『円朝全集』岩波書店

円朝全集  全13巻別巻2


人間がいちばん怖い。そして人間がいちばん面白い。言語の写真法=速記術が残した稀代の物語遺産。

[編集委員]倉田喜弘・清水康行・十川信介・延広真治

発売:岩波書店

予約募集 申込締切=2013年4月26日

2012年11月の第一巻から巻順に隔月一冊ずつ刊行。

本全集は予約出版です。全巻予約お申し込みの方にお頒ちいたします。
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『円朝全集』全巻構成 及び 『円朝全集』推薦文/円朝略年譜/校注者一覧 のページもあり



●A5判・上製函入・400〜608頁予定
第1回・第一巻/2012年11月28日発売
 怪談牡丹燈籠
 塩原多助一代記
 鏡ケ池操松影
 定価8820円(本体8400円)
第2回・第二巻/2013年1月29日発売
 英国孝子ジヨージスミス之伝
 安中草三の伝 後開榛名の梅が香
 定価8820円(本体8400円)
第3回・第三巻/2013年3月22日発売
 業平文治漂流奇談
 松の操美人の生埋
 蝦夷錦古郷の家土産
 定価8400円(本体8000円)

●お取り扱いは
 岩波書店
 〒101-8002東京都千代田区一ツ橋2-5-5
 電話03(5210)4000(案内)
 [定価は消費税5%込みです]
 岩波ホームページ http://www.iwanami.co.jp/

全巻構成

第一巻
怪談牡丹燈籠
塩原多助一代記
鏡ヶ池操松影(江島屋騒動)

第二巻
英国孝子ジヨージ・スミスの伝
安中草三の伝 後開榛名の梅が香

第三巻
業平文治漂流奇談
松の操美人の生埋
蝦夷錦古郷之家土産

第四巻
欧州小説黄薔薇
鶴殺疾刃包刀
月謡荻江一節(一名荻江の伝)

第五巻
敵討札所の霊験
真景累ヶ淵

第六巻
怪談乳房榎
緑林門松竹
操競女学校

第七巻
粟田口霑笛竹
文七元結
福禄寿

第八巻
熱海土産温泉利書
霧隠伊香保湯煙
松と藤芸妓の替紋

第九巻
*荻の若葉
雨夜の引窓
菊模様皿山奇談

第十巻
名人競(錦の舞衣)
八景隅田川
政談月の鏡
名人長二

第十一巻
蝦夷訛
*日蓮大士道徳話
*雨後の残月
*応文一雅伝
離魂病(根岸お行の松 因果塚の由来)

第十二巻
*火中の蓮華
*谷文晁の伝
闇夜の梅(穴釣三次)
奴勝山
*塩原多助後日譚
怪談阿三の森
心中時雨傘

第十三巻
〈落語・小咄・三題咄〉
心眼、縁きり榎、にゅう、畳水練、明治の疑獄、黄金餅、*星野屋、*初商法、*堀の青柳 ほか

第十四巻
〈弟子による口演〉
*塩原の怨霊、後の業平文治、*烈婦お不二、小雀長吉(双蝶々)、鰍沢、死神 ほか

第十五巻
〈各種資料〉
速記以前の文語文作品、紀行文、点取、草稿、談話、俳句、都々逸、書簡

*印は全集新収録の作品。ほか十三巻、別巻にも多数あり。


校注者一覧
池澤一郎(早稲田大学教授)
磯部敦(奈良女子大学准教授)
今岡謙太郎(武蔵野美術大学教授)
菊池眞一(甲南女子大学教授)
倉田喜弘(芸能史)
児玉竜一(早稲田大学教授)
小二田誠二(静岡大学准教授)
佐々木亨(徳島文理大学教授)
佐藤かつら(青山学院大学准教授)
佐藤至子(日本大学准教授)
清水康行(日本女子大学教授)
鈴木圭一(川崎北高校)
土屋桃子(岐阜大学准教授)
十川信介(近代文学)
長崎靖子(川村学園女子大学教授)
中丸宣明(法政大学教授)
延広真治(近世文芸)
二村文人(富山大学教授)
山田俊治(横浜市立大学教授)
山本和明(相愛大学教授)
横山泰子(法政大学教授)
吉田弥生(文京学院大学准教授)


