならぬが有てじやま
●○○●●●山天大畜
思ひきれとてさらしを五尺おもひきらりよかごうざらし
●○○○○●山雷頤
兎角せきるな浮世は車めぐる月日をまたしやんせ
○●●●●○沢風大過
末の別れを思へばほんに深くなるのもよしわるし」(十六オ)
○●○○●○坎為水
酒はさめ腹はへるのにたばこがないよいのちに別条ないばかり
●○●●○●離為火
つとめはなれて身になるものはふしたあとでのひと寐いり
○●●●○○沢山咸
逢たその夜はちかひも堅くたてし屏風に鶴とかめ
○○●●●○雷風恒
名残おしげに見おくる???露かなみだか朝ざくら」(十六ウ)
●●●●○○天山遯
米は?(しんにう)かけたはまよひ麦にしんにう大違ひ
○○●●●●雷天大壮
その酒をもつと重ねて呑せておくれ酔せてたのみの事がある
●○●○○○火地晋
意気な人より極しんせつな野暮なおまへが頼母しい
○○○●○●地火明夷
酒のせいだと詫言すれど惚て居りやこそあのしまつ」(十七オ)
●●○●○●風火家人
腹を立せて座しきを仕舞床へ入れてもほれた意地
●○○○●●火沢●(日+癸)
真桑うりあつくおむきよ根生がしれる跡で皮喰やおなじこと
○●○●○○水山蹇
美くしいとてこゝろはしれぬよけてお置よ鬼あざみ
○○●○●○雷水解
花ほどに愛敬なけれどあれ見やしやんせすがたやさしき葉出やなぎ」(十七ウ)
●○○○●●山沢損
風が戸叩きやうつゝで明て月にはづかしわがすがた
●○○○○●風雷益
うどんな私におまへの辛みながくそばにはおかれまい
○●●●●●沢天夬
誉られる親にひかれて此年までも私しや浮気の味しらず
●●●●●○天風姑
すいもからいも知つてるわたしあまい口端にのるものか」(十八オ)
○●●○○○沢地萃
知らぬ顔してお酌にや出たが胸にや言たいことだらけ
○○○●●○地風升
時節まつのは知つては居るが気がそれやうかと気がもめる
○●●○●○沢水困
思ふやうにはならない太鼓裏にやぶれがあるわいな
○●○●●○水風井
無理な願ひも聖天さまへ色よい返事を待乳やま」(十八ウ)
○●●●○●沢火革
あらためて親のゆるしのこの祝言はむかし咄しも床のうち
●○●●●○火風鼎
堅く見へても暑中の氷甘くされては解やすい
○○●○○●震為雷
じれつたい程なぶられながらはなれともなや主のそば
●○○●○○艮為山
しがみ火鉢とおまへのあたまだん/\光りが出るわいな」(十九オ)
●●○●○○風山漸
仕舞やくそくきめてはきたが逢にや行たし銭はなし
○○●○●●雷沢帰妹
いろは寐がへり女房はでるし泣つら蜂とは此事か
○○●●○●雷火豊
帳場がうしと寐て居る禿用のあるたびまたがれる
●○●●○○火山旅
柳にみせても心のうちはめつたになびかぬ金次第」(十九ウ)
●●○●●○巽為風
思ひざしたア久しいものよ足袋の底じやアあるまいし
○●●○●●兌為沢
ヱヽモじれつたい亦抜たのかしつかりはかせな坊のぞり
●●○○●○風水渙
剛がりなさんなしれたら度胸外に日の照る里もある
○●○○●●水沢節
時節まてとはそりやあんまりなおそけりやこつちも年がよる」(二十オ)
●●○○●●風沢中孚
花は散ても二人がなかへ出来て嬉しいさくらんぼ
○○●●○○雷山小過
染た白はがまたはがさせて元のしらはにたれがした
○●○●○●水火既済
浦山しいぞ茶の湯のふくさぬしのお腰にはさまれる
●○●○●○火水未済
琴でおまへのこゝろを引が合せてお呉よちやうしぶへ」(二十ウ)
おまへいやならつん/\しやんせ〔(喜せん)わたしやおまへのまんどころいつかかほうに一もりとほめられたさの身のねがひ〕と思ふて一人りでじやうたてる
さても可愛や順礼すがた〔くにはいづくぞなはなんとくにはあはのとくしまシテとゝさんのなはわさひトアキかゝさんのなはからしと申ます〕きけば聞ほど目になみだ
浅草馬道町三丁目壱番地角
大橋堂 児玉弥七板」(裏見返し)


二十六 『よしこの華揃 第三篇』
※末尾広告に「東京」とあるので、明治版と思われる。
よしこの華揃 第三篇
一荷堂撰
貞信筆」(表紙)
(絵)」(見返し)
(絵)」(序オ)
つぼみの眼にこのもしく。今や。四方に咲みちたる。花くらべの香り。ふくいくとして。其さまたぐひなき。折から。尚それがうちにも。名にかんばしきを。撰あつめて。今や此冊にものしつ。通人達の座興にさせんとす。しかあれば。てん手に是をながめたまひて。なほかしその実を。むすび給はんことをねがふ
浪花 一荷堂半水誌」(序ウ)
ついどはなさぬ此熊のゐも無だでうれしひけふの首尾
寅の刻からいぬかなしさは一里も千里のこゝちする
惚なをす気は幾たびあれどほれかへる気にならりやうか
はじめのすげなさ嬉しひ程に癪からしんじつあかしあひ
口にほうばり心にあまりいふたことさへかみわけず」(一オ)
この胸の火もしらずにやぼが世話やこふかのなんのかの
いふたうらみも皆夢にして可愛人だよこうなると
そんなにふくれて泣ずといゝよ唐人笛ではあるまいし
逢て気づよくされてもうれしゆめでやさしくされたより
ほれてたんのよ男のよさに実までさぐるは余けのよく」(一ウ)
夕ぐれ頃から待こがれさしアレ鶏がなくいまごろに
その鼻あしらひ下とはいへぬ口のうへからにくひこと
逢たらあひ徳顔みりや見どく翌(あす)は又あすけふは今(け)ふ
心あづかり身は余所で寝てふりかへてほし誰やらと
又翌来ると留(とめ)る気くんでいはんすその翌いつのあす」(二オ)
おまへの気につれわたしのさ迄悪性にさすやうな言はなし
思あんして迄といふ様なことはなけれどわかれにやはなしたし
ぬしの好にはしられるとても他人のすきにはさゝぬ主
実もきゝ捨主や無理ばかりにくひとおもふて聞ねども
きめた首尾の日あしたと成て今宵は嬉しひ一人寝も」(二ウ)
いぢのある様なアノそぶりして明した物をばさぐりつめ
身に添てほし逢ぬ夜までもうれしとおもふたアノ首尾を
