岩波文庫 幕末・明治もの
『海舟座談』
この本の内容
卓越した政治手腕をもって崩壊直前の徳川幕府に重きをなし,維新後は海軍卿・枢密顧問官として明治新政府に参与した海舟(一八二三‐九九)が,その五十年に及ぶ政治生活をふりかえって語る体験談.歴史的証言として貴重なことはもちろん,筆録者巌本の筆は海舟の語り口を巧みにうつし,魅力あふれる人柄をいきいきと伝える.
著者 巌本 善治 編 , 勝部 真長 校注
通し番号 青100-1
刊行日 1930/07/15
ISBN 9784003310014
Cコード 0121
定価 本体1,010円+税
『文明論之概略』
この本の内容
国の独立は目的なり.今の我が文明はこの目的に達するの術なり―西洋心酔と保守主義の相確執する明治初期,文明の本質を論じ,文明は文明自らに意味があるとした上で,今最も優先すべき課題は日本国の独立であり,西洋文明を学ぶのもそのためであると説く.『学問のすゝめ』と共に時代の展開に大きな影響を与えた福沢の代表的著作.
著者 福沢 諭吉 著 , 松沢弘陽 校注
通し番号 青102-1
刊行日 1995/03/16
ISBN 9784003310212
Cコード 0110
定価 本体960円+税
『福翁自伝』
この本の内容
明治三十年,福沢は六十年の生涯を口述し,のちその速記文に全面加筆して『自伝』を書きあげる.語るに値する生涯,自らそれを生きた秀れた語り手という希有な条件がここに無類の自伝文学を生んだ.近代日本の激動期を背景に,常に野にあって独立不羈をつらぬいた精神の歩みが大らかに語られている. (解説 小泉信三・富田正文)
著者 福沢 諭吉 著 , 富田 正文 校訂
通し番号 青102-2
刊行日 1937/04/30
ISBN 9784003310229
Cコード 0123
横山源之助『日本の下層社会』
この本の内容
日本資本主義が一人だちする明治三十年前後.横山源之助(一八七〇―一九一五)は労働者・貧民に深い同情をよせ,実態調査にもとづくルポルタージュの数々を世に問うた.本書はその集成であり,工場労働者をはじめ職人・都市の極貧者・小作人等の生活が生々しく詳細に記録されている.明治期ルポルタージュの白眉. (解説 立花雄一)
通し番号 青19-1
刊行日 1985/04/16
ISBN 9784003310915
Cコード 0133
定価 本体1,020円+税
新渡戸稲造『武士道』
この本の内容
「武士道はその表徴たる桜花と同じく,日本の土地に固有の花である」.こう述べる新渡戸(一八六二―一九三三)は,武士道の淵源・特質,民衆への感化を考察し,武士道がいかにして日本の精神的土壌に開花結実したかを説き明かす.「太平洋の懸橋」たらんと志した人にふさわしく,その論議は常に世界的コンテクストの中で展開される.
著者 新渡戸 稲造 著 , 矢内原 忠雄 訳
通し番号 青118-1
刊行日 1938/10/15
ISBN 9784003311813
Cコード 0176
山川菊栄『武家の女性』
この本の内容
幕末の下級武士の家に生れ育った母千世の昔話をもとに,武士の家庭と女性の日常の暮らしを女性の眼で生き生きと描き出した庶民生活史.動乱に明け暮れる水戸藩で女性たちがどのような躾を受けて暮していたのかが,巧みな筆致で描かれる.女性解放運動の優れた思想家であった著者による滋味溢れる生活史・民俗史. (解説 芳賀 徹)
通し番号 青162-1
刊行日 1983/04/16
ISBN 9784003316214
Cコード 0139
定価 本体620円+税
山中共古『砂払』
この本の内容
二百冊にのぼる洒落本を漫読,時代・風俗をみるに足る一節を興の趣くままに書き抜き,それぞれに感想や考証を記した気楽に楽しめる江戸ばなし百科.書名『砂払』は,洒落本の異名を蒟蒻本といい,蒟蒻には体内の砂を払う功能があるというところに由来する.著者(一八五〇―一九二八)は,最後の幕臣の一人であり,考古・民俗学者で江戸学の先駆者.