三遊亭円朝略年譜
▼天保十年(一八三九)江戸湯島に生まれる。本名出淵次郎吉。
▼弘化二年(一八四五)小円太の名で寄席に出る。
▼弘化四年(一八四七)二代目三遊亭円生に入門。
▼嘉永四年(一八五一)歌川国芳に入門、絵を学ぶ。
▼安政二年(一八五五)円朝に改名。真打ちとなる。
▼安政六年(一八五九)新作の咄を手掛け始める。
▼明治四年(一八七一)山々亭有人(條野採菊)の補綴により草双紙『菊文様皿山奇談』刊行。
▼明治十七年(一八八四)若林?蔵・酒井昇造の速記により『怪談牡丹燈籠』刊行。同年『塩原多助一代記』も刊行。
▼明治十九年(一八八六)條野採菊(山々亭有人)『やまと新聞』創刊、円朝「松の操美人の生埋」連載開始。
▼明治二十年(一八八七)「真景累が淵」連載開始(『やまと新聞』九月九日―)。
▼明治三十三年(一九〇〇)円朝死去。

▼大正十五年(一九二六)春陽堂版『円朝全集』刊行開始。
▼昭和三十年(一九五五)岩波文庫『怪談牡丹燈籠』刊行。翌年『真景累ケ淵』、翌々年『塩原多助一代記』刊行。
▼昭和五十年(一九七五)角川書店版『三遊亭円朝全集』刊行開始。

朗月散史『三遊亭円朝の履歴』(『読売新聞』明治二十三年九月二十七日―)、早稲田大学演劇博物館『没後百年 三遊亭円朝とその時代展』(平成十二年)参照


比類のない書記体系による話芸の復刻
          川田順造
 円朝のハナシは、元来、幕末文久年間の創造力にみちた、学際ならぬ芸際集団だった「酔狂連」という「座」の話芸として形成されたものだ。文字に書くこともよくしたとはいえ、この天成のハナシ家は、近代文学的な意味での創作意識とは別の次元で生きていたはずだ。単一の演者が、複数の人物を一人称の直接話法でハナシ分ける、中国の単口相声以外、世界にも類のない話芸の、日本独自の速記術による集成。しかもルビつき漢字仮名交り文という、これも世界に類のない書記体系を、原本に忠実に再現した今度の円朝全集は、DVDで現代落語家の口演を楽しむのとは別の次元の、極めてスリリングな「ハナシをヨム」体験をさせてくれるだろう。


読んで面白いから円朝
          高橋源一郎
 円朝は、比類なき落語の名手であり、日本文学にとって幸いなことに、言文一致体の創始者であった。小説の書き方がわからなかった二葉亭四迷が坪内逍遙から「円朝の落語のように書いてみたら?」と忠告を受けたことは、文学史上に欠かせないエピソードだ。だが、「文学史上の有名人」は、多くの場合、「読書」の対象ではない。ぼくの周りの「読書家」たちに訊ねても、「歴史上の人物としての円朝」は知っているが、実際その作品に目を通した人間は皆無に近い。なんてもったいない! どの作品でもいい、とにかく読んでほしい。間違いなく驚くはずだ。なぜかって、ふつうに面白いからですよ。というか、韓流ドラマみたいだからですよ。というか、つい昨日書かれたみたいで、しかも、目の前でしゃべられているみたいだからです!



三度目の全集
円朝の全集はこれまで二度編まれ、二十世紀に「読む円朝」の魅力を伝えてきました。最初の春陽堂版全集は、机辺に書物を置かなかった太宰治が座右の書としたことで知られています。井上ひさしが一度手放した全集を古書展で買い直したところ、十年前に自分が売ったものだったという「円朝全集が化けて出た」話も。日本語の豊かなストーリー・テラーたちの水脈について物語るエピソードです。


翻案の魔術師円朝
怪談咄、伝記物など様々に分類される円朝の咄には、西洋文学を原話とした翻案物と呼ばれる作品群があります。『英国孝子ジヨージスミス之伝』『松の操美人の生埋』『黄薔薇』『名人長二』『死神』など。たとえば『名人競(錦の舞衣)』は、サルドゥの戯曲『トスカ』を、大塩平八郎の乱に揺れる江戸末期へ舞台を移した巧みな翻案作品です。