今さらうらみもいはれぬわけにされたよ今宵の素なをさに
こゝろ見ぬいてすげなくさんせうらみ言をとて逢はせぬ
約そく極ても顔見るまではあんじつめたよもぐりよかと」(三オ)
宵にやおなごのたしなみで居てわかれにや身の癖いひとなる
またそんな無理気がせける共せめて鐘などうらまして
いつとてやさしひ首尾あるならば今宵計りでうらむ気は
ゆつくり今宵ははなしを付て翌(あす)からゑがほであへるやう
笑がほになつたよ泪のなかをそのひと言の気にまよひ」(三ウ)
恋しさ逢たさしん気さおそさつらさかなした待どしさ
極て待夜は何より蚊よりくすべ出したひ人がある
こへた女がきらひのぬしであらばうれしひ苦の痩も
笑ふて逢夜のなひ主ならば泣て待夜もなひやうに
逢ぬ気やつれとも推量せずうるそござんせう主の気は」(四オ)
おもふ実さへいひ残るがちどふしていわれう空言が
かくし立して悟られうよりけなりがらそか言遂て
心に見せたい聞しもしたいこゝろのうれしさ楽しさを
主の着物も筒?(つゝぽ)にせにやそでがたまらぬ行先で
実も聞たさすねてもみたかむねにこの手は合しつゝ」(四ウ)
気ずみのする様にサアしやさんせ心極たる其あとで
悪性ほろぼす味かたにするよにくゐしやべりのおちよぼかて
実意づくなら苦にするとてもやせはせぬぞへ眼だつほど
逢てゐる間がわたしの人でつらゐはいなせば人のひと
主や●(やさ)しげに癪おしながらちがふよその手とこゝろとは」(五オ)
気づよひ中にももしやとおもふ心なりやこそしたふきに
とりとめもせぬ噂にやつれ真身にこふ逢や気はづかし
くらひ心がありやこそ先の知れぬ提灯かつて来て
主や延したしわしやちゞめたしきめた首尾からしゆび迄を
世事をつくろう此気ぢやけれどぐちにかへるよおまへには」(五ウ)
気ではやせねど人眼に目立そして主にはしれぬとは
人にや頼めるひとではなひしわたしの力にやおよばぬし
すこしや此頃うらみのすきが出来たよ実意は知れねども
他人の気うけに又ひと苦労するよしんじつ聞たのちや
おめもじならではわからぬ用と逢やいひもせずきゝもせず」(六オ)
義理も世間もみなうち捨ていまじや身ひとつ主のもの
命もと手にとりつき世帯うれし苦労もふたりして
心あかす間あかれさる間もなくてわかれのたよりなさ
わしがいふたら主や尾について夢が合たもにくらしひ
いやなあづけに主や引かへて誰とうれしふ今ごろ?」(六ウ)
わかれの笑がほで又身をせめる宵の気づよさひきかへて
モフいなふならいなんせまでになつて未練な寝間ばなれ
こがれぐせだよ泣しておくれこんなうれしさ猶のこと
主におぼへの有こと消そで身にもおぼへのなひことを
くたびれ休めに来たとはにくや寝さぬ此首尾しりつゝも」(七オ)
文はおろかよかいなの字まで反古にさりよかと案じられ
四五日逢ねばモフ寝がつてをかへて来さんすどこやらで
聞のこしたり言のこしたりいなした跡ではいつとても
袖もたもともかわかすむねがなくておまへのひざぬらす
あかれましたといはれる程に好れもして居た中ならば」(七ウ)
生ずころさずなま中実もあつてやまなひうは気ごと
手とり女に足までとらせわすれさんすよかへりみち
はなれ兼たよツイつとめ気もにくひ浮気にきがおけて
義理に顔見せこゝろは誰に見せいそぎやら去にいそぎ
かわるおまへの心につれて枕がつ手もいまにまだ」(八オ)
取越苦労や思案の仕置むだにしたひよ添とげて
逢ば去ぬまでいぢめるくせにやさしくさんすは便りだけ
添してほしひよおもふた人と一生不孝のしおさめに
罪にこそなれ仇にはせぬよすねられ気やすめ聞につけ
極た人からわするゝやうな首尾の日たよりのたよりなさ」(八ウ)
わたしにつく蚤おまへにわけてうれし添寝よ寝もせずに
宵のおそさは待間のつみでそのやさしさがかへすつみ
約そくしてなきや又あきらめて寝る気にもなろ逢ぬとて
三夜さ五夜さこがれた首尾はわづか半ときたらぬうぢ
返事だけなと嬉しくきかば寝るよその夜はあふたきで」(九オ)
又の首尾の日あんじてまつよとはぬさきからいはれては
余所の花にも眼がちろうかとこの寝いりばな見るにつけ
いじめ草臥寝すごすぬしであらばうれしひ無理じやとて
モフ聞ことも言ひおくこともなひにこの座の立にくさ
恨ます主より恋しき身にはうらむつらさよ適つ夜に」(九ウ)
どふあきらめても又あれ丈がもしや実かとこゝろでは
顔見りや戻つて来た主のよにおもふよわかれにや気も付ず
末をおもへば又うちの首尾ぬしにかわつてわたしから
癪か気随か悪性がじつかしあんしてほし主もまた
逢もどりほど適(たま)さかに逢やまづになる様なわかれする」(十オ)
対でこさへたたまくらもそれと見へぬひとつのあたらしさ
首尾も苦労も一人でしたようすゐ馴染と遠慮して
うれし文句の初会の文がこの苦しみのいろはやら
苦界の苦労の仕のこりするよつもり通りにそひながら
うつかりいふたよ珍らし人とこゝろにや見なれていながらも」(十ウ)
わたしにやすげなく余所では主もにくひおなごの気取して
余処でまくらにかさんす手をば癪にかつたも今朝はじめ
顔見ながらもこゝろをとげず一座はなれたさしむかゐ
思ひこんだと言や気はづかしまださきの実きかずして
いつがいつまできまらぬ人をたよりにや●(やさ)しひ主じやけど」(十一オ)
きせた湯かたもまだ汗づかぬうちにおそひのいぬなぞと
はらした眼ぶたを笑顔にかへていなすこゝろの気ぐるしさ
このひと言をはじめにきけばこんな気苦労はせぬものに
ヱヽモ気がねなこの船のなかなんの深みとおもわりよか
主をまつ夜は月さへおぼろかほ見りやはれ間もある物を」(十一ウ)
他人に問れずその当座にはうわ気な人じやとおもひつく
ヲヤめづらしよ今宵はどこの逢もぐれやらたまに来て
手まくらばかりかこゝろにまでもまつ夜しびりがきれそうな
実きゐてからこの一人寝もなすになつたとあきらめて
逢にやこがれてくやしひ便りかほ見りや気がねな添寝して」(十二オ)