著者 山中 共古 著 , 中野 三敏 校訂
通し番号 黄252-1,黄252-2
刊行日 1987/09/16, 1987/10/16
ISBN 9784003025215,9784003025222
Cコード 0195
定価 本体600円+税,本体660円+税
喜多村筠庭『嬉遊笑覧』
この本の内容
江戸時代の随筆作者喜多村筠庭(安政3年没)が著した風俗の百科事典.当時の風俗を知るまたとない資料.各項目を和漢古今の文献を引用して解説し,体系的に整理したもの.(1)には巻之一「居処」(建物・庭・置物など)「容儀」(髪形・化粧・髪飾りなど),巻之二上「服飾」(衣服・頭巾・加工・はきもの・笠など)を収める.(全5冊)
(二)には巻之二下「服飾」(刀・印籠など)「器用」(輿・長持・陶器など),巻之三「書画」(筆・浮世絵など)「詩歌」(連句・狂歌など),巻之四「武事」(兵法・相撲など)「雑伎」(碁・蹴鞠など)を収める.(全5冊)
(三)には巻之五「宴会」(設楽撃・無礼講他),「歌舞」(田楽・歌舞妓・素人狂言他),巻之六「楽曲」(琴・三線・長唄・浄瑠璃他),「児戯」(竹馬・目白押し・羽子板他),巻之七「行遊」(花見・氷他)「祭会」(風流・縁日他)を収録.全五巻.
(四)には巻之八「忌諱」(厄落・物忌・福など)「方術」(呪の師・口寄・辻占など),巻之九「娼妓」(局・男寵など)「言語」(都の言葉・咄・瓜姫など),巻之十上「飲食」(酒宴・甘づら・茶など),同十下「火燭」(廻り灯籠・香・煙草など)の項目を収める.(全5冊)
五は巻之十一「商賣」(問屋・物の売声など)「乞丐」(聖・作り山伏など),巻之十二上「禽虫」(猫も杓子も・蚯蚓・川釣など),同下「草木」(桃栗三年・活花など)及び「付録」を収める.解説/索引=長谷川強(全5冊完結)
著者 喜多村 〓庭(キタムラインテイ) 著 , 長谷川 強 校訂 , 江本 裕 校訂 , 渡辺 守邦 校訂 , 岡 雅彦 校訂 , 花田 富二夫 校訂 , 石川 了 校訂
通し番号 黄275-1,黄275-2,黄275-3,黄275-4,黄275-5
刊行日 2002/04/16,2004/02/24,2004/07/16,2005/08/19,2009/03/17
ISBN 9784003027516,9784003027523,9784003027530,9784003027547, 9784003027554
Cコード 0195
定価 本体760円+税,本体800円+税,本体900円+税,..., 本体900円+税
『江戸端唄集』
この本の内容
日本人に愛唱されてきた歌謡は,時代により様々である.特に,近世末期から明治初期を絶頂期とした民衆による流行歌曲「端唄」は,日本歌謡史上,逸することが出来ない.三味線を伴奏にして,恋のやり取り,郷土の風物への思い,世相・政治への風刺が,哀切,粋な調べにのせて詠われる.爛熟,洗練された近世文化の最後の精華を伝える代表的な端唄を,初めて編纂する.
■編者からのメッセージ
端唄の演奏時間は短い.一分ぐらいの曲もあるが,平均して一曲は三分.唄はすぐに口ずさめる.集中力を高めれば,少しぐらい長い曲でも,三十分あれば一応覚えられる.これが端唄の強味であるから,江戸末期,各地で愛唱された.
次に唄のテーマ.題材は身のまわりの些事であるが,とりわけ「恋」の唄が多い.平安時代の勅撰和歌集以来,和歌の多くは恋を扱ってきた.その伝統を,端唄は身近な生活の中に見出す.むかしの和歌や俳諧を用いる場合もあるが,決して気取らない.
歌詞から察しられるように,例えば「春雨」では梅と鶯が,「わがもの」では雪と千鳥が,それぞれ唄われる.江戸時代には,ありふれた,お馴染の風景であったから,日本画の良き題材にもなっている.美しい“日本の情緒”,それを端唄は追求する.
まず初めに,紹介している「端唄」を選び出して,聴いていただきたい.収めたのは任意に選んだ十曲であるが,さきに触れた「春雨」のほか,浪花の恋を唄った「梅川忠兵衛」,男の心意気を示す「槍はさびても」,江戸の一風俗であった「奴さん」,新築を祝う「木やり」の変形「木やりくずし」,そのほかポピュラーな曲を収めた.