編集にあたって
 大師匠――いまなお敬愛の情を込めて落語家から、こう呼ばれているのが三遊亭円朝。かくも崇敬されるのは優れた作品を創り、かつ巧みに演じ、門弟を慈しみ育てたからに外なるまい。とは言え没後百十余年を閲し、伎倆も指導振りも伝説と化し、実感できるのは作品のみとなった。
 それらの諸作は速記術による口語文体で書かれ、多くの読者に迎えられた。幸田露伴は明治文学に最も功労のある人物として、円朝と黙阿弥を挙げ、円朝の文章界における貢献を讃えている。この評価は、文体を模索していた二葉亭四迷に、円朝の落語の通りに書いてはどうかと坪内逍遙が勧めたことでも、納得し得る。影響は文体のみに留まらない。夏目漱石の『琴のそら音』は『怪談牡丹灯籠』を念頭においての作であり、正岡子規は『名人競(錦の舞衣)』を聴いて、小説の趣向かくこそありたけれと悟るなど、枚挙に遑がない。ただ残念なのは、芥川龍之介が円朝研究を志しながら、果たさず早世したことである。
 円朝は熱心に取材旅行を行ったが、たとえば明治十九年、山県有朋内相、井上馨外相らの北海道巡視に随行した成果は『蝦夷訛』となり、『北海道文学全集』第一巻巻頭を飾る。北海道文学は円朝に始まるのである。もーバッサン初紹介となる『名人長二』など外国文学の受容にも意を用い、『真景累が淵』では文明開化の世に幽霊は存在するのかと問いかけ、『英国孝子ジヨージスミス之伝』では成文法整備期の人間模様を描く。このような関心の広さは目前の観客の反応を探った結果でもあろう。そして観客の反応によって練り上げられた円朝の口演は、日本人の心性の記録となり、索引ともなるのである。生と死、この世とあの世が地続きである円朝の怪談にしても、畏怖する心を失った現代を生きる我々が、新たな意味を見いだし得るのではあるまいか。
 いまなお滅法面白い読み物としての円朝、その面目を一新した全集の誕生に、ご期待を乞う次第である。
 二〇一二年六月                    編集委員



 明治期、次々に活字化された円朝の口演は、活力ある読み物としての命脈を保ち続けてきました。ぐいぐい引き込まれる物語的牽引力、卓抜な趣向の背後には、円朝に先行した話芸の蓄積はもちろんのこと、咄の種を授けた漢学者や洋行知識人、創作を共にした戯作者や狂言作者など同時代のネットワークがありました。さらに「読み物としての円朝」に不可欠だったのは、速記術の開拓者、新聞や雑誌の編者、連載に挿絵を寄せた絵師の営みです。
 本全集は、従来版全集の未収作品を補うだけでなく、新聞・雑誌の初出に依拠し、当時の文体や挿絵を再現した初めての全集となります。近代活字メディアに登場した円朝の世界に迫り、自在かつ多彩であった日本語表現、口語と書き言葉の見事な交響を浮上させようと試みるものです。


特色
●構成 円朝口演作品(伝承作も含む)は速記録発表順で本編に、弟子の口演のみ伝わる円朝作品、円朝の速記以外の文は別巻に収録。従来の全集に未収録の作品を多数収める。
●底本 新聞・雑誌初出本文のある作品はそれを底本に設定。単行本化の際に脱落や誤りを生じたまま伝わってきた従来作品も、十全な姿を再現。
●本格的な翻刻本文 「狼狽(あわアくツ)た」「気絶(めをまは)した」「遊蕩(やくざ)な亭主(ていし)」のように俗語や訛りなど生きた口語の含意を巧みに表した当時の文体。通行字体への置き換えや改行の付加など読み易さに配慮した処置を施しつつ、原則として底本の表記を保存する。
●挿絵 芳幾、芳年、年方、清方ら名匠による挿絵も収録。
●注解・後記・月報 辞書では調べられない語や文意に巻末注を付し、後記に作品解題を収める。各巻月報付。



本全集は予約出版です。全巻予約お申し込みの方にお頒ちいたします。
●A5判・上製函入・400〜608頁予定
●第1回・第一巻は11月28日、第2回・第二巻は2013年1月29日、第3回・第三巻は3月22日刊行。以降、隔月一冊刊行の予定。
●《予約申込書》に必要事項をご記入のうえ、お近くの小売書店にお申し込みください。

お取り付けの小売書店がない場合には、岩波書店《ブックオーダー》係にお申し込みください。
〒101-8002東京都千代田区一ツ橋2-5-5 電話049(287)5721
*申込書にご記入いただきました個人情報は、ご注文の発送およびご連絡のみに使用します。



予約募集 申込締切=2013年4月26日
本全集は予約出版です。全巻予約お申し込みの方にお頒ちいたします。
申込期限までに添付の予約申込書により、お近くの小売書店にお申し込みください。
●A5判・上製函入・400〜608頁予定
第1回・第一巻/11月28日発売
 怪談牡丹燈籠
 塩原多助一代記
 鏡ケ池操松影
 定価8820円(本体8400円)
第2回・第二巻/2013年1月29日発売
 英国孝子ジヨージスミス之伝
 安中草三の伝 後開榛名の梅が香
 定価8820円(本体8400円)
第3回・第三巻/2013年3月22日発売
 業平文治漂流奇談
 松の操美人の生埋
 蝦夷錦古郷の家土産
 定価8400円(本体8000円)

●お取り扱いは
 岩波書店
 〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
 電話03(5210)4000(案内)
 [定価は消費税5%込みです]
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