くどかれた時ヤ●(やさ)しひ人でいまぢやにくひよ罪なひと
あへもせぬくせたよりとおもふこゝろからこそいふの日も
おまへにかゝつてこの広ひ世もせまひよむねかて世間かて
朝のからすも月夜とおもひ寝さしすぎたよ恋しさに
こがれましたも主からいはれうれしおますも口のうち」(十二ウ)
(広告)
大坂日本橋南詰
問屋本屋安兵衛」(裏見返し)


二十七 『開化新撰都々一』
※本書は、東京大学明治新聞雑誌文庫蔵本と同じだが、本書には第三丁めが欠けている。
児玉弥七著
開化新撰都々一 全」(表紙)
開化新せんどゞいつ
虎重筆」(見返し)
海山越ても便りが出来る切れちやいやだと伝信機(でんしんき)
倒れかゝつた親父の家をむすめころんで引おこす
言ふは悋気と堪忍ぶくろ縫ふてゐるのも妻の義務」(一オ)
なんのばちかや調子がくるひ結ぶ糸さへきれたがる
三味せんのばちを小だてにあくびをかくしむりにこぼしたそらなみだ
天晴立派ななまづをおさへでかした猫だといわれたい」(一ウ)
恋の夜学にランプをてらし痴話とくぜつの勉強する
羅生門より三十日が剛ひ鬼が金札とりにくる
神代この方かわらぬものは水の流れと恋の道」(二オ)
ぬしと繋がる鎖りがあらば赤い着ものもいとやせぬ
憎い記者だがアノ新ぶんは二人が為めには結ぶがみ
開けたおまへに開けぬわたしぐちに成のも恋のしよう」(二ウ)
(三丁め欠)
ぬれる縁しかあい/\がさもほんにうれしいにわかあめ
さつしておくれよ花なら莟しらけぬわたしの世間見ず
主に貰ふたかたみの写真寐る間はなしてよいものか」(四オ)
座しき相場をくるはす猫は一寸二ヲ上げ三ヲさげ
行燈かきたて寐顔を見ればほんに鼻毛ののびた客
文の返事に印紙を張て原告する時証にする」(四ウ)
けむとしりつゝこゝろの浅間口の葉にのる巻煙草
いれておくれよじらしてゐづと土手の時雨のじやの目傘
写真になるならこゝろの内を主に見せたいこの苦労」(五オ)
ゆめでもよひからもちたい物は金のなる木とよい女房
親には反甫の孝あるくせに恋にや不実な明がらす
これは私しのかい紋などゝうそをゆびはのかげのろけ」(五ウ)
雨のふる夜も通ひはすれどたゞの一度もぬれはせぬ
西洋すがたにズボンとほれて袖ないおまへで苦労する
月は晴てもわたしの胸はやみのつぶてゞ当がない」(六オ)
すてりやさん財振れりややけよどうせこうなりやからざいふ
よきもあしきも世上のあらを日々に売出す新ぶん紙
雲にたのんでしばしの間月のひかりをかくしたい」(六ウ)
口もかるいがおしりもかるい夫でも娠めば身はおもひ
内の亭主とこたつのあしはなくてならないあつてじやま
冷ちやわるいと座蒲団出すはあついわたしのこゝろいき」(七オ)
かうもしたらと議論をしてもどふもならない此規則
妻子あるのを承知でほれて末は手切と出るつもり
久しぶりだと一座の手まへでたつた今逢たその人に」(七ウ)
うぬぼれ鏡で顔みる度にほれぬ女の気がしれぬ
主のこゝろと夏うる氷解るとけぬで苦労する
聞た異けんも尻からぬけて屁とも思はで苦労する」(八オ)
岡ぼれしてさへ浮名がたつに恋じや出るはづ新ぶん紙
ペラの恵びすがそろばんおいて外債利足をあんじ顔
なまじ半分ひらけたよりはかはを冠つた畑の芋」(八ウ)
明のかねのねきゝたくないがゴンとなるとはたのもしい
椅子のつとめも腰かけ仕事ほつれやすさよミシン縫
首尾か不首尾か不首尾か首尾か返さぬ女に待女房」(九オ)
こんなに嬉しくあわれる夜半があるでかなしい夜はもある
のきにひらめく日の丸はたに空に霞のでんしんき
規則で啼のがアノ明がらすたまにや日曜(どんたく)するがよい」(九ウ)
我(わし)が亭主をそしるぢやないがばかで不実で女好き
聞も咄も人目をかねて背中あわせのすゞみだい
我が女房をそしるぢやないがわきが出つちり不性もの」(十オ)
おまへの心と下等な時計くるふたびごと気がもめる
ほれた同士と寒暖計はあつくなる程昇りつめ
おぼろ月夜にまつ身のうれし雁は帰るに主わくる」(十ウ)
好た同士でしみ/\ぬれて猶もうれしいはなの雨
かたいやうでも時節が来れば落て本意ない鹿の角
問ぬ先から其自解(いゝわけ)はかくす事情のある証拠」(十一オ)
どふぞ首尾して人目を忍び一寸なりともアイウエオ
逢ふちやいわれぬわたしが胸を文でありたきカキクケコ
おまへにもらつたこのかんざしをあらひ嶋田へサシスセソ」(十一ウ)
どうで届かぬわたしが心風の尾花の片まねぎ
開化しないと指さゝれても主が死ぬならもろともに
若や夫かと門の戸あけて見れば逃だす??しや」(十二オ)
黄色な声して英語をつかひ青い書生の開化ぶり
主は口中私しはわきがほんに二人りはくさいなか
酔た男の羽おりをかりて代理つとめる猪子(ちよく)さばき」(十二ウ)
ピンとおろした心の錠を義理といふ字がねぢり切
思ふお人が兵士にあたりわづか三年が百千とせ
ぬしもするならわたしもするよ浮気くらべじまけはせぬ」(十三オ)
人は馬鹿だの何のといふが通ひ出したらやめられぬ
梅もさくらも牡丹もいやよ主の便りを菊の花
ホツト溜息枕にもたれ互ひに見合す顔とかほ」(十三ウ)
あげたり下たり思わせ振なほんにお前はじれつたい
意趣も意恨もない客人へつらくあたるもおまへゆへ
紙幣が結んだ二人りが中は破れやすひは知れた事」(十四オ)
おこへばかりですがたが見へぬならば硝子の戸がほしひ
せまい世界にくつ付合て二人り中よい紙のひな
人目放れしアノ風舟で晴てはなしをして見たい」(十四ウ)
つらひ勤めもおまへをたより〔(げん太)はつの御げんにほれたきやくどこへもおそくゆくはづを一ざのまへもなんのそのあすなぶられのとまゝにて心でやぼなとこいそぎしごきもわきへなげしまだまくらのしたへやるてさへつとめをはなればからしいぢよらうめうがにかなひしとたのしむわしをふりすてゝ〕よそで浮気ヲすりやいのりころす