音を聴いていただくと,文章として千万言を費やす必要はなくなる.穏やかな音の流れに包み込まれ,心の安らぐ思いに浸っていただけよう.そうした端唄を,江戸の庶民は愛好した.いや,世界各国の人たちも,穏やかな音を求めているようだ.
じつは毎年正月のことだが,テレビが映し出すウィーン・フィルの演奏を,私は楽しんでいる.三十年ほど前になろうか,「美しく青きドナウ」をカール・ベームが指揮したとき,穏やかに流れるドナウ河が目の前に現れた.もちろん錯覚で,十秒あるかないかというわずかな時間.同時に日本の音曲,とりわけ端唄に想いを寄せた.オーケストラと何ら変わることはない.ごく一瞬,引き込まれる端唄が多数ある.
(本書「解説」より)
著者 倉田 喜弘 編
通し番号 黄283-1
刊行日 2014/09/17
ISBN 9784003028315
Cコード 0192
定価 本体780円+税
『近代はやり唄集』
この本の内容
明治・大正期の民衆によって愛唱された「はやり唄」.日本音楽史は元より,近代文学,歴史学でも顧みられることの少ない一二〇余曲を,八つのテーマ別にしてまとめる.物言わぬ人々の喜び,哀しみ,怒りは,「はやり唄」の歌声として表現された.それは,時代を写し出してもいる.歌謡・芸能史を開拓,推進してきた編者の永年の研究の集成である.
凡例(抜粋)
本書は『江戸端唄集』(岩波文庫、2014年9月)の続編として、明治大正期、地域の広狭にかかわらず愛唱された「はやり唄」を集めた。ただし、次の種目に含まれる曲は除外した。
端唄(俗謡以外の曲)、民謡、童謡、唱歌、軍歌と戦時歌謡
掲載した唄の出典は、同時期の新聞、雑誌、唄本(一枚摺を含む)で、主として明治大正期の出版物に限って使用した。
収めた曲は任意に名称を付けた下の八項目に分類し、唄の成立が確定ないしは推定できる年代順に並べた。
街角の唄、寄席の唄、座敷の唄、壮士の唄、書生の唄、ヴァイオリン演歌、劇場の唄、映画の唄
上のように一応分けてはみたが、街角の唄、寄席の唄、座敷の唄は融通無碍で、厳密な分類は出来かねる。ついては、唄の発生ないし唱和された場所による便宜的な区分だと解していただきたい。
壮士の唄と書生の唄も同様で、漢語混じりの荒々しい唄い方をする明治二十年前後の壮士の唄は、日露戦争を境に柔軟なフシ回しのある書生の唄に変わる。
劇場の唄は、文字通り芝居の唄である。江戸時代の端唄には、舞台で役者が唄った例もあるが、近代においては芸術座の「復活」が嚆矢となる。つまり自然発生的であったはやり唄が、意図的、恣意的に変化しはじめる。言い換えれば、作詞者と作曲者が明らかになる。
映画の唄は、上映するスクリーンの陰で女性が唄った。これは忘れ去られていることなので、「解説」を参照してほしい。唄は後にいう挿入歌ないしは主題歌に相当するが、作詞者、作曲者は、いささか不分明である。
著者 倉田 喜弘 編
通し番号 緑207-1
刊行日 2016/09/16
ISBN 9784003120712
Cコード 0192
定価 本体640円+税
淡島寒月『梵雲庵雑話』
この本の内容
西鶴再評価の契機をつくったことで知られる明治の文人淡島寒月(1859-1926)の文集.幕末維新期の江戸・東京の回想,仮名垣魯文・高橋由一・ワーグマン・下岡蓮杖らの人物スケッチ,玩具の収集のことなど,名利を求めず趣味に生きたといわれる寒月の全貌を伝えてくれる1冊.梵雲庵は寒月の号である.(解説=延広真治)
通し番号 緑159-1
刊行日 1999/08/18
ISBN 9784003115916
Cコード 0195
定価 本体900円+税
篠田鉱造『幕末明治女百話』
この本の内容
『幕末百話』『明治百話』に続き,聞き取りの対象を女性にしぼって集めた百話.名士の家庭にも易々と入り,巷の風俗や季節の楽しみをこまやかに観察し,男性とはひと味異なる女性ならではの逸話がそろった.旧幕書生の出世物語あり,江戸っ子の意気張りづくで耐えた刺青の体験談あり,江戸趣味のまだ滅びない時代の面影を伝える.(全2冊)
「女の目に心に,女ならでは持たない,深みとねばり,鋭さと敏さとを狙いました」と著者の言う通り,幕末から明治の実社会の内面が,庶民の胸に刻まれた時代の絵模様として鮮やかに織り出された.下巻には,本所の7不思議,大阪の怪事あれこれ,さまざまな大衆芸能,初めての西洋料理など,盛りだくさんな内容.(解説=紀田順一郎)
■内容紹介
女百話は,女の目に心に,女ならでは持たない,深みとねばり,鋭さと敏さとを狙いました.初めは明治時代を描くつもりが,七,八十の老諸姉を叩くと,まだ幕末の昔話が,どっさり蘇っているのに驚き,ついに『幕末明治女百話』を纏め得ました.