春が来たとてアノうぐすが〔(忠のぶ)見わたせば此方のこずへもほころびてうめがへうたふ歌ひめのさとのおなごがはるははねつく〕こゑもうるはしうめかほる」(十五オ)
死であの世とそりや気短かな〔(かみぢ)しんで花みがさくかいなたのしむもこいくるしむもこひ〕いのちがありやこそすへもある
気やすめはよしておくれよまうけにやせぬが〔(ごくう)ハテこゝろへぬいまうちしてつぽうはいんにはなれようにはなれけんこん二ツにわかれつに?ありてさきにおとはのしサテは玉なきからでつぽうよな〕よそと知りつゝだまされる」(十五ウ)
主は当番今宵の寒さ〔雨露ヲ犯テ市街ヲ廻ル是六円ノ拾ヲ得ンノミ〕思ひやられるつらいやく
梅干じやとてばかにしやんすな??は花よ〔(ごん八)それもなくねの〕うぐひすなかせたこともある」(十六オ)
腹立まぎれにたぶさはとれど〔(おて)さいぜんすきのいやるにはこのやぐらのたいこうつときはほう/\どきちぐひらききちじやうじへもゆかるゝとのごとうてばうたるゝやぐらのたいこ〕うつにうたれぬほれたなか
かねや荷もつは計量にものろが〔(はうた)わがものとおもへばかろしかさのゆき〕恋の重荷は目が知れぬ
はへばたて立ば歩めとおしへたおやが〔三千せかいに子をもつたおやの心はみな一ツ〕いまさらころべとはどうよくな」(十六ウ)
便りがあるかと首ヨ長くして〔(せんだい)一ねんまてどもまだ見へぬ二年まてどもまだ見へぬ〕もしやこゝろがかわつたか
雪を恐れて来られぬやうじや〔恋情ノ切ナル所常ニ辛苦ヲウトンズ〕惚たなさけがまだ薄い」(十七オ)
なけりや不自由あつては二タ目〔(いかけ屋)斯見た所ア江戸じやアねへ上しうあたりのあきうどらしいがはまでヅツ?りもうけたのかでへぶきれいなつけへやうあれじやおんなもほれざアなるめへなべかまのやせうでじやアアレも一生こいつアしうしをけへざアなるめへ〕兎角めゆへにきがかわる
約束たがへず能ふまア主は〔(はつ花)こゝらあたりはやまがゆへもちぢはあるしゆきはふるさぞさむかつたでござんしよふ〕雪の夜道をきさんした」(十七ウ)
人の誹謗も世上の義務もすてゝ君へ情たてる
恋の性質分析すれば愛素好素(すいそ)でなしたなか
巻て結んだ捕縛の紐が切て割腹する財布」(十八オ)
かたい/\と油断のうちに〔(?)ひいなあそびのさゝごとにはづかしながらさかづきをさしたわたしが心いきべにが付たといふたればそこからのんで下さんしたそのうれしさにさかづきを二世のかためとだきしめてつひてまくらのそゝけがみなをてあぎよとかんざしにおまへの胸のさしこみはしやくといふものはじめてしつたほかのとのごのはだしらずおもひこがるゝわたしじやものなんの心がかはらふとあなたへひけばこなたへももつれもつる九いとやなぎかぜにもまるゝふぜいなり〕いつかわられるランプほや」(十八ウ)
人目しのんで恋路のやみを〔(せきのと)つへをちからにたど/\と〕こへて晴ての女夫づれ
権妻が袖にすがりて別れを惜む〔(うらざと)そなたもともにといひたいが〕つれて行れぬ遠いくに
別れて呉れとはあんまりむごひ〔そりやきこへませぬでんべゑさんおことはむりとはおもわねどそもあひそめしそのひより〕わたしや別れる気はないよ」(十九オ)
今朝はかへらや不首尾としれど〔(三ツまた)まだとけやらぬうつりがにそのうちかほのうしろむきかはひらしさにますおもひ〕どうも見すてちやかへられぬ
ういた恋路とアノせみの声〔(?)あついといふのもちつとのまこわいゆめじやとおもふてしんぼうせい〕いまに秋風ふいて来る」(十九ウ)
逢たさ尋ねるお方はつまぢよ〔(?)あはずにいんではこのむねがすまむ〕こゝろのまゝならぬ
とうし車で江の島まうで〔(おちうど)とまり/\のはたごやでほんのたびねのかりまくらうれしいなかじやないかいな〕せけん晴ての二人のり」(二十オ)
主を大事とこゝろにすまぬ〔(あさま)いやなきやくにもひよくござ〕まくらかはすもすへのため
握り拳を上たる下へ〔(しろ木や)たゝいてはらがいるならば心まかせにさしやんせとおとこのひざにすがりつき〕ぽんとなげたるなげ島田」(二十ウ)
雪はしん/\夜はふけわたり〔三千せかいに子をもちしおやの心はみな一ツ〕おとこなみだにもらひぢゝ
私しが世わたりや子供が便り〔(ゑちごのくに)しゝをかぶつ?ひつとりかへつてくびをふりまするおやぢヤまじめでふへをふく〕こうしにやその日がおくられぬ
浅草馬道三丁目壱番地角
大橋堂  児玉弥七板」(裏見返し)


二十八 『〔開化〕芳此 二篇』
※本書は大阪府立中之島図書館蔵本と同様であるが、中之島図書館蔵本は十丁までしかないのに対し、本書は十四丁まである。
〔開化〕芳此 二篇
貞信画」(表紙)
(絵)」(見返し)
(絵)」(序オ)

流行日に増し。時にすたり。今や開化の日に進み。時に進みて。よしや其。よし此唱歌(うた)も。新題にもとづき。穿ち出し。趣向のかづかづ。尽ぬ縁にしの。いついつまでも。流行おくれぬ。作意なれば。是をもとめて。文明の。通君子とも。なり給へかしと言。
十年弥生の日
一荷堂半水事
狭川峯二誌」(序ウ)
○違式
違式の罪とて数あるなかに入てほしひよ浮気性を
○●違(かいゐ)
女子(おなご)だますも佳違の罪に落してあげたいこんな人」(一オ)
○旗章
日の丸旗章を立たる様に揃ふて見せたひ胸のうち
○諸税
諸税のある中アノぬしさんに浮気の税金出さしたい
○会議所
なんの何々でよる会議所そつと内証のさしむかゐ
○事務所
ことのよしあし事務所に往てわけてほしひよこの胸を」(一ウ)
○小学校
ひごと通ひし小学校で習ひ覚しこの苦ろう
○教師
是ほど程よいおまへをそばに色の教師がしてほしひ」(二オ)
○生徒(せいとう)
いたづら生徒の面(つら)よごしともいふよおまへのこのへんじ
○試検
ならひ覚へたいろはの色を主に試検が仕てほしひ
○一級
一級二級とツイ三級と四級逢ひたいこのごろは
○進歩
お前のかげだよわしや何所までも進歩仕升よ神かけて」(二ウ)
○運動
一時の時間が夜る昼かけてにくひ運動やめさんせ
○女紅場
手練手管はモフ是迄よ女紅場仕ごとの世帯気に」(三オ)
○煎茶会
煎茶会じやの何ぞと主はうまく口取いひくるめ
○一絃琴
嬉し爪音一絃琴はしのぶ合図のしらせ琴
○盆栽 うへ木鉢
かざり立たるアノ盆栽のまつと梅とでくらしたひ
○瓶花(へいくわ) いけばな
瓶花のかづかづならべた中で主の生たをたをりたひ」(三ウ)
○開化
文明開化の時代(ときよ)につれてぬしもまことをひらかんせ
○旧弊
元より浮気な旧弊捨て開化しさんせしんじつに」(四オ)
○洋学
洋学しさんす主じやといへど横文字文ではわかりかね
○地球儀
まはる世界を見る地球儀のそばに居ながらまはりかね
○写真
たよりは聞なりまだその上に日にち写真で逢ひつゞけ
○舶来
ヲヤモめづらしアレ此人は舶来してきたかほもせず」(四ウ)
○鉄橋
鉄の橋ともおもふて居るよ渡りつけたるうへからは
○鉄道
こゝろ鉄道ゆがみもなくて嬉しおもひのゆきかよひ」(五オ)
○蒸気車
首尾も蒸気車おもひのたけは逢にゆく間も一はしり
○ステーンシヨン
おもひせかれて来たかゐありてステーンシヨンのしゆびの能さ
○蒸気船
蒸気船かやわたしが胸はわたりつけつゝもやしづめ
○郵便
おそい返事にアレ又しても郵便だよりをまつつらさ」(五ウ)
○支那人
どふか支那人南京人はけし坊とらんセむだな唐
○外国人
外国人にも増るよぬしはいろにてん狗の鼻だかは」(六オ)
○天長節
ちよふど能き首尾天長節よながく居さんせいつまでも
○日曜日
時も時ならけふ日曜日はれて逢れる首尾のよさ
○ドンタク 休日
幸ひ此日がドンタクならば浮気もドンタクしてほしい
○半ドンタク 土曜日
約そくしてまつ半ドンタクの二時三時までかほ見せず」(六ウ)
○器械
此頃器械がくるふたゆへかおもふ坪さへはづれがち
○同
からくり仕事で逢ふ此首尾よほれた器械とおもわんせ」(七オ)
○ガラス
ガラスへだてに顔うちながめそれと人眼のしん気くさ
○フラフ
高くとまれどフラフの様に風のまに/\なびかされ
○ポンプ 水でつぽう
もゆる胸の火ポンプにかけて消して下んせおまへなら
○時計
時計合図に気はセコンドもとかく待遠し首尾の夜は」(七ウ)
○懐中時計
そつと心に懐中時計出して見る間も気はそゞろ
○シヤツプ
こゝろ世話敷主やまたシヤツプチヤツト忘れていなさんす」(八オ)
○ヅボンマンテル
そばにヅボンと立つゝ見ればマンテルいや気じやあるまいか
○同
うまひ仕立(しごと)といひつゝそばにヅボンマンテル着せてまで
○摺硫黄
しのび逢ふ間の吸つけ烟草ほんに嬉しひすりゐをん
○電信機
すぐに往とのたよりは嬉しほんに誠の伝しん機」(八ウ)
○博覧会
博覧会にも出したいおもひ主がまことのこのふみは
○病院
わたしの病は病院の外なをすおかたはひとりより」(九オ)
○伝染 ひゞき
適(たま)さかより添ふおまへの側で伝染し升よあく性気を
○指揮 さしづ
どふぞ首尾よく逢そのひまをそれと指揮して下さんせ
○説教
聞ばきく程アノ説教におもひ増してはかよひつめ
○一等
世間一等承知のうへで二等三等逢ふならば」(九ウ)
○罪(ママ)金(ばつきん)
来るといふ日に来ぬ罪金はお前にこれ迄何万円
○ホイス
あいすホイスといひつゝ主の機嫌とりするこの苦労」(十オ)
○新聞紙
一目見るよりツイ日を重ね読にゑきある新聞紙
○探訪人
よかれあしかれ見きくにつけていやよ探訪(たんぽう)のひとぢらし
○人力車
わづかの道なる人力車でも合乗したいよおまへなら
○牛肉
牛肉食たあとしんにくばなし薬ぐいからどてなこと」(十ウ)
○徴兵
ぬしは此頃徴兵役目デコデコデンとて気にかゝる
○拘留人 めしとられ人
拘留されたる人にもまして罪はますますかのひとに」(十一オ)
○原告人
忍びあふ中アレにくらしや原告さんしたひとはたれ
○被告人
被告人とてなま中つらや悪ぞもくぞのときほどき
○代書人
よしや代書人にもさんせうれしこの文見るからは
○代言人
いふてほしさの代言人もなくてむしやくしやおもひつめ」(十一ウ)
○身代限
身代限はおろかなことよ命限りよほれた身は
○巡査 おまはり
忍び待間のこゝろもしらず巡査さんにも気がねして」(十二オ)
○屯所
いやに皆さんよりあつまりて屯所ではあるまひし
○検査
浮気性から実意な性を検査してほしたれなれば
○憤撃突戦
いぬるいぬるといつものくせよ憤撃突戦したあとは
○抵当 引あて
抵当に仕ておく此紙入よほしくはその日に来やさんせ」(十二ウ)
○暴動人
聞もいやだよ暴動人はやめてくださいこののちは
○馬車
合乗しながらお前と二人馬車でいちやつくひまはなし」(十三オ)
○印紙
あした往との此文の中印紙はらんせじつならば
○鳫造 にせ
逢ふにましたる此文づらはどふか鳫造らしさうな
○紙幣 金札
ポチを出すなら円金よりもそつと紙幣でなんまいも
○宝丹
常にたへさぬ熊の胆よりも嬉し宝丹もつたぬし」(十三ウ)
○メリヤス
肌身にぴつたりあふメリヤスを嬉しお前にもらふとは
○出開帳禁
出開帳ならモフやめさんせ居開帳ならまだなこと」(十四オ)
○町巾広る
せまひ心も此町中のやうにひろげてほしひもの
○軽気球 風船
乗つて往たやアノ軽気球おもふところへ人しらず
○切店
切店づとめをしている身でも惚た実意はかわりやせぬ
○履(くつ)
しばしといふ間もアレせわしない主は履なりわたしや下駄」(十四ウ)
(広告)
大阪平野町淀屋橋角
出板人 石川和助」(裏見返し)


二十九 『』
※二冊合本。外表紙欠。前半は、国会図書館・筑波大学図書館蔵『東之花開化都々逸』と同じ。ただし、本書は初め三丁半が欠けている。後半は『東京じまんどゝいつ』。
(表紙欠)
袂ひかへてたゞ潜然(さめ/\)とどふでも今曙(けさ)は帰るきか