どちらへ訪れても,老女の第一声は「この頃ついぞ昔のお話をしませんものですから,旧幕のお話は忘れてしまいました.ソレに家内のものが,テンデ相手にしませんから,昔話を嘘のように思って,昔はどうのこうのと申しますと,昔なんかと嚼んで吐き出すように申しますから,癪に障って口を緘んでいます」という方,「こんな昔話が――つまらんお話がお役に立ちますかしら,宅の者がいいますには,どんなお話があるんですか,本に残るんですよ,大丈夫ですかと申しますんですよ」という方.
一方は癪に障って,結構な昔話が,胸底に押込められていた.ソレを聴くと,溌溂たる昔話が刎返って出る.一方は悴娘に念を押されても,この話ならと,自信の下に,すらすらと語られる力強い話,いずれにしても実話そのものは,胸に刻まれた時代の絵模様で,極彩色から淡彩画,後世に伝えて恥ずるところがない.…… (「人知れぬ汗雫」より)
通し番号 青469-4,青469-5
刊行日 1997/08/19,1997/09/16
ISBN 9784003346945,9784003346952
Cコード 0121
定価 本体780円+税,本体840円+税
『徳川制度』
この本の内容
江戸城内から江戸の町や下層社会まで記録された歴史実録書.文献史料や故老からの聞書きなどをもとに,明治25~26年にかけて『朝野新聞』に連載されたものである.上巻には,町奉行,刑罰,牢屋,人足寄場,非人,町会所,火事,辻番,株式,市場などについての項目を収録.江戸の町の実態がよく分かる貴重な一冊.(全三冊)
江戸時代の人々の生活については,時代劇や歌舞伎などうかがい知るところは多いけれども,その実際については今となってはなかなか掴みにくいのが実情でしょう.無名の庶民,岡っ引きや辻番,様々な階層の人々が生きた世間.罪科を得て牢に縛された囚人.これらの鮮明な記憶を綴ったのが本書です.
『朝野新聞』に明治25,6年に連載された「徳川制度」「徳川制度続編 金扇影」「東叡山寛永寺」他をまとめた大変に生き生きとした見聞録は,まるで縁故の古老から直接話を聞くかのようなリアリティです.記録そのものが大変に貴重で,他に得難いことはもちろんですが,話としても面白い.江戸時代に関心をもつ方,時代劇の愛好者,そして人間のことが好きな人なら必ず楽しめる一書です.たとえば上巻のこういう話はいかがでしょうか.