文明開化で自由になつてわしの利害はぬしまかせ」(四ウ)
擲(うち)なと蹴るなと随意(いゝよ)にさんせ苦楽まかせた此からだ
先のこゝろを分析(ぶわけ)をすれば虚(うそ)と実との四分六部」(五オ)
情知らずのあの車夫(くるまひき)顧(ふりかへ)る間も泣く別れ
ぬしの浮気も傍(はた)から報(つげ)る部屋は恋路の新聞屋」(五ウ)
宵の口舌で起た葛藤(もつれ)誰が裁断するものか
来ると約束さだめた宵はいとゞ清浄(きれい)な身だしなみ」(六オ)
ずんと居て履歴をならべ是でも客気(うわき)をまだおしか
問ぬ先から其自解(いひわけ)は隠蔽(かくす)事情(ことがら)ある証拠」(六ウ)
花の開くる時節がきてもないておられぬ籠の鳥
欲徳づくなら何あの人に最初(はつ)から投票(いれふだ)するものか」(七オ)
しかとからんでをく襟巻も忍び解けする浮気もの
今は浮名も意地にて通し気侭暮しの新世帯(あらぜたい)」(七ウ)
屏風から内ヤわたしの所轄(しはい)袒裼(たんせき)裸体(らてい)も自由の権
窓をあければそら飛鳥の翼恨しまゝならぬ」(八オ)
ぬしのこゝろは価廉(ねやす)の時辰儀(とけい)直(じき)にそろそろくるいだす
貴身を見ぬ夜は写真をながめ愚痴なよふだがうさはらし」(八ウ)
後から羽織をきせる煙草入忘れさんすな宵の言の葉
はれて添れぬ身の束縛もとけし笑顔に青眉毛」(九オ)
今更よせとはそりやどふよくな分迷怪花(ぶんめいくわいくわ)にや誰がした
胸に約束漏しちやならぬ護謨(ごむ)で消されぬ蔭の口」(九ウ)
おめへばかりを目的(めあて)にすればれこがまゝなる口がひる
酔て倒れてつい寐すごして月の夜にして夕桜」(十オ)
初会の時から袖無い人と見る度毎に袖無し
遅い帰りをそれとは言ずともす早附木(まつち)で当こすり
明治十二年五月十七日御届
編輯人 須田町四番地
    永嶋辰五郎
出版人 馬喰町三丁目十番地
    小森宗次郎」(十ウ)
東京じまんどゝいつ
はやくやめたいかようもよぶもまつもわかれもないやうに
新よし原」(表紙)
年々に替るは時の流行は、昨日のちよいとは、今日のしよんがへ、色も手????唱歌(しやうぐわ)なり、さばれ酒席でいつにても、是ぞ古いと落されぬは、この都々逸の徳なるべし、いつぞや人情艶語をむねとし、一小冊を顕わして諸君の高評を抑(ママ)(あを)ぐとしかいふ
壬申の暮 蓮池散人記」(一オ)
楼上三弦是春情心意動揺頻快遊
蓮池道人
巻中小芳盛画」(一ウ)
手弱女のいとしめやかに水てうしこゝろの駒も動き初めけむ」(二オ)
まよひはじめのもふほれじまひどんなおかたもめにやつかぬ
そふてくらうはせじやうのならひそはぬうちからものおもひ」(二ウ)
ふみのやりとりはれてはできぬうはさするのもむねのうち
ゆめでみめぐりくるかとまつちあへばこゝろもすみだがは」(三オ)
なみだではがせしおしろいなをししらぬおきやくへわらひがほ
きげんとらるゝざしきはいやよわるくいわれるぬしのそば」(三ウ)
ほれたほんもうとげよとすればじつにおまへにみすかされ
いちにちあわねばぢびやうのしやくがよふけてさしこむまどのつき」(四オ)
あだやおろかでそはれるならばかみにくらうはかけはせぬ
なぜにそのやうにはらたてしやんすうたぐらしやんすもほどがある」(四ウ)
ようがあるとてよんだはうそよおかほみたさのはかりごと
げいしやたいこのとりもつはしごあがるおきやくのほどのよさ」(五オ)
あめのふるひとひのくれがたはなをもおもひがますかゞみ
ひとがどのやうにいはふとまゝよわしがめがねでほれたひと」(五ウ)
はなにてうてうあれうらやましきてはちらちらまよはせる
ほとゝぎすそなたくがいは八千やこへわしもくがいでなきあかす」(六オ)
おもひをもはれくぜつはすれどそれものろけるちわのかね
とゞくものならわたしがをもひゆめでなりともしらせたや」(六ウ)
これじやならぬときをとりなをしなみだながらにうすげしやう
おまへひとりがをとこじやないといふてこゝろでないてゐる」(七オ)
あふてうれしさわかれのつらさいつもからすがいぢわるさ
おまへにわかれてそれからのちはねぐらさだめぬやもめどり」(七ウ)
おもふをとこになぞかけられてとかざなるまいしゆすのをび
としがちがをがにようぼうがあろがほれてがまんがなるものか」(八オ)
みせでせかれてらうかでないていやなざしきでにがわらひ
おもひあきらめかへしはしたがもしやほかへはゆきやせぬか」(八ウ)
ふとしたことからてうしがくるひいまじやたがひにしのびごま
あやめかきつはにたはななれどぬしにみまがふはなはない」(九オ)
わらひがほしてつらひ日あればないてうれしきよはもあり
あまたのおきやくにこのみをまかせすへはいづれのきしにつく」(九ウ)
(裏表紙欠)


三十 『〔新選〕さはり都々一 第一号』
古慶坊三笑稿
東海堂歌重図
〔新選〕さはり都々一
第一号
東京 松林堂??」(表紙)
目録
朝顔日記宿屋      〔梅川忠兵衛〕新口村
〔おしゆん伝兵衛〕堀川 菅原寺子屋
大功記十段目      先代萩六ツ目
兜軍記あこや      千本桜すしや
廿四孝狐火       三代記八ツ目
三勝酒屋        日吉丸三の切
安達原三ノ切      忠臣蔵七段目
伊賀越沼津       千両幟
〔お染久松〕質店    一之谷三段目
以上」(見返し)
朝顔日記宿屋
あいたいばかりにこはさもわすれ〔(朝がほ)又も都を迷ひ出いつかは。廻りあふさかの。関路を跡に。近江路や美濃尾張さへ定めなく。恋し恋しに目をなきつぶし。物のあいろも水鳥の。くがにさまよふかなしさは〕くらき夜道もたゞ一人り」(一オ)
堀川
おまへ壱人りに苦労はさせぬ〔そりや聞へませぬ伝兵へさま。お詞無理とは思わねどそも逢かゝるはじめより。末の末迄いひかはし。たがいに胸を。あかし合。何の遠慮も内証の。せはしられても恩にきぬ。ほんの女夫と思ふ物。大事大事の夫の難義〕足ぬわたしもともどもに」(一ウ)
大功記十
ぬしの不実は元より承知〔コレ見たまへ光秀どの軍のかどでにくれぐれもおいさめ申シた其時に。思ひ留ツて給ゝば斯した歎きは有まいに。知ぬ事とは云ながら。現在母御を手にかけて。ころすといふは何事ぞ〕かいごするのをまつばかり」(二オ)
阿古屋
雪のあしたにすい付たばこ〔サア景清が行衛はと問れし時の其くるしさ。水ぜめ火責はこたゑふが。情と義理とにひしがれては。此ほねぼねくだくる思ひ。それ程せつない事ながら。しらぬ事とはぜしもなし此上のお情には。いつそころして下さんせ〕なげだすきせるにとがはない」(二ウ)
廿四孝狐火
ぢつと手にとりおまへの写しん〔ゑはうせふ迚お姿を画にはかゝしはせぬ物をたましいかへすはんごん香。名画の力も有ならば。かはいとたつた一トことの。おこゑが聞たい聞たいとゑざうのそばに身を打ふし〕あふたはじめを思ひ出す」(三オ)
三勝酒屋
逢ぬむかしに成事ならば〔今比は半七様どこにどふしてござらふぞ。今さら返らぬ事ながら。わしといふ者ないならば半兵へ様もお通にめんじ。子迄なしたる三勝どの。とくにも呼入さしやんしたら。半七様の身持直り御勘当も」(三ウ)有まいに。思へば思へば。此そのが。去年の秋の煩ひにいつそ死で仕まふたら。斯した難義は出来まいもの。お気に入ぬとしりながら。未練なわたしがりんねゆへ。添臥はかなはず共。おそばに居たいとしんぼうして。是迄いたのが。お身の仇今の思ひにくらぶれば。一年前に此そのが。死る心が付なんだ〕思ひ切たやぬしの事」(四オ)
安達原三
のきのかやりの烟にむせて〔見れど盲のかきのぞき。早暮過る風につれ。折々からしきりに。ふる雪に身はぬれ鷺のあしがきや。中をへだつる白妙も天道様のお憎しみ。受し此身はいとはねど〕泣ぬなみだに目をはらし」(四ウ)
沼津
花はちるとも匂ひはのこせ〔先程のお咄しには。金銀づくではないとのうはさ燈火の消しより。アノ妙薬をどうばなと思ひ付しが身の因果。どふぞお慈悲に是申今宵の事は此ばぎり〕たとへこの末どふなろと」(五オ)
お染質店
ちいさい時から学校がよひ〔ソリヤ曲がない胴欲な。高いも低いも姫ごぜの。肌ふれるのは只一ト人リ親兄弟もふり捨て殿御に付が世の教へ。それにまだまだ悲しきは。夕部の風呂のあがりばで。此腹帯をかゝさんが見付さんして。〕恋のいろはの習字本」(五ウ)
梅川
ぬしのこゝろははるふる雪よ〔大坂を立退ても。私が姿が目に立ば。借かごに日を送り。ならのはたごや三輪の茶や。五日三日夜を明し。廿日余りに四十両遣はたして。二歩残る〕積るよふでも解やすい」(六オ)
寺児屋
ぬしの口舌とあの上るりは〔御台若君もろともにしやくりあげたる御泪。めいどの旅へ寺入の師匠はみだぶつしや無二仏六道能化の弟子になり。さいの河原ですな手本。」(六ウ)いろは書子を。あへなくもちりぬる命ぜしもなや。あすの夜たれか添乳せんらむうゐめ見る親心剣と死出のやまけこへ。あさきゆめみし心地して。跡は門火にゑひもせず〕ほんになくやら笑ふやら」(七オ)
先代萩六
なれぬ世帯にたがひにやつれ〔思ひ廻せば此程から。諷ふた唄に千松が。七ツ八ツから金山へ。一年待共まだ見へぬ。二年待どもまだみへぬと。哥の中なる千松は。待かい有て父母に。顔をば見せる事もあろ〕今はしんくの実くらべ」(七ウ)
千本桜三
心とこゝろが合さへすれば〔父も聞へず母様も。夢にもしらして下さつたら。たとへこがれて死すれば迚。雲井かにちかき御方へ。すしやの娘がほれられうか〕性があふうが合まひが」(八オ)
三代記
浮気なこゝろは少しもないが〔是程迄につきしたふわたしが心思ひやつてくれもせで心つよやと緋縅に。うらむらさきの色ふかき〕恋しい御かたが有ばかり」(八ウ)
日吉丸三
因循すぎると笑はばわらへ〔過しあふ夜のむつ言を身にしみじみと片時も思ひわするゝひまもなふ。年月へだつ其内に。うつり安いくきはとのごの心。もしや見捨はなされぬかと。ほんにあらゆる神さんや仏様迄むりいふて〕私しや頑固でかた思ひ」(九オ)
忠臣蔵七
くるしい異見の薬がどくと〔おかるは始終せき上せき上。便のないは身の代を。役に立てのたび立か。いとま乞にも見へそな物と。うらんで計りおりました。勿体ないがとゝ様へ非業の死でも御年の上。勘平殿は三十になるやならずにしぬるとは〕なつて日に日につもる癪」(九ウ)
千両幟
便り計りでたがひにいれど〔江戸長崎国々へ。行しやんすりや其跡の留主は猶さら女気のひとりくよくよ物案じ。夫にけがのない様にと祈る神様仏様。妙見さまへ精進も。戻らしやんして顔見る迄〕縁は切れない電信機」(十オ)
一の谷陣屋
人の諫めもきこへぬ筈よ〔あいとばかり女房へ。あへなき首を手に取り上ゲ。見るもなみだにふさがりて。かはる我子の死顔にむねはせきあげ身も。ふるわれもつたる首のゆるぐのをうなづくよふに思はれて〕耳に残りし君がこへ」(十ウ)
出版御届明治十二年十一月六日
編輯兼出版
東京府平民
水野慶次郎
日本橋区通油町十四番地」(裏表紙)


三十一 (漢語都々逸)
※原表紙欠。タイトル不明。
連て遊廓(くるは)を脱走(だつそう/しゆつぽん)したが原(もと)の主人へ謝罪(しやざい/りをわびる)する」(一オ)
常に御部屋で苛刻(かこく/むごきこと)の責(せめ)もあの人故ぢやと辛抱する」(一ウ)
ひとつは意気張切(きれ)ても見たが何卒(どうぞ)回復(くはいふく/もとへもどす)してほしい」(二オ)
忍び来よとの羽檄(うげき/いそぎぶみ)を見たら僕(ぼく/わたし)が意(こゝろ)は有頂天(うてうてん/うはのそら)」(二ウ)
三オ欠
おまへの●家(こんか/やどのつま)と確証(くはくしよう/たしかなせうこ)取て跡でぬきさしさせはせぬ」(三ウ)
流石顔見りや解体(かいたい/こゝろのはりがゆるむ)なして思ふ恨みは口へ出ず」(四オ)