江戸の町の実相を記録した歴史実録書.中巻には,山の手と下町でちがう寺子屋の実態をはじめ,虚無僧,富くじ興業,吉原,岡場所,娼妓,若衆など社会・風俗に関するものと江戸城の年始の儀礼を記した年始登城,下馬評,礼服,駕籠,乗物など武家社会に関するものを収録する.(全3冊)
武家の学問の殿堂であった湯島聖堂,鷹・鷹匠や東叡山寛永寺のことをはじめ,アメリカ使節の江戸城登城,桜田門外の変,生麦事件など幕末・維新の激動の時代を彩る数々の事件についての項目を収録.なお,「幕末の陸海軍」「社会魔」など『徳川制度』の補遺的な内容を収録する「補遺」を続刊の予定.(全3冊完結)
明治時代半ばの段階で,欧文史料を含め史料を博捜して書かれた鎖国の通史として注目される「鎖国始末」をはじめ,「柳沢吉保」など江戸幕府の政争に関する逸話,商人の成功譚「商人鑑」,下層社会の記録「社界魔」,幕末の陸海軍の実話や法令,町人の願書などを収録.『徳川制度』を補足する歴史実録集.詳細な索引を付す
■本文より)
牢破り
(伝馬町の牢屋に囚われていた重罪人礼三郎が脱獄を企てる.礼三郎は隣の名主に断りを入れた)「今夜はチト騒がしきことが出来るかも知れねえから,勘弁して貰いてえ」と細声に断りいえば,大牢の名主閻魔の与七〈強盗〉聞き付けて「承知した」と答えたり.問答了れば,夜はまた寂びて,当番の者も眠りを引く頃,礼三郎いかがして得たりけん,櫛を挽くに用うる細き鋸にて,ソクソクと挽き始め,そのほかの者ども交る交る挽きて,やがて内鞘松の六寸角二本を切り放ち,さて取り外さんとすれば,世は隈なく明けたり.舌打ち鳴らして,「今日の間にゃあ間に合わねえか」と囁きてそのままになし
さて,礼三郎は無事脱獄に成功するのでしょうか? また,閻魔などといかめしい呼び名を得た与七の決断は?
毎度の決め台詞で申し訳ありませんが,「続きは本書にてお確かめください」.
著者 加藤 貴 校注
通し番号 青496-1,青496-2,青496-3,青496-4
刊行日 2014/04/16,2015/02/17,2015/11/17,2017/03/16
ISBN 9784003349618,9784003349625,9784003349632,9784003349649
Cコード 0121
定価 本体1,500円+税,本体1,380円+税,本体1,440円+税,本体1,740円+税
篠田鉱造『増補 幕末百話』
この本の内容
明治も半ば,篠田鉱造(1871-1965)は幕末の古老の話の採集を思い立った.廃刀から丸腰,ちょんまげから散切,士族の商法,殿様の栄耀,お国入りの騒ぎ,辻斬りの有様,安政の大地震,道具の投売……幕末維新を目のあたりにした人々の話は,想像もつかない面白いことずくめだった.日本社会の激変期を語る貴重な証言集.(解説=尾崎秀樹)
昭和三年は戊辰六十年にあたった.そのためか幕末維新に関する回顧談や史話,それに幕末維新を背景とした時代小説などがあいついで刊行された.……(中略)明治維新から六十年を経て,やっと事柄は歴史になろうとした.古老も世を去り,当時の壮者がようやく老齢にさしかかり,次の時代に語りのこしておく歴史の体験を多く蔵していた.同好史談会などが組織され,維新当時のことを語り合い,古老から談話を聞き,それを記録することも行われた.篠田鉱造もその一員だった.……(中略)
『幕末百話』は特別に歴史を解明しようといった意図に基づいた企画ではなく,それこそおもしろそうな話が聞けそうだと思われる人を,東奔西走して訪ねまわって話を聞き出したものである.それが百話にまとまると,かえって多様性にとみ,社会各層の諸側面を語ることになり,おもしろみも加重される.……(後略)(尾崎秀樹 「解説」より)
通し番号 青469-1
刊行日 1996/04/16
ISBN 9784003346914
Cコード 0121
『戊辰物語』
この本の内容
明治維新の動乱を経験した故老の回顧談により,当時の庶民感情,時代の気分が縦横自在に語られた生きた維新の側面史.戊辰戦争から六十年目の昭和三年正月,『東京日日新聞』に連載された表題作に,「五十年前」「維新前後」を加えた本書は,敗者の側から見た維新の記録としても貴重なもの.図版を多数収録. (解説 佐藤忠男)
著者 東京日日新聞社会部 編
通し番号 青431-1
刊行日 1983/01/17
ISBN 9784003343111
Cコード 0121
定価 本体780円+税
『近世風俗志』
この本の内容
江戸時代の風俗についての考証的随筆.約700項目におよぶ事物の名前や事象を時勢・家宅・生業・雑業・貨幣・男服・女服・娼家・音曲・遊戯・食類等に分類し,多数の図を付して懇切丁寧に説明した一種の百科事典ともいうべき書.著者喜田川守貞が天保八(1837)年に筆を起こし,30年間かけて書きあげた近世風俗史の基本文献.(全5冊)
3都(江戸,京都,大坂)の風俗を比較しながら詳述した近世風俗史の基本文献.本巻には,武士,商人,職人の髪形のちがいなど髪のことを中心に入墨,櫛などにも言及した「男扮」をはじめ,「女扮」(島田髷,丸髷など髪形,櫛,簪,歯黒等),「男服」(袴,羽織,火事装束,浴衣等)を収録.(巻9~15).挿絵多数(全5冊)
近世の江戸,大坂,京都の三都を比較して論ずるだけでなく,古代以来の歴史的な推移にも及ぶ近世風俗史の基本文献.古代の衣服,十二単などからはじまる「女服」,猿楽,謡,勧進能などにも言及する「音曲」,その他「雑服」「織染」「妓扮」「娼家」など巻16~巻23を収める.図版多数.(全5冊)
「京坂にて風呂屋と云ひ,江戸にて銭湯あるひは湯屋と云ふ」と説きおこされ,薬湯・塩風呂・丹前風呂にも及ぶ沐浴の項をはじめ,正月行事を中心に花見・雛遊び・端午の節句・七夕などを語る年中行事,遊戯(竹馬・独楽・カルタ等),髪結床,笠,歌舞伎について述べた巻24から巻29までを収録.図版多数.(全5冊)
著者喜田川守貞(1810-?)が天保八(1837)年に筆を起し30年間かけて書き上げた近世風俗史の基本文献.本巻には食べ物,食器,傘,履物,駕籠,芝居,劇場のことなどを記した巻之三十から後集巻之五までを収録.巻末に,幕末期の物価高騰を論じた『固根辨』と詳細な全巻索引を付す.図版多数.(全5冊完結)
著者 喜田川 守貞 著 , 宇佐美 英機 校訂
通し番号 黄267-1,黄267-2,黄267-3,黄267-4,黄267-5
刊行日 1996/05/16,1997/09/16,1999/10/15,2001/10/16,2002/12/13
ISBN 9784003026717,9784003026724,9784003026731,9784003026748,9784003026755
Cコード 0195
『柳橋新誌』
この本の内容
幕末から開化期にかけての柳橋の風俗を描いた成島柳北(1837‐1884)の漢文随筆集.もと三篇からなる.初篇は深川にとってかわり盛んになった柳橋の花街風俗を活写.二篇は短篇小説ふうの挿話をつなぎ合せた構成で花街という視角から幕末維新期の激動を巧みにとらえた傑作.三篇は序のみ伝えられ本文は散佚した.
著者 成島 柳北 著 , 塩田 良平 校訂
通し番号 緑117-1
刊行日 1940/10/26
ISBN 9784003111710
Cコード 0195
定価 本体400円+税
『俳風柳多留』
この本の内容
川柳集.明和二(一七六五)年,『川柳評前句付万句合』の中から佳句約七百を選んで出版した初篇以来,二十四篇まで出版された.『初代川柳選句集』『誹風柳多留拾遺』とともに,旧文庫版に大幅な補訂を加えて刊行した『川柳集成』を文庫化.人情,風俗,人生や世相を鋭い機知と諷刺・諧謔をもってあらわした「近世庶民文学の華」.
著者 山澤 英雄 校訂
通し番号 黄271-1,黄271-2,黄271-3,黄271-4
刊行日 1995/07/17,1995/07/17,1995/07/17,1995/07/17
ISBN 9784003027110,9784003027127,9784003027134,9784003027141
Cコード 0192
篠田鉱造『明治百話』
この本の内容
世界史にも類のない一大変革期,明治.約半世紀に及ぶこの時代は,さまざまな逸話を生みながら変化し続けていった.実話主義を掲げる著者が,新旧の移り変りや衝突の最も激しかった明治初年の世相を聞き書きの中に再現する,百話シリーズの第2弾.(上)は最後の首斬役人・八世山田朝衛門の述懐から銭湯・床屋の昔話まで50話.(全2冊)
■内容紹介
明治百話は幕末百話の姉妹篇で,古老旧知親懇者の実話を聴取した記録です.まず明治の気分を取り入れたものを僅か百話だけ纏めたに過ぎないものです.……明治の大事件大事実(たとえば鹿鳴館夜会,相馬騒動など)を取落していることは,必ず読者の不審を喚起するにちがいないと思われますが,実話はその人を得ないと実話になりません.実話を聴取しない以上,肝腎の実話として描き得ませんので,そうした破綻が,本篇に見出さるること察し,予めこうした申訳をして置きます.