おまへのこゝろを諒察(りやうさつ/よくさつする)するに戮力(りくりよく/ともにちからをあはす)する気はありやせまい」(四ウ)
傍輩闘諍(とうしやう/いさかい)親方さんが聞て鎮撫(ちんぶ/とりしづめ)のやさいけん」(五オ)
惚たを慢侮(まんぶ/あなどり)に能(よく)無理ばかり寧(むしろ/いつそ)きれうか別れうか」(五ウ)
王制復古(わうせいふくこ/むかしにかへす)浮世ぢやものを吾儕(わたし)ももと木へ帰り咲」(六オ)


三十二 『新作開化都度逸』
新作開化都度逸」(表紙)
新文句開化のとゞいつ
よしとら画さく
??山口はん」(見返し)
是は皆様御揃で何時も御不事でおめでたいとさなり文句もお定めたけなんでも一節おやんなはいと自分勝手の猫なで声におだてゝ乗る口車客はすつぱり調子にのり思はず客が座をもてば祝義も玉も只取とは三千歳経たる化猫が人変不し義人通自在是ぞ都度逸の徳なるべし
梅のさかりを肴にして ?言者 寿猫音三味述」(一オ)
姿ばかりのしやしんはすかぬ心のうちまでうつしたい
なりふりやかほかたちがよくとも心のうちがかんこばつちいな人があるからなかなか気はゆるせないのさ」(一ウ)
待がつらいかまたるゝわしが内の首尾して出るつらさ
人目はつらいよ」(二オ)
色の味をも最(もう)かみわけておもい切ます唐がらし
からいやつだからみがきつゝくのさ」(二ウ)
訳もないことわけあるやうに言れりや義理にもせにやならぬ
あんまりあをられるとついのりかける気になるのさ」(三オ)
ぐちなわたしにさばけたおまへ柳に蔦だと人がいふ
気があはないのでおきのどくさ」(三ウ)
新聞をみれば世間のうはきなはなし是じやできぬとひとしあん
うつかりとんまなまねはできないのさ」(四オ)
すいな浮世にやぼいゝちらす開化しらずのいんじゆん家
しらないことをしつたふりをしてはぢをかくより身にしみこんでいるむかしふうをまもつているかたいぢな人にもこまるのさ」(四ウ)
ぐちもみれんもいゝたくないがぬしを大事と思ふゆへ
けつしてわるく思つておくんなはゐな」(五オ)
いろのせかいといふのもどうり五しき色どるばんこく図
人のまよふのもむりではないよ」(五ウ)
私しやとゞ逸でまぎれもしようがぬしは帳合でお気づまり
これも世わたりだから?ひがなしかはるわけにもいかないからさ」(六オ)
水にまかせた浮草さへもすゐた処で花がさく
人のこゝろはかうしたものかねへばからしいよ」(六ウ)
うたゝ寝のさめてためいき心のもつれ人にやはなせぬ此しだら
じつにむちうになるともおもしろいからね」(七オ)
結ぶ菖蒲(あやめ)も心の願ひ露にぬるゝの辻うらか
すこしはうれしいこともありさうだよ」(七ウ)
鳫に事づて燕に便りどれも聞たやはなしたや
気をもんでもさきが気がながいからじれつたいねへ」(八オ)
帰らしやんせと口ではいへど立ば驚くむねのうち
どうしていゝかわからないのだよ」(八ウ)


三十三 『開化どゞいつ』
※東京都立中央図書館東京誌料蔵本と同じものである。
開化どゞいつ
国器堂」(表紙)
開化どゞいつ」(見返し)
ぬしの来るのをみちみちまてば待れぬれんじにほとゝぎす
蒲団抱しめ身をふるはして泪のみこむ二日灸(浅草歌吉)」(一オ)
わたしや松が枝ぬしや蔦かづら四ツにからみし床のうち
主はスペントフラレスけれど私しやほんまにホルトガル(オガハマチ菅生梅)」(一ウ)
真写した私の姿浮気なあなたにやるわいな(祝生)
疑がわしやすがわしや心まで見せてゐるぞへ葛饅頭」(二オ)
廓の桜も見あきて早くみたいお客の寮の菊
忍び足して閨家(ねや)の戸明てそつとたちぎく茶立虫」(二ウ)
お気にさわろがかういふたらとあんじこうらす筆の先
南無と覚期(かくご)はむかしの事よいまは開化の別世界」(三オ)
浅草の鐘にめざましふと起あがり烏鳴やら店の首尾
主にあふみは美濃たのしみよ寝物がたりも蚊屋の中」(三ウ)
酔(す)いも甘ひもまた辛ひのも知ていながら沸騰水(はるか家)
いまさらペケトハ袖ないお前すがる袂はつゝうぽう(小糸)」(四オ)
烏賊に此よなおぼこじやとても神の結びし鯉どやもの(小かよ)
せまい世帯にこつゞきあふてふたり中よい紙雛」(四ウ)
紫陽花のはなによふ似た浮気なおまへほんに眼鏡の色替り
鼻毛のばしたむかしにかわりお髭延した人がよい」(五オ)
たゝむ袂のふみがらみれん書生羽織の長文句
苦労する墨硯の海のふかい浅いは客と間夫」(五ウ)
旧幣ものじやといわりよとまゝよ女夫(めうと)並んだ門かざり
君を松がえこゝろの竹をやがてかほらす閨の梅」(六オ)
ボロツ買じやといわれて居ても漉てかためた西洋紙
黄色な声して英語を遣ひ青ひ諸生の開化ぶり」(六ウ)
盃にくだを蒔絵のそこぬけ上戸末は身上のまきつぶし
迷ふまいぞへまよわせまひと犬の首にも札がつく」(七オ)
育てがらとて藪鶯もいまは初音を美寿のうち
ぬしは秋風ふり捨られてわたしや鈴むしなくわいな」(七ウ)
猫は芸妓(げいしや)に狐は唱妓客は狸のかし座敷
月をかいたる丸あんどうも屏風ひとへが恋のやみ」(八オ)
乗るも曳くのも浮世は車まわり合せが有わいな
契りかためて万代かけて橋も眼がねのわたりぞめ」(八ウ)
胸のほむらと石炭油はちよひとしてさへもえやすい
深山ざくらはおよばぬ事よ手折やすいは花茨」(九オ)
濡て嬉しい此ゆふだちはかた身がわりの最合傘
かさね扇と人目も恥ずこゝが要とだき柏」(九ウ)
起請誓詞はそりやきうへいよ二人ならんでとる写真
移り安いと座敷をひかせうわきや火止の置ランプ」(十オ)
都鳥さへ中よいどしよ女夫(めうと)ならんだ筑波山
まゆ毛はやすもしら歯になるもぬしにまかせた此からだ」(十ウ)
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発売書賈 金沢 桜井保市」(裏見返し)