明治百話は長短不揃いですが,幕末百話は,報知新聞紙上へ,百日間かいたもの,キチンと行数に限りがありましたが,明治百話は聴くがままに綴り,興味に惹かるるままかきつづけたからです.かつ編輯に,年代不順序に,読み耽るようにしたのは,兄弟もただな啻ならぬ武田鶯塘君の説に随い,長いもののあとに,短い軽い話をならべ,また長い話に移るといった注意を受け,その編輯までしてくれた厚意です. (「編著を終って」より)
一口に実話といっても,話し手の思い込みや記憶違いもあり,どれほどの事実が含まれているかの見極めや取捨選択が大事である.明治の東京に生い育ち路次の抜裏まで知りつくした著者ならではの,よりぬきの実話集.(下)も,明治の新商売・通人の道楽ぶり・烏森芸者のヨーロッパ興行談など,多彩な話題に明治の面影を盛る.(解説=森まゆみ)
通し番号 青469-2,青469-3
刊行日 1996/07/16,1996/08/20
ISBN 9784003346921,
9784003346938
Cコード 0121
定価 本体780円+税,本体840円+税
『旧事諮問録』
この本の内容
明治二十年代半ばに,旧幕時代の制度の実情が忘れ去られるのを惜しんだ歴史学者達が旧幕勤仕の故老達を招いて行なった質疑の記録.江戸幕府の制度と諸役職の実情を語る文献としては一番有名で,利用価値の高い歴史史料である.将軍の日常生活から大奥・勘定所・評定所・目付・町奉行・外国奉行・代官・町与力等に関する証言を収録.
著者 旧事諮問会 編 , 進士 慶幹 校注
通し番号 青438-1,青438-2
刊行日 1986/01/16,1986/02/17
ISBN 9784003343814,9784003343821
Cコード 0121
福沢諭吉『学問のすゝめ』
この本の内容
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」.著名なこの一文で始まる本書は,近代日本最大の啓蒙家である著者が,生来平等な人間に差異をもたらすのは学問の有無によると説く.彼のすすめる学問とは,西洋実学の批判的摂取である.明治の人心を啓発したその言は,一世紀を経た今日も清新である. (解説 小泉信三)
通し番号 青102-3
刊行日 1942/12/21
ISBN 9784003310236
Cコード 0137
鏑木清方『明治の東京』
この本の内容
代表作「築地明石町」などにみられるように,鏑木清方の画は,明治の東京の庶民生活を描いて他に類がないといわれるが,折々に書かれた彼のエッセイもまた,江戸や明治への郷愁を誘う美しい小品として忘れられない.「白足袋」「草双紙」「兎と万年青」「銀座回想」「芝居昔ばなし」「明治の東京語」「甘いものの話」等40篇を精選.
著者 鏑木 清方 著 , 山田 肇 編
通し番号 緑116-2
刊行日 1989/04/17
ISBN 9784003111628
Cコード 0195
定価 本体600円+税
『江戸東京実見画録』
この本の内容
明治天皇の江戸城入城から民衆による打ちこわしまで,急速に移り変わる幕末維新の江戸の様子を描きだす風俗誌.作者・長谷川渓石(一八四二~一九一八)は,作家・長谷川時雨の父親で,国芳の住居を描いたものなど貴重な画を含む52図を収録.(解説=中野三敏)
作者の長谷川渓石(本名,深造1842-1918)は,今ではほとんど知る人もなく,忘れ去られた人物でしょう.
渓石は,天保13年,江戸の中心地である日本橋に生まれ,若いころ,浮世絵師・歌川国芳に絵の手ほどきを受けています(本書の第39図「浮世絵師国芳の住居」は,その様子を描いた貴重な図です).維新後,新政府の刑部省に入り,その後,代言人(今の言葉でいえば弁護士),市会議員などを歴任した人です.
そして,渓石が,晩年,幕末維新の往時を回想して,描きためていたものを,没後一周忌の大正8年に,娘で作家であった長谷川時雨(明治~昭和にかけて活躍し,名著『旧聞日本橋』 『新編 近代美人伝(全二冊)』などを遺しています)が,亡父の供養として配布したものが本書のもとになっています.
本書には,明治元(1868)年10月13日,明治天皇が江戸城に入る「至尊の御入城」(第1図)から始まり,全部で52図が収められていますが,幕末維新の江戸の市井をさまざまに描いた風俗誌として興味ぶかい一冊です.すでに岩波文庫に収められている『ワーグマン日本素描集』 『ビゴー日本素描集』 『河鍋暁斎戯画集』などとならぶ貴重な絵画資料であると言えましょう.
上記のような渓石の経歴からでしょうか,政治や刑罰をテーマとする画が多いのが特徴です.「西丸大手前(の供待ち)」(第5図),「諸大名の老中廻り」(第8図)など貴重な画も多いのですが,その一方で,市井の風俗を描いたものも,興味ぶかい画ばかりです.
寺子屋の様子を描いた「雷師匠」(第38図),当時の大店の様子が分かる「大丸呉服店の一部」(第51図)などは,その代表的なものでしょう.特に,第40図の「貧民の乱入」は,教科書の幕末の打ちこわしの説明の箇所に掲載されることがあるので,本書の中では一番よく知られているものではないでしょうか.
底本には,渓石の画中の文字の部分を翻刻し,詳細な注解(進士慶幹・花咲一男)を付した有光書房版(1968年刊)を用いました.進士・花咲両先生による注解は,渓石の画の面白さを存分に伝えてくれるものになっています.
著者 長谷川 渓石 画 , 進士 慶幹 注解 , 花咲 一男 注解
通し番号 青577-1
刊行日 2014/07/16
ISBN 9784003357712
Cコード 0171
定価 本体840円+税
高村光雲『幕末維新懐古談』
この本の内容
明治大正期を代表する木彫家で,西郷隆盛銅像の製作者として知られる高村光雲(一八五二―一九三四)の自伝的回想録.「お話し自身すでに立派な芸術」といわれるほど座談の名手であった光雲が,息子の高村光太郎,田村松魚を相手に,生い立ちから彫刻家として名をなすまでを幕末維新の世相風俗を交えながら生きいきと語る. (解説 酒井忠康)
通し番号 青467-1
刊行日 1995/01/17
ISBN 9784003346716
Cコード 0195
内田魯庵『思い出す人々』
この本の内容
内田魯庵(一八六八―一九二九)は,幕府御家人を父,吉原の芸妓を母として維新前夜の江戸に生まれた.文芸評論家,社会小説『くれの廿八日』の作家,『罪と罰』などロシア文学の翻訳家と,その仕事は多岐にわたっているが,紅葉,緑雨,二葉亭ら同時代の文人を回想した本書は,非常に面白い読み物であるとともに明治文学の一級資料である.
「思ひ出す人々』の水源にあたる本が『きのうけふ』である.『思ひ出す人々』は1925年(大正14)6月,春秋社より刊行,『きのうけふ』は1916年(大正5)3月,博文館より刊行されている.内田魯庵自身は昭和に入った直後の1929年(昭和4)6月29日に死去した故,『きのうけふ』を改題し,再編集しなおして世に押し出したことは,魯庵の最後の大仕事と私は見る.……(中略)
本書は春秋社版『思ひ出す人々』の編成を尊重しつつも,その水源に位置する『きのうけふ』,魯庵の没後,飯田泉らによって編まれた『明治の作家』などを参照し,二葉亭四迷を中軸とし,坪内逍遙以下忘れ難い重要な人物スケッチを選び,末尾に「八犬伝談余」をつけ加えた.……(紅野敏郎「解説」より)
著者 内田 魯庵 著 , 紅野 敏郎 編
通し番号 緑86-4
刊行日 1994/02/16
ISBN 9784003108642
Cコード 0195
岡本綺堂『ランプの下にて』
この本の内容
戯曲「修禅寺物語」や「半七捕物帳」で知られる作家岡本綺堂(一八七二―一九三九)は,父に連れられて初めて団十郎・菊五郎・左団次の新富座興行を見た.以来,少年綺堂,長じて『東京日日新聞』劇評記者綺堂が見た数々の舞台と名優たちの思い出を綴り,時代の息吹を生き生きと伝える.当時の芝居は実に面白かったらしい. (解説 岡本経一)
通し番号 緑26-2
刊行日 1993/09/16
ISBN 9784003102626
Cコード 0195
2018年8月17日公開
et8jj5@bma.biglobe.ne.jp
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